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魔王と勇者と厄災の魔女  作者: いわなです
第2章 幸せとティナス
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誘拐とティナス

ギリギリ投稿再び

 町に行って、髪をきれいにしてもらって、服を買ってもらって、絵本に髪止めにお菓子、いっぱい買ってもらったの。

 ティナスの知ってる人たちはすっごく優しくて、マヤのことかわいいって言ってくれて、その度にティナスが笑顔なの。どうしてお父さんが笑うのって聞いたら、マヤが笑顔だからな、だって。

 ティナスが笑うならマヤ、いっぱい笑う。ティナス大好き。

 それで、今からお昼ご飯を食べに行くの。森ではなかなか食べられない、お魚料理が食べたいって言ったらティナス、裏路地に隠れた名店があるからそこに行こうって言ってた。


「マヤ、町に来てみてどうだ?」


「町のみんな、マヤのこと見ても全然気にしなくて、ちゃんとマヤの方見て、ちゃんとマヤの名前を呼んでくれるの。来ちゃダメって言わないの。」


「そうか…。」


 ティナス、マヤのこといっぱい聞いてくれる。幸せか、おいしいか、好きか、楽しいか、困ってないか。聞いてくれる、見てくれる、笑ってくれる、教えてくれる…一緒にいてくれる。


「すまない、少し尋ねたい事があるんだが、いいだろうか?」


 …女の人?


「構わないが、まずは自分が何者か名乗るべきだろう。人間の女が一人で魔族の町にいるのは珍しいな。」


「ああ、そうだな。だが、そんな小さな女の子もいるぐらいだ、この町の魔族は人間に対して排他的ではないだろう。私の名前はフィオナ。訳あって、最近人間の町で起きている子供の誘拐事件について調べているんだが、犯人が魔族であるという話を聞いてな。しかも、その魔族は翠眼だったらしい。」


 誘拐?


「なるほどな。悪いが俺には心当たりがないし、マヤを見て疑ってるなら、全くのお門違いだ。こいつは人間で俺は魔族だが、こいつは俺の娘だ。」


「だが、その子には何かの魔法がかかっているだろう。それはなんだ?」


「…」


 ティナス、困ってるのこの人のせい?


「お父さん悪くないよ。マヤ、お父さん大好きだもん。」


「…君に魔法がかかっている以上、それが君の本心であると信じることはできない。」


 マヤにかかってる魔法。眼の魔法?


「魔法なくなったら、お父さん悪くない?」


「マヤ、行くぞ。付き合う必要はない。」


「待て、まだ私は納得していない。魔法を解かないのなら、手足を切り落としてでも捕らえ、話を聞く。」


お姉さん、剣持ってる。早く解かなきゃ。


「解けろ。」


「待てマヤ、目を閉じろ。」


「うそ…紫眼。」


「お父さん、悪くないよ。切っちゃダメ。ダメなの。」


「マヤ、こっちに来い。泣かなくていい、逃げるぞ。」


「いや待て、その必要はない。すまない、少し驚いただけだ。心配せずとも、私はその子を紫眼だからといって、命を取るような真似はしない。疑いも晴れたしな。」


 剣しまってくれた。ティナスもう大丈夫?


「信用できると思うか?」


「親のために迷わず紫眼をさらすような健気な子供を、殺せるわけがないだろう。マヤちゃん、でいいのかな?すまなかった、君のお父さんは悪くない。紫眼を全く気にしないと言えばうそになるが、君のことはいい子だというのもわかったから。ああ、泣かないでくれ。」


 お姉さんがマヤの頭撫でてくれる。


「お父さんのこと、切らない?」


「切らない。ああ、泣かないで。おい、父親なんだろう?なんとかしてくれ。」


「はあ、わかった。マヤ、もう大丈夫だ。もし切りかかられても、お父さんは傷一つ付きはしない。だから早く眼の色を戻しなさい。」


 あ、紫の眼。


「マヤの眼、紫だから町から出なきゃダメ?それにマヤ、お父さんに注意されたのに、眼の色戻した。ダメなことしたから、お父さん怒る?」


 ユウくんの時は、ダメなことする前に怒られた。今、ダメなことしちゃった。ティナス、マヤのこと好きじゃなくなる?でも、ティナス切られるの嫌だった。ユウくんみたいにお別れ?マヤ、ティナスとお別れ嫌だ。


 『厄災の魔女』


 マヤの眼、紫だから?


「ああもう、余計に泣いちゃったじゃないか。」


「ま、マヤ、俺は怒ってないから。その、俺のためだっただろう。だから怒ってない。それに、眼の色はまた黒くすればいい。」


 ティナスのためだから…ダメなこともいいの?


「怒って、ない?」


「ああ、怒ってない。眼の色もすぐに戻せるか?」


「…うん、黒くなれ。」


「すごい魔法だな。一言で眼の色を変えられるとは…」


「そんなことよりも、こいつの眼のことは」


「ん、ああもちろんだ。全面的に非は私にあるからな、誰にも言わない。」


「助かる、悪いがあまり目立つのも良くない。いくら裏路地でも、誰も来ないとは限らないし、こいつを落ち着かせる必要もある。できるだけ早く失礼したいのだが。」


「…そうだな、そもそもこちらの早とちりが原因だ。失礼した、謝罪しよう。時間を取らせてすまない、行ってくれて構わない。」


「次からは気を付けるんだな。行くぞ、マヤ。」


「ああ、失礼の詫びに一つだけ。誘拐されているのは全て、ちょうどマヤちゃんと同じくらいの年の女の子だ。ここは人間の町ではないから、大丈夫だとは思うが気を付けてくれ。」


「気には止めておこう。」



「マヤ、落ち着いたか?」


「お父さん、ダメなことしてごめんなさい。」


 悪いことしたと思ったら、ごめんなさいするってティナス言ってた。でも、ダメなことしたときはわかんない。

 まじょ、『厄災の魔女』なの忘れてた。


「…マヤ、マヤは俺が切られると思ったから約束破ったんだよな。だから俺は、マヤのことを怒ったりしない。」


 ティナス怒ってないって言ってる。ダメなことしたのに、わかんない。


「俺はマヤよりずっと強い、俺のために危ないことはもうしないこと。理解するのが難しいなら、今はそれだけ約束してくれ。少しずつ、わかっていけばそれでいい。」


「うん、約束する。お父さんが教えてくれるんだよね?」


 ティナス、怒ってない。少しずつ教えてくれる、一緒にいてくれる。


「ああ、もちろんだ。よし、いい加減に昼飯食べに行くか。」

「うん、行く。」


 大丈夫、マヤ、ティナスと一緒。ティナスがいれば、マヤは大丈夫なの。

たまにある『まじょ』呼びはわざとです

※まじょ呼びの方がかわいいから、ではありません

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