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漆黒の絶望峰  作者: 香久山ルイ
5/8

黒炭

 見慣れたものでないとはいえ、黒曜石の石器を出して、切れと言われた瞬間、僕は絶句した。

 何故? 何故僕は自ら貴女を傷つけなければならない? そんな道を貴女が敷くのか?




 ああ、


 思えば簡単なことだ。






 赤黒い薔薇。

 殺したいほど愛している。




 貴女は、僕を試しているんですね? 僕を疑っているんですね?


 その言葉が本当なのか? お前に私を傷つけることができるのか? なあ、なんだ、できないのか? ははは、法螺吹きめ。




 そう、疑っているんですね?


 それなら、証明しなければ。

 証明することで、貴女の信頼と……好意を、手に入れられるなら。


 彼女に与えられた刃を握る。

 先程吐血した影響もあってか、体力はそれほど残っていないが、冷たい石が意識をはっきりさせてくれる。意志を持って、貴女を見つめる。

 貴女の真黒い瞳を覗く。けれど貴女が思うところは僕には到底計れない。しかし、今、その奥に僕への期待と満足があるのは確かな気がする。

 それだけで充分なほどに嬉しかった。

 僕は今貴女の瞳の中にいる。ずっと望んでいたことが、今叶っている。




 それが永遠のものになるとしたら、どんなに素晴らしいことだろう。


 僕の目はきっと、淀んでいたことだろう。きっと、煤を撒き散らすだけの光ない黒炭のように。

 歪んだ欲望を希望と履き違えたまま僕は、






 彼女の頸動脈を切り裂いた。



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