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12-1話

 窓際にショートボブの活発そうな美少女が佇んでいる。髪が風になびき、朝日を浴びてキラキラしている。瞳はっずっと遠くを見つめている。そんなメルヘンな雰囲気なのに、俺が手を伸ばせば豹変して水撃を発射するに違いない。いや、それはテッポウ魚。


「おはようロッソ」


「おはようございますヨシオ」


 ここは昨日宿泊したアルマジロ亭。ロッソRは、俺が妄想と共に目覚めるとすでに着替えていた。はにかんだ笑顔がとても可愛らしく、シャム姫とは異なる魅力がある。毎朝、こんな感じなら幸せだ。


 昨日は長距離移動とか色々と事件もあったせいで、風呂から戻ってきていつのまにか寝ていた。ロッソRとあんな事とかこんな事とかは全然なかった。残念。明日こそ!


「ロッソ、今日の予定はどうなっているの?」


「今日は、特に目的もなく村の表通りを歩いて情報収集です。朝食は屋台で食べます」


「わかった。準備してすぐに出よう」


 俺達は朝食も取らず急いで宿の外に出た。


「表通りには朝から晩まで屋台が出ているのです。賑やかでしょ」


「ああ、お祭りみたいだ」


 俺は故郷の夏祭りを思い出していた。道路の左右に色々な屋台、出店があり、朝にもかかわらず活気があり人通りも多い。唯一の違いは雪に覆われているところだ。


「お、あの屋台は・・・」


「あれはホットドッグの屋台ですよ」


「朝飯はそれにしよう」


「じゃあ、私も。すいません、ホットドッグ二つ!」


「あいよ!今ソーセージを焼くからな。うちのホットドッグはそこら辺の普通のホットドッグじゃないよ」


「まさか俺が探し求めていた魔獣の肉!」


「そんな変なものは入ってねぇよお客さん!ほら、この瓶に入った赤いのを見てみな。ハートフルピース王国のレストランでしか売っていないトマトケチャップっていうんだ。これがパンとソーセージにマッチするんだ!」


「・・・へ、へぇー」


「この赤いのを開発したのは何と召喚勇者のヨシオという奴らしいんだ。巷ではグルメ勇者なんて呼ばれているようだが、こんなに美味いならグルメ勇者大歓迎だよ。今後もどんどん開発してほしいよ」


「トマ・・・この赤いのがそんなに良かったのか?」


「ああ、これまで地味な食べ物だったホットドッグがこの赤い奴のおかげで最新のおしゃれ料理になったんだからな。さらに、あのシャム姫様もこの赤い奴を気に入っているらしいぜ。美容と健康に良くてさらに美味い。おかげで若い女性がツーチャンにこのホットドッグをアップしまくりなんだ」


「そ、そうなんだ。良かったね」


「最近は売れすぎて昼過ぎには材料が底をついて店じまいさ。ほんと、グルメ勇者様様だぜ!」 


「す、すげぇえなグルメ勇者!」


「ほら、焼き上がったぞ」


 そう言って、店主は焼き立てのソーセージをパンにはさみ、上からたっぷりとピクルス、きざみ玉ねぎ、マスタードを振りかけた。


「そして、仕上げのケチャップだ」


 ケチャップはスプーンで心持ち節約気味にかけられた。きっと、高価だったんだろう。


「ウマそう!頂きます。うぉ!何これ!ソーセージが粗挽きで肉汁たっぷりだ!」


「ほんと、美味しいわ!ケチャ・・・赤い奴がとても効いてる!」


「そうだろ、そうだろ!この赤い奴、苦労して手に入れたんだ。レストランのオムライス写真がツーチャンにアップされた時、俺はひらめいたんだ!こいつは絶対にホットドッグに合うと!」


 ええ、そうでしょう。俺の故郷で実証済ですから。ハンバーガーにも合うよ。


「頼み込んで試作品を定期的に売ってもらえることになったんだ。まあ、モニターってやつらしいけどな」


 城のレストラン、そんな事をやっていたのか。任せて良かった、有能すぎる。これはフレッシュトマトのケチャップ試作品だが、新作の熟成トマトならもっと美味いだろう。楽しみだ。おっと、そろそろ仕事もせねば。


「ありがとう。美味かったよ。ところでこの村は戦争を始めたキタノオンセン帝国に近いけど治安とか大丈夫?」


「ああ、元々ここの観光地は女性の観光客が非常に多かったんだ。キタノオンセン帝国ほどではないが美容と健康に良い温泉があるからな。ただ、最近は男も増えてきて酔っ払い同士の喧嘩とか、女をめぐっての喧嘩とかが増えてきたなぁ。困ったもんだ」


「そういえば昨日俺達が行ったレストランでも、床で酔っ払いが寝ていたな」


「ほ、ほんとだよねー。さ、酒癖の悪い男は最低だよねー」


 実は、昨日の女風呂で緊急の『赤い少女隊R』の会議が開催され、事件への対応の遅さ、危機感の無さをリーダーにさんざん指摘され冷や汗をかいたことを思い出したロッソRであった。そのことをヨシオはもちろん知らない。


「どうして男が増えたんだろうな」


「それが良く分からないんだ。だが、俺の屋台に来る客を見る限りは、普通の観光客ではなく、腕に覚えのある奴らが多いように思うな」


「腕に覚え?」


「それは、冒険者とか傭兵とかですか」


「たぶん、傭兵や他国の正規兵だな、あれは。まあ、素人でないことは確かだ。お前らも事件に巻き込まれたら真っ先に逃げろよ」


「ありがとう」


「ごちそうさま」


 俺達はホットドッグの屋台を後にした。どうやら、この付近にも戦争の影響があったようだ。まだまだ、調査する必要がありそうだ。

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