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補欠戦と言う名の劇場

ーー ドラゴンソウルのプリースト イライザ ーー


「ごめんなさい...ごめんなさい...!」


わたくしは、補欠の方々にひたすら謝った。

必ず勝てると言うわたくしの慢心の起こした不祥事だ。


「何を言っている。あんたらより強い奴が居たと言うだけだ。謝る必要なんて無い。」


バトルマスターのカルザさんが、優しくも力強く言い放った。


「むしろ、久々に僕らの出番が来るなんて盛り上がるじゃ無いか!ね?」


動物霊使いのマルクスィーさんも、わたくしの右肩に手を当てながら笑ってくれました。


「戦闘スタイルを見るに、彼女はデバフ、行動妨害に特化したヒーラー。戦闘不能が敗北条件のこのルールでは非常に手強い相手だけど...」


アナライザーのエーマが、いつも通りに冷静に作戦を立てていた。


「あーしがいるから大丈夫!魔法は多分無理ぴーだけどぉ、サイレントの前にデバフ態勢しこたま掛ければ御の字じゃない?ね?」


メディックナイトのケイラが、自信たっぷりに話してくれた。


「よし...強者から逃げて最強のギルドを目指すど笑い話だ!お前ら!イライザさん達の仇を取るぞぉ!」


「おおおお!!!!」



ーー エインツィア ーー


「さあて、ここでドラゴンソウルの補欠選手が出揃いました!」


司会者のけたたましい実況が会場を包み込む。

多分、今は選手の名前を読み上げているのだろう。


『ほお。さっきの奴らより全員上位職だ。』


「それってまずい?」


『別にそんなこたあ無いさ。』


私は少し眠たい目をこすりながら、少し離れた場所に並ぶ4人をぼんやり眺めた。


「それでは!イレギュラーづくめのコンバット第一回補欠戦...始めぇぇぇぇ!!!」


開幕早々、メディックナイトが後退し、スキルの詠唱をする。


「よし...【マジックシールド】!【森林の加護】!【リフレッシュコート】!」


4人全員に、何重かの光が掛かる。

魔法防御上昇に、状態異常耐性とリジェネか。


「覚悟ぉ!」


フルプレートのバトルマスターが、大剣を振り上げてこちらに近づいて来た。


「【メガトンスラッシュ】!」


光を帯びた大剣が私に振り下ろされる瞬間、私の存在は消える。

次に現れた場所は、振り下ろされ、地面に斬跡を残した大剣の上であった。


「今だマルクスィー!」


「任せて!【ソウルウルフ召喚】!お願い!」


動物霊使いの少年が、地面に魔法陣を現す。

そこから、霊体の狼が次々と出現し、一斉に私の元に駆けて来た。

狼達の牙による連撃が繰り広げられ、丁度点滅と同じスピードだった。


「うおおおおおおおおお!【ドラゴニックオーラ】!そして!【ギガントスラッシャー】!!!」


バトルマスターの大剣が振りかざされる。

パッシブでは回避は追いつかないだろう。


「...【ディスタースキップ】」


だから私は、セルフでかわした。

会場中に響き渡る爆音と、会場の盛り上がり方が、さっきの大剣の威力を物語っている。

私はその斬撃から5メートル程離れた場所に出現し、相手の様子を眺める。


「はあ...はあ...ちぃ!」


「動かないで。【リキャストショートカット】」


アナライザーがバトルマスターの補助にあたっている。


「よし...もう一発行くぞ!【ドラゴニックオーラ】ぁ....【ドラゴニックオーラ】ああ...【ドラゴニックオーラ】ああああ!」


バフの重ねがけ...次で決めるつもりだろうか。



「よし...【ソウルウルフ召喚】!【ソウルボムラット召喚】!【ソウルビーバード召喚】!」


動物霊使いは、先程よりもかなりの数を召喚する。

あれは...虫?いや、ハチドリか。


「なるほど...」


ハチドリとオオカミを使い点滅を発動させ続け、あれを私に喰らわせるつもりか。


「行くぞ!【ランドブレイカー】!!!」


「ディスタースキ....あ。」


私の足に霊体のネズミがくっついている。

発動させるつもりは無いか....はあ...


