第4話 いつきちゃんの髪
いつきちゃんの髪
すっごくつやつやなの
櫛で梳かしてあげるとふんわり
優しいシャンプーの香りがするの
あたしと同じシャンプーなんだよ!
いつもね
あたしがシャンプーしてあげてたんだよ
お風呂には大変入れてあげられないけど
美容院さんみたいに洗面所で
かゆいところはないですかーなんて
お気に入りのシャンプーをワンプッシュ
くしゅくしゅいつきちゃんの髪に馴染ませて
いつも以上つやつやな髪に仕上がったら
目に入らないよう気をつけてくださいねって
あわあわ優しくほどいてあげるんだ
いつきちゃんは
目を閉じて
そう、目を閉じて
あたしの指先に
身をまかせるの
鼻とか口とかに水が入らないよう
気をつけてシャワーするの
ふと
口の前に手をやると
吐息
そう、吐息がかかるの
こんなとき
いつきちゃんのドキドキが
あたしにも伝わってくる気がしていたの
それが
少しだけね
嬉しかったのかもしれない
昔はね
今あたしの隣にいるいつきちゃんは
あたしが何をしても
きっと何も感じてくれない
何も感じてくれなかった!
あたしが何をしてあげても!
お人形さん
20秒に1回くらいまばたきをして
うっすらと呼吸する音
鼓動する音
でも
でも!
元々はあたしが望んだことなんだ
あたしより短かった髪を伸ばさせて
お気に入りだったワンピースを着せて!
ううん
元々はいつきが望んだことだったんだよ!
あたしは
悪くないのに