番外編 夢のユウくん
初の番外編です
ティナスならわかるかな。
「ティナスおはよう。今日マヤ、ユウくんの夢見たの。でもね、なんか違うの。」
「ん、おはよう。どんな夢だったんだ?」
「昔の夢でね、ユウくんと一緒に魔法の練習してたの。でも、ユウくんがおかしいの。ティナスみたいに、マヤのことかわいいって、大好きって言ってたの。魔法上手だって褒めてくれたり、頭撫でてくれたり、名前呼んでくれたの。ユウくん、マヤにそんなのしたことないよ。ティナス、なんでかわかる?」
「…マヤは、それを見てどう思った?」
どう思った?
ユウくんは優しかったけど、ティナスとは違う。でも、夢で見たユウくんはティナスみたいだった。
…
「ユウくん、まじょ、魔法で新しいことできたの。そこ、切れろ。」
スパン
「ね、すぐに木、切れるの。まじょの魔法すごい?」
「ああ、本当に魔法が上手なんだな。」
「ユウくんもすぐにできるよ。」
「ありがとう。でもこれ、人に使うなよ。」
「うん、わかった。」
ユウくんは優しい。まじょに石投げないし、まじょのこと見てくれる。まじょと話すのユウくんだけ、笑ってくれるのもユウくんだけなの。
でも、ユウくんだけまじょのことまじょって、『厄災の魔女』って呼んでくれない。
「ユウくん、もう魔法いっぱい練習したよ。次何するの?」
「そうだな、今日は一緒に魚を捕ろう。川で魚を採って、一緒に食べよう。」
「うん、川行く。」
ユウくんと一緒。まじょ、ユウくん大好き。まじょ、いっぱい魚捕る。
「上がれ。解けろ。」
「たくさん捕れたから、そろそろ終わろうか。お疲れ。」
ユウくん、頭撫でてくれる。暖かい大きな手、まじょこれ大好き。
あれ、ユウくんそんなに大きかったっけ。
「魚、焼けてきたね。はい、先に食べて。」
「まじょ、ユウくんと一緒に食べるの。」
「わかった、わかった。じゃあ一緒に食べよう。せーの、」
「「いただきます。」」
「おいしい。」
「はは、大袈裟だなあ。塩かけて焼いただけだよ。本当にかわいいなあ。」
「ユウくんと一緒だからおいしいの。誰かと食べるのはおいしいって、教えてくれたのユウくんだよ?」
まじょに教えてくれるのはユウくんだけ、ご飯食べてくれるのも。
あれ、何か…違う?
「まじょ…『厄災の魔女』、大好きだよ。」
名前、ユウくんが名前呼んでくれる。大好きって言ってる。まじょも大好き。
違う。
「お前の名前は…マヤだ。マヤ・アレグル」
マヤ、まじょの名前。ティナスが付けてくれた、名前。
違う、マヤの名前、『厄災の魔女』。ユウくんも呼んでくれたの、大好きなユウくんが言ってたもん。ユウくんもまじょが大好きって。
あれ、ユウくん大好きって…言ってくれた?
…
「おい、どうした?」
「ティナス、マヤのこと好き?」
「どうした、急に。自分の娘だぞ、もちろん大好きだ。」
あ、ティナスだ。あのユウくん、ティナスだったのかも。それなら。
「マヤも、大好きって思ったの。あれ、ユウくんじゃなかったの。ティナス、大好き。」
「夢のことはもういいのか?」
「うん。」
ティナスが、まじょをマヤにしてくれた。マヤはティナス大好き。
「なら、朝飯を食べよう。ほら、早く座れ。今日のパンは焼きたてだ。」
「うん、食べる。」
一緒にご飯食べるのはティナスだけ。
「「いただきます。」」
いつか大好きなティナスと、夢で見たみたいに、一緒にお魚食べられるかな。
個人的に『まじょ』の、子供らしいのに少し異常で無茶苦茶な思考を書くの、凄く好きです
※すみません、移動できなかったので投稿しなおしました。ご迷惑をおかけしますm(_ _)m