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3-1話

「あそこにいたぞ!」


「やばい!見つかった!」


 ハートフルピース王国の街並みは中世ヨーロッパの街並みによく似ている。俺が住んでいる城はここから三十分くらい歩いたところだ。そんな街中の石畳の道を俺は全力で走っていた。


 シャム姫からもらった『第千二十三回 ハートフルピース王国王女選抜総選挙投票用はがき』の意味が良く分からなくて、本人に聞くのも失礼な感じだったので、城から出て街で情報収集していたのだ。しかし、今、俺の命が危険にさらされている。


 分かったことがある。シャム姫は昨年度のハートフルピース王国王女選抜総選挙(王女総選挙)で一位に選ばれて、一年間だけ王女様(姫様)の地位についているのだ。そういえば、シャム姫もアイドル活動やってるって言ってたし。


『アイドル』の方が元々の本業で、『お姫様』の方が期間限定だったとは。


 この国は強大だったので、これまでは誰が姫になろとどうでも良いくらい平和だったってことだろうな。第千二十三回ということは千年以上前からこのシステムなのか?一年に一度の祭りだと思えば、まあ楽しみが一つ増えたって感じで良いだろう。しかし、本当の選挙で選ぶのがすごいよ。当時仕組みを考えたプロデューサーであるナツモト・タカスィーの子孫は、今も印税でがっつり儲けているらしい。


「あっちにいたぞ!」


「くそう、また見つかった!城は見えるのになかなか近づけない。どうなってんだ、全く」


 俺は知らない人達から命を狙われ逃げているのだ。早く城に帰りたい!原因は一時間ほど前に俺がつぶやいた一言だった。


 ◇ ◇ ◇


 一時間前


「銀板ショップ、ここが元居た世界でいうところのCDショップか」


 店の入口には色々なCDらしきもの、銀板と呼ぶらしい、がCDと全く同じ形状で売られている。素材は本物の銀の板だ。これを銀板プレーヤーという魔道具にセットすると魔法で封入された音声が再生されるらしい。


 店内でぷらぷらと銀板ジャケットを見ていた。


「最近の人気曲か」


 ダンゴムシ/ワラジムシ [gaiko]

 いい曲でせつない感じ。でも、ちょっと聞いた感じgaikoさんの歌はどれも似た感じで区別つかない。


 道路 第百十五章~第百五十章/道路 第百五十一章~第三百二十章 [道路公団]

 道路工事に伴う男の悲哀を切々と歌い上げる。感動的。後半投げやり感が。何章まであるのだろうか気になる。


 プリンセス娘、王女様総選挙のコーナーを発見した。


「人気は『走れシャム猫/マンチカン三郎 [プリンセス娘]』か。昨年の一位と二位のための選抜曲だな。王女はプリンセス娘のメンバーの中から選挙で選ばれるのか。ふむふむ。メンバー全員で四千人!!!今年の予想七福神、シャム姫がトップのようだ。確かに飛びぬけて美人だ。でも、アイドルだけあって、他の皆も可愛い。二位のマンチカンなんて手足短くて可愛らしい!しかし、この三位のぽっちゃりさんはありえねぇな」


「ちょっと待てい!お前!今、ミケちゃん馬鹿にしただろ!ぽっちゃりさんだと? 本人が一番気にしていることだぞ!」


「いや、マンチカン様を馬鹿にしていたぞ。手足短いって。傷つきやすい年ごろなのに許さない!」


「あ、あなた達、だ、誰?」


「ミケちゃんを馬鹿にしただろう」


「マンチカン様はきっと傷ついている」


 変な人達が迫ってきた。


「ミケもマンチカンも知らないし、お前達も知らない」


「こいつ!呼び捨てにしやがった!お前誰押しや!」


「誰押しって、シャム姫しか・・・」


「おのれーーー!シャムかぁ!許さん!去年の雪辱も忘れない!絶対許さんぞ!」


「何?何?何でそんなに興奮してるの?」


「このシャム押しがミケ様とマンチカン様をディスりやがった!生かすな!」


「どいつだ!」


「どいつだ!」


 どんどん変な奴らが集まってくる。


「あの変な服着ている奴だ!捕まえろ!」


「おー!」


 やばい! たぶん二位の少女がマンチカンで三位の少女がミケか! 奴らはトップオタ集団か! 連日の暗殺部隊の奴らよりよっぽど殺気が漂っていた。怖いしキモイし、とりあえず逃げよう!


 ◇ ◇ ◇


 というわけで一時間くらい逃げ回っているのだが、追いかけられているし、道も良く分からないし、城に近づくどころか遠ざかっているような気がする!あいつらどれだけ粘着質なんだ!


「あそこだ!」


「やべ!また見つかった!なんて嗅覚だ!」


 逃げている途中でデパートらしきところを発見!とりあえず逃げ込もう!人に紛れなくては!俺はデパートの中で並んでいる人達の最後尾につき、上着を脱いでTシャツになった。


「どこだ!」


「店の外の方へ行ったぞ!」


「外らしいぞ!」


「おお!」


 俺は声色を変えて偽情報を流し、外に誘導した。ふう、なんとか巻いたか。しかし、奴らの執念は恐ろしいな。今度から注意しよう。しかしこのデパート広いな。吹き抜けは大きなお城の中のようだ。コンサート用のステージも見える。


「今年もシャム様だよな」


「マンチカン様の追い上げも凄いらしいが、シャム様にはかなわないよなぁ」


 周囲の人達からそんな声が聞こえてきた。プリンセス娘の総選挙は皆気になるんだな。他にも色々ときき耳を立てて聞いていたが、やはりシャム姫は今年もぶっちぎりのようだな。ミケとマンチカンの話は誰もしていないので、トップオタ達はこのあたりにはいないようだ。安心して胸をなで下ろした。その時、


「誰のを何枚」


 謎の声が聞こえてきた。

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