終戦日和!ー嘘の裏の絆ー
投稿間隔が空いているのは気のせいです。
いいですね(ごめんなさい)
《ダンジョンバトル開始から23時間55分。》
「はぁっ!はあっ!」
いつまでもまとわりついてくるうざったいスライムを切って捨てつつひた走るブロ。もはや時間はない。絶対に約束を守り抜く。
24時間以内にダンジョンを攻略するという約束を。
《ダンジョンバトル開始から23時間56分》
「はじめまして。俺はダンジョンマスターのスタピラーだ。」
「始めまして。ジンことジュンノよ。早速だけど水晶を壊させてほしいの。」
…早速本題に入るのか。当然だよな。けど俺の役目は時間稼ぎ。4分程度稼げず何がマスター。
やってやる!
「ちょっと話をしないかい。5分くらいさ。」
相手はこっちを舐めきってる。この誘いに乗ってくれればいいが。
「わかりました。5分くらいは相手になるわよ。」
そう言って俺に砂時計を投げてきた。
良し。
《ダンジョンバトル開始から23時間57分》
「あれが水晶。」
間に合ったとばかりに息を付き油断するブロ。そこへ高速で木の枝が迫る。音速を超えて飛来した枝は矢のごとくブロの背中から突き刺さる。
「っっっ……!」
しまったと言おうにも口が動かない。そのまま倒れ伏したブロの前に一人の女性が立つ。
「通さないよー?」
木の上位精霊ドレイドとクレセイノであった。
木の精霊の名に相応しいその美しさは見るものを魅了した。生命力のある肌、緑の瞳の奥には油断などしないと言う意志がある。艶めかしい口元に彫りの深い造形。胸も大きくしかしそれは形を崩さず全体のバランスを支えるに留まる。
まさに美。彼女の美しさに見惚れたのはブロとて例外ではなかった。が、
「私の妹とマスターの信頼がかかってるんだ。」
深く突き刺さった枝を抜くと、大地を踏みしめ二人に対峙した。
「止まれない理由には充分すぎる。」
《ダンジョンバトル開始から23時間58分》
「あの子はね。思い詰めちゃうタイプなのよ。こだわりが強いし。だから、あなたが負けたあとはちゃんと友達になってね?」
「考えとくよ。」
語りだしたらやめないな。…好きなんだろな。クレセイノの事。俺もこんないいマスターになれるかな。なんて終わった後のことに考えを寄せる。
「うちのブロとドグもすごいぞ。」
「ふーん。そんな強そうには見えなかったけど」
和やかな会話もあと2分で終わる。なぜなら…
《ダンジョンバトル開始から23時間59分》
「まだまだあ!」
血走った眼で水晶を見つめる瞳はただスタピラーを思って。素晴らしき主の為に。何としてでも。
「うおおお!」
「無駄よ。諦めなさ…いっ!?」
ブロはクレセイノに矢を手で投擲した。
「えっ!?」
驚いたドレイドがクレセイノへ駆け寄る。枝によって矢を反射させたドレイドだったが一瞬意識がクレセイノに向いた。その隙を狙い即座に水晶へと駆け寄り壊そうと腕を振り上げっ…
《ダンジョンバトル開始から23時間59分30秒》
「そろそろ時間ね。」
「そうだな。いや話し相手があいつら以外ほとんどいなくてな。楽しかったよ。」
「どうも。」
のこり15秒。
「一つ教えてやる。お前らに勝ち目はない。」
「どういうこと?」
残り10。
「そのまんまさ。俺達はこう約束した。24時間までに攻略する代わりにダンジョンは任せろと。」
「そんなこといくらでも言えるわ。そんな言…葉…。」
俺の自信満々の顔を見たのか。嫌な思い出でもあるのか。精霊たちへ、ジュンノが叫ぶ。そこにはもはや油断した顔などない。きっと彼女らはやってくれるはずだ。
「やってくれたわねッッ!!!本体もいたからまさかとは思ったけど!!」
「気づくのが遅かったな。」
そもそも、24時間で攻略できる確証などないのになぜ信じられるのか。その訳は簡単。絆だ。
ダンジョンマスターと、ダンジョンモンスターには深い絆がある。信じるには、十分すぎる。
頼むぞ。
残り3。
「もう間に合わねえよ。」
残り2。
「見つけた!本物の水晶!!!」
残り1。
「チェック」
「メイト。」
ダンジョンバトル会場に水晶の割れる音が響いた。
《ダンジョンバトル開始から…24時間》




