潜入日和!ー忍び寄る魔の手と進化への足取りー
京都に行っており作業ができませんでした。
フザケンナ!京都で作業しろよ!というのはわかります。でも私デスクトップ使ってるんですよ。
持ってけないんですよ!!!
これからしばらくたくさん投稿するから許してください。
ゲルミルバングは退屈していた。そもそもゲルミルバングとはあのダンジョンマスターの隣にいるメイトと互角ぐらいの強さは持っている。にもかかわらずゲルミルバングはこんな浅い階層の守護を任されたのが屈辱でならなかった。配下に警戒態勢を取らせ、自分は一人出口を守る。
こういう命令だから。そう思って聞いていた命令も、あのダンジョンマスターの人となりを知るにつれ惹かれていき、今ではあの人のために何かしてさしあげたいと。そう思うまでに至っていた。かのダンジョンマスターは決して悪人ではないと。誇り高きゲルミルバングでさえそう思えるほどの何かが彼にはあった。
…第一印象は最悪だったが。
考えてみれば命令され、強制されたのは階層の守護のみ。もともと守らねばいけなかったのだから、そこにダンジョンマスターの命令で。という一文がつけ加わるだけだった。仕事をすれば報酬をもらえるし、仕事がなければ荷運びや階層づくりの仕事を斡旋してくれた。
彼は少し臆病なのだろう。過去に彼ですら気付かないほど記憶の奥底でひどい裏切りにでもあったのかもしれない。そう鋭く思考するゲルミルバングは、やはり知能ある魔物であった。
さて、ゲルミルバングは知能が高い。もし見えぬ敵が来た時に、絶対にここで姿を現すと読んでいた。
何故か。それはゲルミルバングの強さにある。ゲルミルバングという種族は魔法は不得手だが、それを身体能力だけで覆せるほどの力があった。それこそ同等の魔物の全力の一撃…例えばメイトの一撃であっても、確実に受け止められるだろう。鋭い嗅覚を持ってすれば相手の位置など簡単に把握できるという自信があった。
ゲルミルバングは賢かった。だが、未だ姿を現さない敵は本能的に危険を察知しゲルミルバングが想像だにしない手段を持って彼を追い詰めた。
突如迷宮内が揺れる。突然の地揺れに、ゲルミルバングは、一瞬足を踏み外す。
−刹那
それは地揺れによる、百分の一秒にも満たぬ僅かな隙。しかし…敵はそれを見逃さない。見過ごすはずが無かった。体勢が崩れることにより、ゲルミルバングの意識は一瞬地面に向いてしまった。しまったと考えてもう遅い。敵はゲルミルバングの足元へ鋭い視線を向けていた。
無警戒に無遠慮にその銀色に一瞬輝いた刃は鮮血を辺りへと撒き散らすかと思われた。が、ゲルミルバング、否アヴァロンは。
「グァァァァァアアア!」
それは歓喜。痛みでも喪失感でも、ましてや絶望感でもない。歓喜による叫びと牙をもって確実に、そして大胆に木屑を散らした。
その咆哮は悲鳴ではない。勝利の咆哮だ。
○○○
その頃高原エリアの一角で戦い…否、殺戮が行われていた。闘争本能に従い唸り声をあげる者。恐怖より即座に逃げ出すもの。だが、そこから逃れようとした直後。
逃げたものは一瞬で、しかしゆったりとした刃で体を両断され血をたらし死ぬ。それを見ることはかなわない。ワルスパンザー達はただただそれの本能的な愉悦のために刈り取られる命と成り下がっていた。ゆっくりと近付くその気配に気が付くこともない。
ただただ絶望し震えるしか無かったのだろうか。その活動圏内からいまだ動かず、しかし四本の足で地面をしっかりと踏みしめるワルスパンザー達は。
それは一つ間違えた。
完全に油断しきり。ワルスパンサー達は魔物の中では中位種であるにも関わらずその可能性をそれは考えていなかったのだ。それは成長の可能性。それが今。現実となって現れる。恐怖とそして戦闘に対する、歓喜。それが、残った五匹のワルスパンザー達に、共鳴する。
ワルスパンザー達は果たして賢かっただろうか。強かっただろうか。勇猛であっただろうか。
いや違う。彼らはただ
ー強欲だった。
『スキル【欲命】を獲得。』
『スキルの共鳴を確認…複数体の統配合許可…承認。』
『スキルの進化を確認…。スペシャルスキル【純粋な欲望】を獲得。』
『ワルスパンザーの強化及び配合の開始…完了。』
『ワルスパンザー五体はケルベンキルスへと進化。意志の統合…。完了』
『スキル【地獄耳】を獲得。スペシャルスキル【獄門】を獲得。』
「うみゃゃゃゃゃややぁぁああああ!」
叫びを上げる留めない欲望。最早そこに死の象徴だったそれ、アサシントレントはおらず。地獄の猫たるケルベンキルスのみが残っていた。ケルベンキルスの叫びが迷宮にこだまする。
同時に、アサシントレントを倒したであろうゲルミルバングの叫びが響く。第二階層。二つの戦闘が終わり、疲れ果てた二体の魔物に与えられたのは、少しの休息と、達成感だった。
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