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14-5話

 引き続きヨシオが召喚される数年前の話です。

「待ってたわ!スジーク!」


「シャム!久しぶりね。三年ぶりかしら」


 数年後プリンセス娘のセンターに選ばれハートフル・ピース王国のプリンセスとなるシャム姫。この当時はまだプリンセス娘の研究生から正規メンバーに昇格したばかりであった。


「シャムはちょっと見ない間に美人になりましたね。妖精のようだわ」


「スジークこそ、胸周りがかなり成長したようでウラヤマシイ。あ、そちらがお姉さんね」


「スジークの姉のメグじゃ。よろしくなのじゃ」


「こちらこそよろしく。でもしゃべらないと区別がつかないくらい似ているのね。胸周りも同じように成長しているし・・・」


 スレンダーな体型のシャムは羨ましそうに見ている。ラブ姉妹はこの頃すでに完成されたナイスバディーを手に入れていた。


「そ、それよりダンスレッスンよ!コーチを紹介して頂けるのよね」


 ダンスは貴族の嗜みである。社交ダンスから進化したこの時代のダンスは、ペアとなって踊る必要は無い。いかに周りの人達にダンススキルを見せつけるか、そして楽しませるかが重要となっている。まさにエンターテイメントでありおもてなしの心である。その昔、ジャイケル・マックさんという貴族がダンス革命を起こした結果なのだ。


 そして今ではハートフル・ピース王国だけでなくキタノオンセン帝国においてもダンスはリーダーに必要なスキルとされている。しかしラブ姉妹はキタノオンセン帝国の王子を取り込んだガリペラの妨害のせいで、国内でダンスコーチを見つけることが難しくなっていた。


「あなたたちに協力するコーチは、今こちらに向かっているはずよ。もう少し待って下さいね。それまではこの建物の内部を紹介するわ」


「「よろしくお願いします」」


 ラブ姉妹はシャムの後について建物の奥の方に移動した。


「一階は劇場とレストランよ。劇場では毎日プリンセス娘グループのメンバーがライブを行っています」


 そう言って、シャムはドアの隙間からライブの様子を見せた。


「見たこと無い人達じゃがすごい熱気じゃ!」


「鬼気迫るダンス!あの踊りの上手い人達は誰なの?」


「あれはPガールズですね。解散の危機にあったメンバー達をスカウトして作ったチームです。最近はハートフル・ピース王国の本格的ダンス好き女子に大人気のチームです」


 次にレストランへと移動した。


「こちらはメイド猫喫茶です。猫っぽい恰好をした研究生達が顔を覚えてもらうため、そして生活費を稼ぐため、練習の合間にここで働いています」


「いい考えね。これがメニューね。『キュウリと蜂蜜のメロンフロート』キュウリなのにデザート?」


「『みかんと海苔のイクラ巻き』これイクラ入ってないのじゃ!他にも怪しいメニューが沢山あるのじゃ」


「ああ、それは研究生達が考えたメニューよ。安い素材を組み合わせると思いもしない高級素材の味になるのが流行っているみたいね」


 貴族育ちのラブ姉妹には思いつきもしない考えだ。二人は衝撃を受けている。


「二階から上は五階までレッスンルームよ。しばらくの間、二人にはここの研究生達と一緒に訓練してもらう予定よ。その後、個人レッスンの予定よ。それでいいかしら」


「「もちろんです」」


 シャムはラブ姉妹を二階の練習室に連れて行った。そこでは研究生達が自主練をしていた。


「「「「シャム様こんにちわ」」」」


 シャムを見つけた研究生達が集まってきた。そして、緊張した面持ちでラブ姉妹を見ている。中にはくそう!負けた!とか、ああ、次回の昇格はダメかもとかダメージを受けている人達もいるようだ。


「みんな楽にして。今日から一緒に訓練する双子のラブ・メグさんとラブ・スジークさんです。二人はキタノオンセン帝国から勉強に来ました。しばらくの間ですが、いろいろと教えてあげて下さい」


「「よろしくお願いします!」」


「良かったー!新しい研究生かと思ったよ」


「正規の研究生じゃないんですね!」


「正規メンバーへの昇格枠、確実に二つ減ることを覚悟しました」


「ほんとヤバいよそのスタイル」


「胸だけで負け確定だよ」


「顔も美人過ぎるよ」


「キタノオンセン帝国レベル高すぎ」


 正規の研究生では無いということで、皆に快く受け入れてもらえた二人であった。その後、研究生達に囲まれ質問攻めに逢っている。シャムはそれを生暖かく見守っている。しばらくして質問攻めが終わり、スジークがシャムの側に来た。


「シャム、私達はここで何をやればいいの?」


「まずはフィジカルトレーニングね。ダンスに必要な基礎体力や基礎的な筋肉を付けてもらうわ。初めは大変だと思うけどでも専門のフィジカルトレーナーが居るから大丈夫ですよ」


「フィジカルトレーニングか、辛らそうだな」


「筋肉が付いたらこんなこともできるわよ」


 シャムは助走無しでいきなりバク転をした。そして音も無く着地し、しなやかにポーズを決めた。まさに妖精のようだ。


「すっ、すごい!」


「(パチパチパチ)相変わらず素晴らしい。さすがシャムだ」


 いつの間にか筋肉モリモリのむさ苦しいタンクトップ姿の男性が練習室に入って来ていた。おしゃべりをしていた練習生達がその男性の前に一列に並んだ。ラブ姉妹もそれに習って並んだ。


「ラブ・メグさんとラブ・スジークさんだね。ようこそハートフル・ピース王国へ!二人の事は以前から良く知っているぞ」


「以前お会いしましたか?そういえば見たことあるような?」


「そう言われれば見たことあるような無いような気がするのじゃ」


「フッハッハッハ!この声に聞き覚えは無いか!」


 その男は突然高笑いをしてマッスルポーズを決めた。


「「あー!ヒツジキング三世王子!」」


 そこにいたのはまだハートフル・ピース王国の王様になる前の、ヒツジキング三世王子であった。


 貴族のパーティーなどでラブ姉妹は隣国の王子であるヒツジキング三世に何度か会っていた。しかし、タンクトップ姿の王子は単なる体操のお兄さんにしか見えない。


「そうだ!俺こそがヒツジキング三世だ!筋肉の魔術師と呼ばれておる俺様にかかれば一流のダンサーになれること間違いなしだ」


「というか、なぜ王子様がフィジカルトレーナーを?」


「俺は以前から体を鍛えるためにここに毎日通っていたのだ。しかしある時壁にぶち当たったのだ。更なる高みの筋肉を目指すにはどうしたら良いか考えた。そして筋肉の勉強をしまくったのだ。自主勉強だけでは飽き足らず、その後大学院に通い、筋肉博士の学位まで取得したのだ」


「すっ、凄い・・・」


「その後、筋肉の素晴らしさを分かち合おうと思い、暇を見てはここで遊・・・指導することにしたのだ。安心しろ、無理をしてでも二人は懇切丁寧に指導してやるからな。大切な客人だからな。フッフッフ」


 ヒツジキング三世の目がキラリンと光った。


「「いえ,無理して頂く必要はありません!」」


 何かを感じ取ったラブ姉妹であった。果たして二人のダンススキルは向上するのか、それとも単なる筋肉好きになるのか!

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