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2-3話

 敵の小隊が来る数時間前、シャム姫と一緒に武器庫に来ていた。


 これはもしかして、もしかするかも。コンビニの制服のポケットから取り出したバーコードリーダーを銀色のレイピアにあててみる。眼鏡のレンズに情報が表示された。ふふ、どうやら掘り出し物のようだ・・・俺の左手が熱くなった。


【スキル】[コンビニ]発動。


 [コンビニ]は意図的には発動できないが、今回も都合の良いタイミングで発動した。俺の左手の手のひらにバーコードが浮かび上がった。バーコードリーダーをかざす。最も都合が良い商品となると、あれだ、あれしかない!カモーーン!


「ピッ!」


『ほら貝印のダイヤモンドシャープナー』


「きたーーーーー!」


 これは刃物で有名なほら貝印の包丁研ぎ器だ。小さくてそこそこ安く、それでいて高性能だから、うちの系列のコンビニで販売しているのだ。他の系列店なら置いていなかっただろう。危なかった。さて、レイピアなら包丁くらいの厚さなのでなんとか研げるだろう。しかし、本当に効果があるかどうか?試すしかない。


「ヨシオ様?何でしょうかこれは?」


 姫様は首をかしげている。それもそうだろう。ステンレス棒の先に溝付きの長方形の黒いプラスチックが付いていている。この世界では見たこともない素材と形だからな。


「これは包丁を研・・・」


「てーへんだぁ!てーへんだぁ!」


「またお前か!」


「もうすぐ城に奴らが来るらしい!」


「暗殺なら、夜に来るはずですわ」


「なぜか正面から歩いて城に向かって来ているようです!姫様は早く隠れて下さい」


「わかった、姫を頼む。俺は準備が整い次第、王の所に行くと伝えて下さい」


「分かりましたわ!」


 姫を送り出した後、俺は包丁研ぎ器でレイピアを、あの硬くて削れなかったレイピアを研いだ。


「うむ、うまく研げそうだ。」


 このレイピアに使われている金属はアダマンタイトだ。ダイヤモンドが金剛石ならば、アダマンタイトは金剛鉄、つまりダイヤモンド並みの硬度を持つファンタジー的金属だ。ダイヤがダイヤの粉を練り込んだ砥石で削れるように、アダマンタイトもダイヤモンド砥石付き包丁研ぎならば研げるのだ。しかも研ぎやすい!すごく便利だ『ほら貝印のダイヤモンドシャープナー』素敵!


 俺は必死にレイピアを研ぎ始めた。一本目と二本目を仕上げ、そして三本目を仕上げる頃に、庭先で戦闘が始まったようだ。剣を打ち合う金属音が聞こえてくる。時間切れのようだな。俺は三本のレイピアを持って王の下へと向かった。


「待ってたぞ!勇者ヨシオ!」


「この剣を使ってみてください!」


「それは刃が硬くて研げなかったレイピアだな」


 王は、俺からレイピアを受け取り、部屋の片隅に置いてあった二代目ヒツジキングの像めがけて振り下ろした。


「こ、これは・・・」


 二代目ヒツジキング像はレイピアによってバターを切るかのよう切られた。それも、頭の上から真っ二つに。青銅製で高そうなのにいいのか!しかも先代というかたぶん親の像!


「素晴らしい切れ味だ!こいつの顔を真っ二つにできて気分も良いわぁ!」


 先代とは何かあったようだが、気にしないでおこう。


「この金属はアダマンタイトかと思われます。俺は少し刃を研いだだけです」


「あの、伝説の魔法金属、ダイヤモンド同様の硬さを誇るアダマンタイトを研いだか!良い切れ味だ!」


「はい!しかし、時間が無くて三本しか研げませんでした」


「十分だ。俺が直接鍛えた幹部兵達に使わせて、力を見せつけてやろう!」


「レッド、ブルー、グリーン!」


「「「お呼びでしょうか」」」


 細マッチョイケメン三人組が戦隊っぽく現れた。


「これは勇者が用意してくれたアダマンタイト製のレイピアだ。大切に使え」


「「「こ、これが!アダマンタイト!」」」


 王はレイピアを一本づつ細マッチョに渡した。三人は尊敬の目で俺を見ている。包丁研ぎで研いだだけなのに、そんな目で見られて気恥しいです。


「俺が合図したら、レイピアで奴らの剣を全て根元から切れ!全ての剣だ!力を見せつけてやるのだ!切れ味はあそこにある通りだ」


 王は、真っ二つになって床に転がった二代目ヒツジキング像を指し示した。


「「「承知致しました」」」


「待たせたな勇者ヨシオ。敵は正面だ。こちらも正面からもてなすとしよう!フハハハ!」


 こうやって俺達は敵の暗殺部隊を圧倒し、撃退したのであった。もちろん俺は、またしても戦わずに暗殺の危機を乗り切ったのだ。


 ◇ ◇ ◇


 敵の小隊が退散後。


 シャム姫の目がよりいっそうキラキラしている!可愛いよシャム姫!今か!今なのか!いや、まだだ。まだ、その時ではない。知り合って二日目だし。いや、でも愛は時間ではなく深さが重要とも言うし!


「あのう、これをどうぞ!」


 シャム王女は恥ずかしそうに俺に封筒を手渡し、そして走って去っていった。


 あっちからキターーーー!!!


 なんだか、封筒からいい匂いが漂う!ヒラヒラしているスカート、ふわふわと揺れる髪、そんな後姿をぼーっと見ている。


 早速、封筒を開けてみる。


『第千二十三回ハートフルピース王国王女選抜総選挙投票用はがき』×二百五十枚


 前世でも美人がいつになくフレンドリーな時は、怪しい新興宗教の勧誘か、ネットワークビジネスの勧誘か、海の生物の絵の販売か、アクセサリーの販売か、子供の発表会のチケット販売くらいだったなぁ。


 投票用紙は初めてだ。

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