生涯日和!ー二つの欲望ー
短め
クラスという男。その華々しい活躍は、竜や虎などの比喩ではなく単純に大穴と称された。彼は強くかつ頼りがいのある男であった。その本人はそれを自覚していないが。
彼の本名はザールオ・ズナク。彼は一二歳のころ貴族の親に捨てられスラムの住人となった。一二歳の頃の彼は悪魔と呼ばれ恐れられていたからだ。理由は単純で、その天才的な頭脳にあった。彼は幼少のころ……そう、生まれて数ヵ月もせず喋り、歩き、親から褒められ続けた。しかしそれは次第に恐れに変わった。
彼は一二歳の頃の貴族の子の会合で王に対して政治批反をはじめたのである。そこには有力貴族や秀才な貴族。さらには政治学者までいたにもかかわらず、誰も彼を止めることなどできなかった。
これもまた理由は単純。彼よりも頭の回転が速く、また反論できるほど頭のいい者もいなかったのである。これにより、他貴族の陰謀により彼の家はつぶれ、彼は捨てられた。
そしてこの事件による影響力がなかなか大きかったのも事実であるが、ここでは省くとしよう。
彼はある知らない街に家族と行った時に、使用人と遊んでいると、使用人がいなくなっていることに気が付いた。しかし気を取り直し、すぐ見つかると思い大通りに出て宿を探し見つけた。しかし彼の家の者すべて引き取っていたのである。アシュという謎の人物とともに。この時点で彼はすべての状況を察した。
自分が捨てられたこと。アシュとは死ぬはずの息子であること。もはや自分はいてはいけない存在なのだと。彼はずいぶんと久しぶりに涙を流した。大泣きに泣き頭が真っ赤になった。
彼はそしてスラムへと行き、大きな集団の幹部まで上り詰め、独自の集団を形成し、その規模を国中に伸ばした。そして彼は古き懐かしい家の前に行くと、彼は一枚の紙に家族にしかわからないよう気を使い、手紙を置き去った。
彼の家の者は察し心内で喜んだが、それを表へ出しはしなかった。もはや彼はこの世にいないはずだから。
そして彼は今、ゴブリザムのもとへ向かっている。彼の第二の故郷、クラスとしての生を受けた故郷への恩返しをするために。そのかつて天才と呼ばれた眼にはこれからの事とこれまでの事。全てをなくす覚悟を持っており、その身はこの瞬間のためだけにある。そんなことを思いつつ、彼はゴブリンのもとへと急いだ。
○○○
ゴブリザムと呼ばれる彼は、いちゴブリンとして生を受けた。なんのことも無いただのゴブリン。なんの事もなくそのまま仕事をし、狩りをし、子と自らの雌を守っていた。
ただその運命は転機を迎えた。彼は一ゴブリンとして生を終える直前に、彼の頭には何かがよぎった。ゴブリンだけの世界を作りたい…と。
その瞬間、世界は彼のその下らない、しかし限りなく強い意志を認め、彼にこれからと知恵を与えた。否彼は世界からの生と知恵をもぎ取ったのだ。これより一ゴブリンだったシャグゾウは順調に村を大きくしていった。
そして小さくしかし不可侵な世界を築き上げていく彼にまた転機が訪れる。かの有名な大罪スキルを持った悪魔が、力を貸してほしいと自分に土下座してきたのだ。彼はそのまま短絡的に答えを決めようとした。分かったと。
しかし死んだ子や嫁に申し訳ないと、少しだけ貸し与えるだけに留めた。これで彼はゴブリンの世界を作るのに一歩前進した。そう思った。しかし彼は何故か心の中にもやを抱えていた。子や嫁に申し訳ないという気持ちが何故か嘘くさく思えてきたのだ。彼はそれを長く生きたからだと結論づけ、死に場所を求めた。
彼らはもはやその目に何も抱えてはいない。少しづつ彼らの内なる願いは肥大化し、荒れ狂うように巨大化しようとしていた。強さの代償。望まぬ力か望んた力か。それ以外なんの違いの無いそれらの力は、もう止まらない。
評価下しあ




