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ダンジョン日和!ー最強のダンジョンに至るまでー  作者: 波風 多子
第3章 人里日和!ー騒動の始まりー
34/54

町日和!ークラスの驚嘆ー

遅れてすいません。


シンネンまでにもう一羽ぐらい頑張ります。




…コケッ

 「ここを右に曲がるとゴブリンの村が……っと、あそこだよな?」


 そこには最早村と呼べないほど発展していた。粗削りだが立派な門が築かれ、中には煉瓦造りの家が建ち、農家が、衛兵が、商人が。この世界には存在していた。まるで理想の人間社会を体現したかのようなそんな集落に、クラスは息を飲んだ。


 前襲撃した小さな集落と同じ集落ですと、何も言わずに持ってきたところで疑ってかかれるようなそんな違いがあった。


 「オオアナダナ?ニンゲン」


 ふいに声をかけられ、その棍棒に手をかける。彼が十年愛用している武器である。ある店主から譲ってもらったものなのだが、今でもその強さがはっきりと分かり、武器もまた現役であるということを証明してた。


 「ジャー様オヨビ。クル」


 「お、おう。わかった」


 その町は一言でいえばきれいだった。彼の見てきた街の中できれいな街を選べと言われたら脳裏をかすめる程度に。不要なものがなかった。


勉強が苦手なら衛兵を、運動が苦手なら商人を、どちらも苦手なら他のことを。皆が皆を必要として回っている。貨幣など必要ない。ゴブリンの短い寿命があるからこそなし得た本当の美しい社会。人間などよりよほど美しい。


 「その、なんだ。意外と理性的なんだな。お前らって?……ニンゲンよりもさ」


 「リセイテキ?」


 「話が分かるってことだよ」


 そう言うと誇らしげにこちらを向いて笑顔になる。お世辞にも綺麗とは言えないが、自分が見てきた中で一番純粋だ。


 「イツモオソッテクルノニンゲン。ニンゲンモイガイトリセイテキナンダナ」


 クラスはゴブリンに対する認識を改めた。そしてゴブリンはいつから魔物として扱われ始めたのだろうと考えをふける。


 「お褒めにあずかり光栄です」


 「誰だ?」


 「アア」


 上から降ってきた声に、クラスは、行動は予測済みだとばかりに冷淡に返す。


 「コイツリセイテキナヤツ。ナカマ」


 「ええ。私からも軽く自己紹介をば。私大罪スキル虚飾の大罪を持つ、ゲルニッカと申します」


 直後、ゴブリンたちはこいつの力を理解していないと悟った。大罪スキルとは並大抵のスキルではない。それこそ神話級のスキルなのだから。


 「さがしましたよ?ズナク家のものよ」


 「!?」


 直後ふいに驚いた顔をしてしまったクラスは、失敗を悟った。しかし捨てた名を呼ばれて驚かぬまま居られるものが果たして幾人いるだろうか。


 「何が目的だ?」


 「いえ。目的はありません。私の恩人の孫があなたにあたるので少しお礼を言いたくて」


 クラスは少し息を吐き出し緊張を解く。


 「そうか、俺の爺ちゃんが世話んなったな」


 「いえ。世話になったのは私ですよ」


 そんな他愛のない会話を交わしつつクラスは警戒だけは解かない。結局このあとすぐに別れたのだが、クラスは正直彼を疑ったままだった。


 しかし彼は小さくない疑問を抱かざるを得なかった。彼の祖父に当たる人物は10年以上前に魔物の住む森に行ったっきり行方不明になったと聞いていた。


 「なんだったんだありゃ」


 覚えのない感謝にむず痒さを感じていたクラスだが、この後の戦いへと気持ちを切り替える。ゴブリンに連れられ町の奥へと歩みを進めると、クラスはひときわ目立つ建物を見つけた。


 「ありゃあなんだ?宿屋か?」


 「病院ダ」


 「…そりゃあマジか?」


 ゴブリンの町があるのはわからなくもない。知能種が現れたのだろう。だが病院だと?そんな馬鹿なと否定したいが生憎目の前に証拠があった。


 クラスはこの現状に打ちのめされていた。魔物を、人間を仇なす魔性の類いならば喜んでそれを討とう。だが果たして此処にいるゴブリン達は、人間に相対し、好んで殺す魔性だろうか?そんな疑問が浮上し始めたのだ。


 その後、クラスはシャグゾウのもとへ案内された。クラスはシャグゾウのいる建物に入るまでもなくシャグゾウの危険性を強く感じ取っていた。伊達でゴブリンの巣をここまで大きくしたわけではないと理解させられた。


 それはシャグゾウも同じである。伊達で自分を、(自らの楽園)を侵しに来たわけではないとその風格から理解させられる。


 かくして二人は相見え、即座に戦闘の構えをとった。


 互いが互いの殺意にさらされ周囲の給仕や部屋の整理をしていたゴブリン達は極度の緊張にさらされた。


 「おいおい。こっちはまだ何もしてないぜ?武器をしまえよ」


 「何を言う。こちらも何もしてないでは無いか。」


 お互い威圧はそのまま目付きの鋭さは増しながらも、口だけは笑って会話を続けた。


 「そりゃそうだ。じゃ、おとなしく死んでくれるか?」


 「いや。それは無理というもの。私にも守りたい者の一つや二つはある」


 クラスはふっと息を漏らすと、


 「ゴブリンは人間と違って強姦が大好きみたいだな?」


 「いんやそんなことはない。()()()()()()性癖は少ないがな。皆お互いに愛し愛される」


 クラスは一瞬キョトンとしたが、皮肉を返されたと気付いて爆笑し始めた。


 「はっはっは!ゴブリンは意外と健全だなおい!だが色々とヤッておいて…損はないぜ!」


 そう言うと同時に彼は棍棒を振り上げた。


 「決裂か。」


 そう言うと彼は短剣を片手にもう片手に長剣を持ち…


 それらが…交差した。

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