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15-1話

現在の時系列にもどりました。

 ヨシオはロッソRとカップルを装って中立国であるニシノリゾート共和国に来ている。戦争を仕掛けてきたキタノオンセン帝国の状況を探るのが目的だ。ハートフル・ピース王国は本格的な戦争になる前にやめさせようとしている。


 幸いにもニシノリゾート共和国のオモイザワ村でキタノオンセン帝国の女帝ラブ・メグと会うことができた。そして、直接的に状況を聞くことができた。


 その結果、戦争はガリペラにそそのかされた一部の部下が勝手に行ったクーデターが原因であることを知った。クーデターの関係者はほぼ全員捕らえられており、この企みはすでに収束に向かっている。しかし影で操っていたと思われるガリペラの関与に関わる決定的な証拠は見つかっていない。


 クーデターの関係者は皆口をそろえて『良かれと思って自分の意思で行った、誰かから命令されたわけではない』と言っているらしい。狂信的なアイドルオタクがライバルのアイドルを蹴落とすために悪口をネットに上げたりするが、今回はそれの行きすぎた結果と考えられている。ただし真相は不明だ。


 クーデターが完全に解決するまでは危険ということで、女帝ラブ・メグはニシノリゾート共和国のオモイザワ村に身を隠している。と言っていたが、それを言い訳にして観光地で休暇を取っているだけのようだ。


 ラブ・メグの双子の妹のラブ・スジークは火山噴火や地震で被災した子供達を保護するためオモイザワ村で養護施設を運営していたが、ガリペラ派の妨害のせいで運営資金が底を尽きかけていた。ヨシオはキタノオンセン帝国の情報と引き換えに、なぜかその養護施設を買収・運営することになった。


 ついでに養護施設の側にあった潰れそうな喫茶店も買収し、カツ丼屋アルマジロとして運営を開始した。喫茶店の元の経営者と養護施設の子供達を従業員として雇い、今のところ大盛況だ。


「よし、本国に送るレポート内容はこんな感じでいいかな」


「じゃあ魔動携帯で送っておきますね。ポチッとな」


 俺はオモイザワ村のホテルでロッソRと一緒にこの数日間の情報をまとめ、ハートフル・ピース王国へと情報を送った。

 

「スジークとは近々会って、転生前の記憶について聞こうと思う。もしかしたら故郷の知り合いかもしれない」


「焼肉すきよさんでしたっけ?」


「スジニクスキヨさんです」


「その人、彼女さんだったんですね。異国で再開なんて素敵!再び恋が燃え上がるのですね」


「いや、知り合いなだけだから。俺が勤めていたコンビニのお弁当開発に協力してもらっていただけだから」


「とか言って、照れちゃって。本当は…うふふ。でもそうなるとシャム姫様と三角関係!いやプリンセス娘のミケちゃんもいるから四角関係!いや城の料理長のタベタリーナ様も加わって五角関係かも!大変ですぅ」


 ロッソRが顔を手で隠して悶えている。年頃の女子の妄想は止まらない。しかしどこから手に入れた、その、そこそこ詳しい情報。


「まだスジークが筋肉好代さんと決まったわけでは無いが、もし故郷に帰りたがっていたらどうしよう」


「ヨシオ様も故郷に帰りたいのですか」


「いや、俺はむしろこちらの世界の方が充実した人生なので故郷に帰れなくても問題無い。でも、そうではない人もいるだろう。元の世界への帰還方法なんて無いだろうけど」


「いえ、ありますよ」


「あるの!?で、でも無理ゲー的な条件とかあるんでしょ」


 形式的には帰る方法はあると言いながら、実際にはこの世界の魔王を倒すとか、世界の崩壊を防ぐとか、神と同レベルになるまで修行するとか一個人が達成するには無理な条件であることが普通なのだ。


「いえ、条件は無いようです。普通に人生を全うすれば良いらしいです」


「普通に人生を全う?」


「ええ、寿命で死んだり戦って死んだり、とにかくこの世界で死ぬと自動的に元の世界に戻るらしいです」


「自動的に!」


「しかも召喚された直後の時間に。召喚された人にとっては夢に似た感じで異世界の記憶が残るらしいです。複数人であっても時空を超えて同じ時刻、同じ場所に戻るらしいです」


「つまり俺が今いるこの異世界は、俺にとって夢の中の出来事なのか」


「夢では無いですが結果としてはそんな感じのようです。しかし私達にとっては明らかに夢ではありません。ヨシオ様がこの世界にいることは私達にとっては現実のことです」


「しかし、なぜその仕組みが分かったのだろうか」


「それはマヌケ・・・不幸にも二度召喚された人が過去にいたからです。その人の体験のおかげで召喚のしくみ等がかなり明らかになりました。この人の活躍は絵本にもなっていて皆が子供の頃に読んでいます。夢の中で勇者となり夢の世界を救う物語です」


「元の世界に戻れることは、おとぎ話の類じゃなくて本当のことなんだね」


「ええ、本当です。ハートフル・ピース王国の城内に二度召喚された人の資料が残っています。私も両親から聞いただけですが、その人の活躍は絵本の通りらしいです。また本人が書き記した資料もあると聞いています」


 過去の資料があるなら、召喚された人が帰国できる事は本当かもしれない。まあ、二度召喚されたといっても自己申告であり、確かめる方法は無いが。とにかく城に帰ったら資料を見せてもらおう。


 打ち合わせをしたり色々と資料をまとめていたら、いつの間にか空が明るくなっていた。まあ、任務もほぼ終わったことだし今日は昼過ぎまで寝ることにしよう。ここのところ忙しかったし。うん、それがいい。


「まずいことになったぞ!」


 突然背中から声をかけられた。そこにはここに来るとき魔動馬車で見かけた美人の女性がいた。いつの間に?


「クレナイお姉さま!」


「え、ロッソの知人?」


「ヨシオも聞いてくれ。私は赤い少女隊のリーダーのクレナイRだ。ロッソRとは別行動で任務についている」


 赤い少女隊RというのはロッソRも所属するハートフル・ピース王国の女性版レンジャー部隊だ。メンバーはロッソRも含め全員で五人いる。


「何が起きたのですか?」


「現在、西の山方面から数百匹の魔獣がオモイザワ村に向かって来ている」


「「数百匹の魔獣!」」


「誰かが意図的に行っている可能性もあるが詳細は不明だ。いずれにせよ、我々は大丈夫だが魔獣に襲われれば一般人にかなりの被害が生じるだろう。見捨てるわけにはいかない」


 グルメ勇者の俺は数百匹を相手にするのは無理だ。


「どのような魔獣なのですか」


「最強最悪の魔獣と呼ばれている黒いアレだ。戦えば精神が逝かれる。口に出すのも恐ろしい」


「え、クレナイお姉様!ま、まさか黒いアレとはあの黒いアレですか!」


 ロッソの顔から血の気が引いた。


「それだ」


 そんなに強い奴なのか。まさかドラゴン、いや精神系ならリッチの可能性も。


「もっと詳しく説明して下さいよ。黒いアレって何ですか」


「黒くて平べったくてツヤツヤな昆虫型の魔獣だ。体長三メートルくらいで羽があるのに地面をカサカサと高速で走る。しかし『ここぞ』というときに飛びかかってくるのだ!」


 それって巨大ゴキ・・・!

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