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11-8話

 最後の一人となった盗賊が馬車の方に走って来ている。私は気配を消して馬車の出入り口付近に移動し、雪の窪みに隠れた。


 盗賊は馬車の中のか弱い(と思っている)女性を人質にして逃げるつもりだろう。だが、私達は『赤い少女隊R』、プロの戦隊なのだ。問題は、あまり派手にやると私達の立場がばれてしまうので隠密に任務遂行することぐらいだ。すでに準備はできている。


「はは!奴らが戦っている隙をついて上手くいったぜ!さあ、かわいこちゃん達、一緒に遊ぼうぜ!」


 盗賊は馬車の扉に手をかけようとしたた。その瞬間、外開きの馬車の扉が開いて盗賊の顔に勢いよく当たった。


「うわぁ!?」


 盗賊はとっさのことで、動きが止まった。その瞬間、真っ暗な馬車の中から三人の蹴りが繰り出され、盗賊にクリーンヒットした。


「ギャー!」


 盗賊は蹴られた勢いでそのまま後ろに飛ばされ雪の上に転げた。すかさず、私は盗賊のみぞおちにWグーパンチを決めた。


(ドス!ドス!)「ぐへぇ」(バタン)


 盗賊は意識を失い雪上に倒れた。扉が開いて盗賊が倒れるまで1.85秒、まずまずだな。盗賊を追ってヨシオ達が現れた。しかし盗賊は倒れている。何が起こったかわからないようだ。


「すいません、咄嗟に魔動馬車から逃げようとドアを開けたら、ちょうどこの人の顔にドアが当たって・・・大丈夫ですか?この人」


 私はか弱そうな表情でそう言い、盗賊の顔を心配そうにのぞき込んだ。


「あ、ああ。ありがとう」


 ヨシオは戸惑いながらも私達に礼を言った。パーフェクトマモルの顔がひきつっている。ちょっとやりすぎたかな。私はこっそりとウインクした。


 私達は全員が馬車に乗り込んだ。そして、一般人の女子のようにはしゃいでいる。


「まさか、盗賊団だったなんて」


「怖かったわぁ」


「私、馬車の中で震えていたの」


「私も。でも、パーフェクトマモル様や、猛獣使い兼魔術師のヨシオ様の活躍を見て安心できましたわ」


 ヨシオに疑惑の目で見られたので、ここら辺でか弱い女子っぽさを出そうとしているのだ。なかなか難しい。しかし、私達の女優ばりの演技のおかげでヨシオもご機嫌になり、先程のやりすぎな件はなんとか誤魔化せたようだ。ちょろい。


「ヨシオは凄い魔道具持っていたのね」


「ええ、誰にでも使える使い捨ての魔道具です。持ってきて良かったです。ロッソに怪我が無くて良かったです」


 ロッソRがうまく魔道具の情報を聞き出した。しかし、偶然持ってきたような口ぶりだが、そんな特殊な道具を都合良く持ってくるものなのか?ヨシオが『未来視』の能力を持っている可能性がますます高くなった。


 私達を乗せた魔道馬車はオモイザワ村に向かって走り始めた。


 ◇ ◇ ◇


 オモイザワ村に着き、馬車から乗客が降りた。この村で何泊かしてから、キタノオンセン帝国に潜入する。安全に任務を遂行するためにも、ここでの情報収集は重要となるのだ。


 私達はヨシオやロッソR達と同様に『アルマジロ亭』に宿泊することにしている。この村で最も評判の良い宿だ。先にレストラン『アルマジロの巣』に入り、適当に食事をすることにした。


 料理を注文し目立たぬよう周囲を警戒する。怪しいグループが一組いるようだ。周囲をきょろきょろしている。スリ?適当に難癖をつけ金を巻き上げる奴らか、あるいは奴らもスパイ活動をしているのか。


 実際のところ、キタノオンセン帝国に関してはハートフルピース王国だけでなく他国も心配しているのだ。他国のスパイや、当事者のキタノオンセン帝国のスパイがいても不思議は無い。


 しばらくすると、ロッソRとヨシオが入ってきた。怪しいグループはロッソRを見ている。あー、可愛らしいから、ロックオンされちゃったかな。


 ロッソRとヨシオが食べている間中、怪しい奴らはチラチラとそちらを見ながら何かを話しているようだ。まあ、いずれにせよ楽しいことではないだろう。


 ロッソRとヨシオが食べ終わり帰るそぶりをすると奴らが動き出した。そのうちの一人がロッソRに近づいて行った。ヨシオもロッソRも気付いていない。あれほど、ロッソRには気を抜くなと教えたのに。私は素早く席を立ち、奴らの背後に近づいた。


「今日は何も成果が無かったなぁ」


「初日だし。そんなに簡単には収穫は得られないわ。地道に頑張りましょう」


「そうだね。とりあえず宿の部屋に戻ろう」


「そうね」


 怪しい奴がヨシオの後ろの方で何か言いながら近づいてきた。


「若いのに、こんな高級宿に泊まって、いいご身分じゃねぇか・・・」


 ヨシオはそれに全く気付かず、立ち上がり歩き始めた。怪しい奴はまさか無視されると思っていなかったのか、ヨシオとぶつかりバランスを崩した。


「ぐぁ!」


「あ、すいません」


 今がチャンス!私は偶然ぶつかったふりをして、背後から脇腹に強烈な一撃を加えた。


「きゃ!」


(バタン)


 怪しい奴はそのまま床に倒れて気を失った。

 

「すいません、急いでいたもので。あ、店員さーん!ここで酔っ払いが寝てます」


 私は酔っ払いを店員に任せて店の外に出た。しばらくすると、仲間らしき奴らが倒れた奴を抱えて店から出て行った。ヨシオとロッソRは相変わらず気付いていない。


 やはり、先程のヨシオの行動、偶然なのか?それとも分かっていてロッソRを守ったのか?謎は深まるばかりだ。


 私達『赤い少女隊R』の四人は『アルマジロの巣』を後にした。

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