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13-9話

 今日は『カツ丼アルマジロ』の仮オープンの日だ。まずはオモイザワ村警備署の人達に試食してもらおうと思って警備署のケイジデカに声をかけたのだが。


「食堂のおばちゃんにも声をかけたらどんどん話が広がってこんなになってしまったわけだが」


 ケイジデカは長蛇の列を見ながら申し訳なさそうにそう言った。


「おばちゃん、あのカツ丼は美味しかったから皆に食べてもらおうと宣伝したのね。良く考えたらおばちゃんも食べたくなったのね。そしたら警備署の食堂を開けてる場合じゃないでしょ。皆で来ることにしたのよ」


「あ、ありがとうございます。どんと来いです!材料が尽きるまで皆で頑張ります。店長スジーク!挨拶よろしく」


「え、ええ!挨拶。こんな大勢の前で・・・何だか恥ずかしいわ」


 特別仕様の胸が強調されたコスプレメイド服を着たスジークが恥ずかしそうに登場した。その恥ずかしそうな仕草、メイド服、そしてナイスバデーの破壊力は凄まじかった。


「「「うぉー!!!」」」


「「「かわいい!!」」」


 列に並んでいる警備署の署員達がざわついている。


「皆さんはじめまして。カツ丼アルマジロ店長のスジークです。今日はお越しいただきありがとうございました。私が愛を込めて作ったカツ丼!ご主人様に食べてほしいの」


「「「うぉー!!!」」」


「「「カツ丼食わなくても店長に会うため毎日来るぞ!」」」


「「「俺も!!」」


 カツ丼は食え。


 事前に俺が指示した通りのセリフを読み上げるスジーク。美味いカツ丼に加え、コスプレ喫茶の要素も取り入れたのだ。


「「「ご主人様お帰りなさいませ」」」


 ドアが開き、次々と客が店内に流れ込む。


 スジークの経営する養護施設から働く意欲のある女子を給仕として採用した。こちらは普通のコスプレメイド服だが、カチューシャは猫耳だ。一方、男子は厨房で調理をしているデーチのサポートをしている。


 今日はメニューがカツ丼だけなので、注文を聞く前からカツ丼をどんどん作る。ロッソRの指示のもと、女子がそれを客に持っていき代わりに代金を受け取る。なるべくシンプルな仕組みで大量の客をさばくのだ。


「うめー!こんなカツ丼食ったこと無い!」


「ほんと美味しい!」


 コスプレに加えカツオ丼も好評のようだ。デーチにカツ丼作成マニュアルを徹底させ、スジークがちょうど良い魔力の込め方を習得したおかげでかなりレベルの高いカツ丼が作れるようになったのだ。


 しかし最も心配していたのはカツ丼を作る速度だ。養護施設の男子が流れ作業で下準備を行い、デーチがダンスで鍛えたステップで流れるようにカツ丼を仕上げていく。そこまでしても作業が追いつかない。客には長い時間、待ってもらう必要がある。


 そんな時のためのスジークだ。スジークはコスプレ姿で並んでいる客達にスープを配り、お話をしている。客達は長く待たされているのにご機嫌だ。これならぼったくりスープバーでも良かったかも。


 そんな忙しい昼時間を過ごし何とか並んでいた客の全員がカツ丼を食べ終えた。皆はへとへとになってイスに座り込んでいる。俺は残った材料で皆のカツ丼を次々と作っていった。


「皆、ご苦労様。まだ仮オープンなので夜は店を開けない。また明日の昼、頑張ろう。とりあえず皆のためにカツ丼を作った。昼食はこれを食べてくれ。その後、明日の準備に移ってくれ」


「「「やったー」」」


 皆、カツ丼を食べ始めた。


「美味しい!」


「サクサクだ!」


「肉汁たまらん!」


「半熟卵がまったり!」


 皆、喜んでいるようだ。


「スジーク、どうだカツ丼は」


「とっても美味しい。しかも何だか懐かしい味。どこかで食べたことあるのかしら?」


 もし、他にも俺の故郷から召喚された人が居れば作った、あるいは作り方を教えたとしてもおかしくない。その人を見つけることは故郷の人に会うチャンスに違いない。


「食べたのはどこかのお店かな?」


「全然覚えてないわ。ただ何となくそう思っただけ」


「そうか」


 残念ながらヒントになりそうなものは無いようだ。


「カツ丼、準備さえしておけばかなりの速度で作れることがわかったわ。この調子なら、近いうちに黒字に転換し、さらにガッツリ利益も出てきそう。借金もすぐに返済できそう。色々とありがとう、ヨシオ」


「お手伝いができて良かったよ。皆が喜んでくれているのが何よりうれしい」


 皆、疲れているはずなのに、カツ丼を笑顔で食べている。つぶれそうな養護施設と喫茶店だったとは思えないほど皆に希望が満ちている。


「ヨシオは女帝に会いたいの?」


「できればそうしたい。この戦争を止めたいんだ。そのためには女帝と会って宣戦布告の理由を聞きたい。どう考えても必要な戦いとは思えないんだ」


「そう。私達を助けてくれたお礼に良いことを教えてあげるわ。あなたはすでに女帝に会っている」


「え!?」


「双子の私の姉がキタノオンセン帝国の女帝ラブ・メグよ」


「あのなんちゃって魔術師のメグちゃんが!?まじかよ!先に教えてくれよ!」


「あなた達が信用できるかどうか見定めていたの。でも、あなた達の行動を見て信用できると思った。悪く思わないでね。でも良かった。むしろ私達の方が、ヨシオ達に協力してほしいと思っていたから」


「協力?そういえば草食系男子派と、ガリペタと揉めているって言っていたな」


「ガリペラです。ユルフワ・ガリペラ。彼女が女帝の座を狙い色々な事件を間接的に起こしているの」


「ユルフワ・ガリペラ・・・」


 華奢で優しそうでおっとり顔で男心をくすぐるにもかかわらず計算高い女性なのだろうか。名前からして女性の敵なのは間違いなさそうだ。

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