第1話 いつきちゃんの唇
「ただいま!」
なんて
返事をする人は誰もいないのだけど
あたしにはいつきちゃんがいるもの!
あたしのお人形さん
とっても可愛いんだよ!
背はあたしよりちょっとだけ小さいくらいで
髪はいつきちゃんの方がちょっとだけ長いの
あたしのお下がりピンクのワンピース
もちもちの美肌にすっごく似合ってて
まだぶかぶかのセーラー服なんて霞んじゃう
あたしもお着替えしようかなって思ったけど
そんなのあとあと!
だって今日は
「いつきちゃん、お誕生日おめでとう!」
朝はあたしね気づかないふりしてたから
いつきちゃん、きっとドキドキしてたんだ
お祝いのショートケーキ
歳の数だけろうそく点けて
サプライズバースデーパーティのはじまり!
さあさあ主役はここに座って!
火はあたしと一緒にふぅって消そうね
まあるいケーキの一切れだけだけど
奮発して買ったんだから一緒に食べようね
いつきちゃんの唇
いつもはきゅっと閉じてるんだけど
くぱぁって
指で開けてあげるとね
ちっちゃな隙間があいてるの知ってるんだ
「いつきちゃん、ほら、ああんして」
一欠片フォークで取ってあげて
はむっと一口いつも頬張るんだ
でもいつきちゃんはもぐもぐしないの
しょうがないんだから!
いつきちゃんの顔をあたしの方に向けて
チュッ
って唇を重ねると
ちゅぱっ
くちゅちゅぱっ
ってあたしの舌で舐めとってあげるんだ
くちゅちゅぱっ
くちゅちゅぱっ
っていつきちゃんは欲張りなんだから!
いつきちゃんあたしのこといっぱい見つめるから
あたしちょっとドキドキしてきちゃった!
こんなことき誰かにバレでもしたら
あたしたち変人さんって思われちゃうよ!
むうぅ
「でももう一口食べたいの?」
しょうがないんだから!
ちゅぱっ
くちゅちゅちゅ
いつきちゃんはね
あたしのお人形さんだから
あたしがたくさんお世話してあげないといけないの