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侵略者達

「え…?あ…え…?」


「どうしたの?冷めちゃうよ?」


路地のゴミ箱に腰掛ける少女。


「えっと…マイラ?」


「実はさ、しばらくこの街にいる事になってね。ゲストハウスとったは良いけど二人部屋だったから、エインツィアもどうかなって…駄目かな?」


「ええ…?…私が…?」


「どうせ、私友達エインツィアくらいだし…」


マイラの長く細い尻尾がゆっくり垂れる。

獣族は数が少ない上に、マイラ自身容姿端麗だ。

私だって、最初会った時は接し方が分からなかったものだ。


「ねえどうかな。一人じゃ寂しいな…」


この様子じゃ、孤児院を出た後も良い人付き合いは叶っていない様だ。


「私なんかで良いなら、喜んで。」


「本当!?ありがとう!」



『おいおい、このままあのデカパイ姉ちゃんとランデブーか?無垢で可憐な少女達のの蜜月が始まるのか?』


「ねえ…君の頭にはそれしか無いの?」


『なんだよ、良いだろ別に。折角の特等席なんだしなぁ。』


「このまま首吊ろうか?」


マイラのとったっていうゲストハウスのバスルーム。

そこで一人と一体の他愛も無い会話が交わさされてる。


「ねえ、これ何に使うの?」


『それは石鹸とシャンプーだ。』


「そ…そんくらい知ってるよこっちの事だよ。」


『それはシャワーヘッドだバカ。体の洗い方は分かるか?』


「む……」


まともなお風呂初めてなんだもん。仕方ないでしょ…なんて言えない。

人間でも無いディゼイに、あれこれ教えられながらなんとか風呂から上がる。


『頭からだ。しっかりやらんと風邪引いちまうぞ。』


「ねえ、なんでディゼイはそんなに詳しいの?」


『此処とは別のとある次元じゃ、俺も人間の姿をとってたからな。いやぁまた行きてえな。秋葉原。』


ディゼイが今までどんな経験を積んできたのか、人間の私には想像もつかなかった。

セーラー服は黒いワンピースに代わっており、寝巻きにぴったりだった。


『その服に汚れ一つ付かないのも、俺の魔法のお陰だがな。』


「へえ。」


『おいちょっとは気にしろよ。俺は寝るぞ。』


ディゼイは私の体内に引っ込む。

私も、ゲストハウスの寝室に向かった。

ベッドには既にマイラが身を休めている。


「…あ、エインツィア。来なよ。あったかいよ。」


「………」


なんだかドキドキするけど、私はマイラに招かれてベッドに横たわる。


「ほぉ…」


人生初めてのベッドだ…こんなにふかふかしてるんだ…


「気持ちい?」


「…うん…」


「やっぱり、夜は二人がいいね。」


「…うん…」


三日不眠だったこともあり、私はすぐに眠りにつく。

その様子を、ベッドの隣にあったテーブルの上で、ディゼイがニヤつきながら眺めていた気がした。



「おはよ。エインツィア。」


「ふわぁ…おはよう。」


なんだか懐かしい気持ちになる。

違いとしては、この部屋に私達だけなのと、廃墟同然のボロ屋じゃ無いことくらいだ。

ここで始めて、疲労が嘘の様に消え去っていた事に気づく。

マイラは先に起きて、朝食の支度をしていた。


「マイラ、私牛乳買ってくる。」


「行ってらっしゃい!」


二枚の鉄貨を握りしめて、ゲストハウスを出かける。

街の古びた商店、ギルドのお隣さんだ。


「いらっしゃい。ん?ああ、裏に住み着いてる子かい?」


「はい…前はそうでしたが、一時的に家が見つかりました。」


「そりゃよかったね。で、なんか買うのかい?」


私は、棚に置いてあった二本の牛乳を手に取り、鉄貨と一緒にテーブルに置いた。


「毎度。他に何か買うかい?」


「いえ、全財産が残り鉄貨一枚なので。」


私は、冷却魔法のかかった牛乳を持ちながらそそくさと店を出て行く。

マイラのゲストハウスに帰ると、机にはパンとサラダが乗ってて、マイラがソファで読書をしていた。


「おかーえり。」


