13-10話
スジークの姉、つまり魔術師の館のメグちゃんがキタノオンセン帝国の女帝ラブ・メグだった!俺はロッソRと一緒に表通りにある魔術師の館へと向かった。以前と同じ位置に魔術師の館はあった。俺は迷わず中に入った。
「魔術師のメグちゃんいますか?」
「待っていたのじゃヨシオ、ロッソ。まあ、そこに座るのじゃ。早速、魔力測定するかのう」
「魔力測定はもういいです」
「なんじゃ、魔力測定じゃないのか。じゃあ、私に一目ぼれでもしたのかのう。可愛い彼女がそこにいるのに気が多い奴じゃ。まあ、どうしてもというなら魔力測定するなら考えてもいいぞ」
「いや一目ぼれじゃないし、魔力測定もいいです」
「血圧測定でもいいぞ」
「やっぱ、その機械は血圧測定器ですよね」
「い、いや違うし。血圧も測定できる魔力測定器だし」
「ご、強情な!」
「ヨシオ!そんな事より」
「そうだった!すっかりペースを乱されてしまった。メグちゃんにお聞きしたいことがあります」
「なんじゃ?もしかして・・・す、スリーサイズは秘密じゃ!」
「いえ、それは秘密でいいです。スジークからあなたがキタノオンセン帝国の女帝ラブ・メグであるとお聞きしました」
「ほう。それを信じるのか?根拠は無いようじゃが」
「なんとなくヒントはありました。俺達はこの村に来る途中に盗賊団に襲われました。そして先日、盗賊団のリーダーがキタノオンセン帝国の草食系男子派だということがわかりました。そして彼らは女帝がこの村にいることを知っていた。そして探していた」
「しかしそれだけでは私が女帝である根拠にはならないのじゃ」
「奴が言う女帝の特徴は、ムチムチボイ・・・スタイルも良く、美人で可愛らしい」
「そこは確かに合致しているのう。もっと言うが良い」
「そして、性格が最悪!」
突然、背筋がぞっとした。メグちゃんの周囲に魔力が高まっているような気がする!ヤバい!
「って奴らは言っていたけど、それはユルフワ・ガリペラ派閥、つまり草食系男子派の陰謀だと思います。名前からみても明らかにガリペラの方が悪役令嬢ですから」
「うむ、妥当な判断じゃ」
「身体的特徴から草食系男子派はスジークが女帝であると疑っていた。何故ならあなたの双子の妹スジークもスタイルが良く、美人で可愛らしいから。何よりあなたと同じ顔だし。だから奴らはちびっこハウスにちょっかいをかけていた。しかし本当はあなたが女帝だ。その魔術師のような服は巨大な胸を隠すためだ!他の人は誤魔化せても俺の目は誤魔化せない!」
「ヨシオ!言っていることは真っ当かもしれないけどセクハラよ!」
ロッソRから注意を受けた。すいません。
「なるほど。半分は当たっているが半分はハズレじゃ。まあ、そこまで理解しているならいいじゃろう。私がキタノオンセン帝国の女帝じゃ。そしてスジークは私の影であり時には女帝そのものでもあるのじゃ。つまり、二人合わせて女帝なのじゃ」
「あなたが女帝で、スジークは側近であり替え玉だったりするわけですか。それでは、改めて名乗らせて頂きます。私はハートフルピース王国のツツゴウヨシオです」
「そして私はヨシオのサポート係のロッソと申します」
「勇者ヨシオと赤い少女隊のロッソRじゃな」
「やはり。ご存知でしたか。私の正体を見破るとは、さすが女帝!」
さすがに、女帝の仲間は何百人もこの周辺にいるのだろう。俺達はカップルに偽装してきたのに情報収集能力半端ない。
「いや、オモイザワ村に来る道中、シルバーウルフを手なずけるような人物は只者ではあるまい。誰でもそう思って調べるじゃろ」
「バレたのはヨシオのせいだったのね」
「そのうち、こちらから出向いて正体を明かそうとしていたところじゃ。手間が省けて良いのじゃ」
聞いていたのとは異なり女帝は性格も良さそうだし、好戦的でもなさそうだ。ならば、ここでお願いするしかあるまい。
「女帝ラブ・メグ様、お願いがあります。この戦争を中止してほしいのです。両国には戦う理由が無いはずです」
「その通りじゃ。宣戦布告をしたのは私では無いのじゃ。ガリペラの色香に惑わされた私の部下の何人かが、私の足を引っ張ろうと勝手に宣戦布告をしたのじゃ。私がこの近くの国境で起きた地震で崩壊した村の調査に来た隙をついてじゃ」
「じゃあ戦争するつもりは無いのですね」
「そうじゃ。今のところガリペラの派閥が雇ったと思われる傭兵が散発的に嫌がらせをしているだけじゃ。キタノオンセン帝国の軍は動いていないのじゃ」
「ならどうしてすぐ捕まえないのですか?」
「せっかくの機会じゃ。この際、部下の中にいる裏切者を全員あぶり出そうと思ってな。私が帰らない方が奴らが図に乗るじゃろ。尻尾を出しやすい。もうしばらく放っておくつもりじゃ。それに」
「それに?」
「オモイザワ村でこうやっているのも楽しくてな」
「遊んでいるのですね」
「作戦じゃ、作戦!もうしばらく迷惑をかけると思うが我慢するのじゃ。帰ったら筋肉バカ、じゃなくてヒツジキング三世にはそう伝えるのじゃ。なお、くれぐれも内密に。あちらにもガリペラの派閥が潜んでいるようだからのう」
「「わかりました」」
「ところで、レストランの方はどうじゃったかのう」
一瞬、女帝ラブ・メグの瞳が輝き、口元がニヤついたように感じた。