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黒影
あぁ、姉さんは約束を守ってくれたんだね。
自分の部屋にいた僕は手紙を読む彼女を見て笑んだ。当然、それを見たらさすがに自分が死んだことを自覚せざるを得なかった。
けれど、あの数の遺書を見ればわかるだろう。僕はいつだって、死ぬ覚悟はできていたんだ。
泣き止んだ彼女に、姉さんが僕からの贈り物と言って黒瑪瑙の首飾りを渡す。
彼女はどうやらすぐにオニキスとわかってくれたようで、
僕の想いをわかってくれたようで。
その刹那のうちに僕は満たされ、彼女を照らす灯りの反対にできた黒影に吸い込まれるような感覚を味わった。
なんとなく、その現象がなんなのか、理解した。
僕はこれからずっと、彼女の中で生きられるのだ。彼女の心の中に。
やがて忘れられるかもしれないけれど、それでもそれまで貴女の片隅にいられるのなら、本望だ。
やっと、叶った。