「ただいま…」


ごとりと音を立てて牛乳は机に置かれる。

マイラさんと私は席に着いて、静かな朝食が始まる。

会話は無かったけれど、気にならなかった。


「ねえエインツィア、エインツィアってフリー?」


「うん。そうだけど。」


「私もなんだ。仲間だね。」


唯一交わされた会話がこれだ。

ディゼイは随分と大人しいけど…


『なあ、分かるか?』


「ん?」


『こっちに来てる。十…いや、二十波。』


机の上の牛乳ビンがカタカタと震えて、ディゼイが感じていた物と同じ感覚に襲われる。


『…?おい!すぐにその姉ちゃんの額に触れろ!』


訳も分からず、熱を測る様にマイラのおでこに手を当てる。

直ぐに、目に見えない何か熱い物が手の甲にぶつかる感覚がする。


「あ…あが…」


『五分。畏怖の術式からそいつを守れ。』


闇の魔力をフルパワーで放ち、その熱い物を弾き返す。

瞬間、何か強い閃光の様なものが国全体を包んだ。

私はその手でマイラの目も塞ぐ。


『3…2…1…よし、術式維持限界だ。』


マイラから手を離して、外の様子を伺う。

金色の鎧に身を包んだ有翼の兵隊。石膏像も進行してくる。


「うえ…」


『すまん。フラグ建てたの多分俺だ。』


後ろのマイラも見てみる。

まいらは、最初はぼうっとしていたけれどすぐに意識を取り戻した。


「う…うわぁああああ!」


「落ち着いてマイラ。取り敢えず落ち着いて。」


「ええ?これ…」


私はマイラをそっと抱いてみる。

昔、何か怖い事があった時、よくマイラにしてもらってたみたいに。


「あ…ありがとう…」


「しかし、一体どうして天使の襲撃がこうも頻発する様になったんだろう。」


『最初っからこのペースだぞ。認知出来るか出来ないかの違いだ。普通の人間の記憶には必ず別な物が差し替えられる。飢饉とか、大火事とか、災害とか、戦争とかだ。』


私たちは外に出ると、天空から降臨してくる天使の軍勢を見た。


『これだけの規模か。恐らく差し替えられる記憶は、※凄惨な戦争※だろうな。』


既に虐殺が始まっていると言うのに、人々は身じろぎひとつせず天を仰ぐだけだった。


『おい、マイラっつったな。聖犬くらいなら食い止められるだろ!』


「え?あの白いわんちゃんですか?」


『そいつはほっとくといろんな奴を餓死させるぞ!直ぐに倒せ!』


マイラはよく分かっていない様子で、鉄爪を装備して病院の方に向かった。


『さて…俺たちもやるか。』


「らじゃ。」


変真の時間だ。

ディゼイは二本の細身の剣、私は…これまた…


「ねえ、露出が多いのって君の趣味?」


『さあな。少なくとも俺が楽だし、”真崩疾風“は機動力もあるだろう?』


胸当てにホットパンツ。ショートブーツに革手袋。あと何故かマフラー。

奇妙だけど…変な格好だとは思わなかった。またちょっと体大きくなってるし。


「ねえ…」


『何グズグズしてる!学校の方に行った奴がいるぞ!俺たちの目的は被害を最小限に食い止める事だ!無理はするんじゃねえ!』


脈絡もへったくれもないディゼイの指示に従う。

学校の校庭に向かうと、これまた妙な姿の敵。


「カバ?」


『タイタンサーヴァントだ。数こそ少ないが強力だぞ。』


金銀の装飾品をつけたただの白いカバにしか見えないけれど、それは子供達を丸呑みにしていた。


「!」


後ろにも同じ生物が現れていた。

私はその大きな口に丸呑みにされてしまった。


”シャキシャキシャキーン!“


切り開いた背中から脱出する。

不思議と汚れなどは付かず、切った感触も生物の物では無かった。

カバの骸を放り投げ、それを足場に空中を駆ける。

量の剣を回転させる様に振るって、目標を次々と切り捨てていった。


『華麗な着地。10点だな。』


「黙って。」
























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