『厄災の魔女』という名の少女
見ての通り、主人公の一人称は『まじょ』です
まじょの名前は『厄災の魔女』。
みんな、まじょのことをそう呼ぶからきっとそう。
まじょは『厄災の魔女』だから、村のはずれに一人で住んでる。まじょのお父さんとお母さんは村に住んでるけど、まじょは『厄災の魔女』だから村に行っちゃダメだって言われた。
でもまじょは魔法が上手だから、水も出せるし、木も切れる。高いところの木の実も取れるし、火も起こせる。
それに、ユウくんが色々なことを教えてくれるから、困ったことなんてなにもない。
ユウくんはたまにしか来てくれないけど、まじょに石投げたりしないし、すごく優しくていっつも笑ってくれる。
一回だけ、ほんとに一回だけ、村の人に魔法を使おうとした時、殺しちゃダメって本気で怒られたことがあって、それだけはまじょ、ちゃんと気を付けてる。
だから大丈夫なのに、気を付けてるのに、ユウくんは今、笑ってない。
昨日はユウくん、すごく笑顔で「明日やっと勇者になれるんだ」って、言ってたのに。
「ユウく…」
「魔女、『厄災の魔女』…」
あ、初めてだ。初めてユウくんがまじょのこと、名前で呼んでくれた。やっぱりまじょは『厄災の魔女』なんだ。
「なに?ユウくん。」
「…腕を出して、少しだけ我慢してくれ」
「うん。」
何をするのかな、我慢ってなんだろう。でもユウくんがすることだから、きっと意味がある。良く見たらユウくん、今日は本物の剣持ってる。ユウくん、もう勇者になったのかな。
ピシャッ
腕が赤くなった、ユウくんがまじょのこと切ったの?
「ユウ、くん?」
ユウくんは何も言わない、だから待つ。そのまま、ユウくんはまじょの髪を掴んで剣を振る。
ザグッ
「髪の毛?」
ユウくんはまじょの髪を切った。その髪をまじょの腕に当てると、まじょの銀髪はすぐに真っ赤になる。どうしてそんなことをするのかはわからない。だから、まじょはじっとユウくんを待ってる。
「逃げろ。ここには、この辺りにはもう来ちゃダメだ。」
「うん、わかった。」
すぐにうなずく。ユウくん、すごく変な顔してる。きっと怒られた時と一緒で、ちゃんとユウくんの言ったことを気を付けていれば、いいんだ。
「…会いに来ちゃダメだ。」
「うん、ユウくんが来るの待ってる。」
今までもまじょは村に行っちゃダメだから、ユウくんのこといつも待ってた。いつもと一緒、ユウくんが会いに来るのを待ってればいいんだ。
「でも、何から逃げるの?どこに行けば良いのかな。まじょ、あんまり遠くまで行ったことないよ?」
「…ずっと東に向かうんだ…そこに、黒い森がある。そこなら大丈夫だよ。」
「うん、わかった。じゃあ、すぐに行くね。」
「…ああ。」
「あ、ちょっと待って。ユウくん、もう一回まじょのこと名前で呼んで。」
「名前?」
「うん、さっきまじょのこと、初めて『厄災の魔女』って呼んでくれたでしょ?もう一回呼んで。」
「…」
ユウくんが驚いた顔をして、まじょから目をそらしてうつむいちゃった。どうして?名前を呼んで貰うのダメなのかな。
「ユウくん、もう行くね。」
「…」
「急ぐなら魔法で飛んだ方が良いかな?でも逃げるなら、見つからないように歩いた方が良いかな?」
「…」
ユウくんが返事してくれない。まじょ、何かしちゃったのかな?
「…そうだな、見つからないように歩いた方が良いよ」
ユウくん、返事してくれた。
「うん、じゃあ…えーと、行ってきます?」
「…バイバイ、『厄災の魔女』。」
名前、呼んでくれた。ユウくん笑った。でも、すごく弱々しい?今までに見たことない笑顔だった。でも、やっと笑ってくれた。
「うん、バイバイ、ユウくん。」
次話投稿のやり方わからなくて一瞬焦ってた(自業自得である)