“ドオオオオオオオオオオオオオオ………”


耳が痛くなりそうな轟音が響く。

はあ…今夜は耳鳴りが酷そう。


「な…」


「【ワームオブジェクト】」


バトルマスターの持っていた大剣は消えていた。

【存在点滅】中の私と同じ場所に行ったのだ。


「【掌握スフィア】」


私はスフィアを投げ、バトルマスターの質量を掌握した。

今度は左側に叩きつける。


「ぐが…」


「あ。これは返す。」


私は指を鳴らす。

バトルマスターの近くに下向きのワームホールが開き、そこからまだ湯気を上げている大剣がぽとりと落下した。


「あとは…【クリア】」


範囲を指定し、範囲内の対象に掛かっている全てのバフ、デバフ、召喚物を消滅させる。

先ずは…


「ひ!?こ…この距離を…?」


「【ナチュレクトデバフ・スリープ】」


動物霊使いを眠らせる。

次に…


「さ…【サンダーショック】!」


雷を撃ってきたアナライザーの元に行き、その子のおでこに手を当てる。


「【模写】」


意識を失ったアナライザーをそっと地面に寝かせて、最後の標的の元に行く。


「…強いっすね。貴女。」


「貴女たちも、中々だったよ。」


メディックナイトは剣を構える。

私は少し距離を取り、さっきのアナライザーの真似をする。


「【サンダーショック】」


雷撃が魔法耐性皆無のメディックナイトを貫く。

彼女は少し笑いながら、ドサリと倒れた。

【模写】…対象に気絶効果を付与し、対象の意識が戻るまでそのスキル全てを使う事が出来る。お洒落な上強力だ。


「つ…ついに…優勝候補ギルドの8人全員を、エインツィア選手はたった一人で撃破しました…大会の歴史上、ヒーラーがオールソロクリアをしたのは…ましてや優勝候補を撃破したのは…今回が初めてです…!記念すべき6000回目の開幕を彩った!歴史的冒険者エインツィア選手の勝利です!レインズギルド、初の二回戦進出です!」


次に私を取り巻いたのは、どよめきではなく耳の割れそうな程の歓声だった。

成る程…悪くは無いね。


「エインツィアちゃん!」


ジロッドさんが最初に現れ、ほかのレインズの冒険者達も私の元に集まってくる。

と、私は背後にただならぬ気配を感じた。


「あの…皆さん、いったん離れて下さい。」


「え?うん…」


みんなが後ずさりした瞬間、私は背中に大きな衝撃を感じて地面に伏す。


「へぶ!?」


「すごいよエインツィア!やったね!」


私を下敷きにしているのはマイラだ。。

角度的に、おそらく観客席からダイレクトに来たんだろう。


「え?マイラちゃん!?」


ジロッドさんの声が聞こえる。


「あ!ジロッド!久し振り!エインツィアと同じギルドだったの?」


「ああ。懐かしいね。オリハルコンドラゴン撃退作戦以来か?」


私を潰したままのマイラと、首に包帯を巻いているジロッドさんが談笑を始める。

どうやらケガ自体は軽傷らしい。


「エインツィア…」


「?」


私は【ディスタースキップ】を使い、マイラの下敷き状態を抜け出してその隣に立った。

マイラは…全く気づいていないみたいだ。


「どうしました?ギルド長さん。」


ギルド長さんは、私の事を思い切り抱き締める。


「ありがとう…本当に…!」


「たまたま相性が良かっただけですよ。」


と、何故かこのシーンにだけマイラが反応した。


「あ!ずーるーいー!私もー!ギュー!」


これじゃあのぼせる…

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