11-5話
どうやら盗賊が何かやらかそうとしているようだ。まあ、奴らが欲しがるのは、いつもお金と女性なのだが。今回もそうだろう。
さて、相手は十分な武器や防具を持っている。負けるとは思わないがが、戦えばこちらもダメージを受けるだろう。戦術が重要だ。
(・・・ぎえー・・・)
どこからか魔獣のような声が聞こえた。近い!盗賊に加え魔獣となると戦っている場合ではない。レーダーで確認しようにも、周りはアルマジロらしき動物だらけで魔獣なのかどうか判別ができない。念のため、ここは一旦退却し、なるべく早くここを離れることにしよう。間に合うだろうか。
「馬車に戻りましょう!急いで!」
「「「了解!」」」
私達が魔動馬車の方に戻っていくと、先にロッソRが魔動馬車に乗り込むところが見えた。ロッソRも盗賊や魔獣に気付いたようだ。さすがだ。あとは、近くにいる乗客の四人を乗せれば逃げきれそうだ。私達は魔動馬車の近くでまで来た。
「・・・大きい・・・殺す・・・皆殺し・・・」
ロッソRの声が馬車の中から聞こえる。盗賊は確かに体格が良く体が大きい。ロッソRは剣術が不得意にもかかわらず戦う気だ!大丈夫!私達が守る!ところで、ヨシオの姿が見えないが?
「ヨシオはどこ」
「ロッソRと一緒だったはず」
「あそこに!盗賊の登っていたアルマジロの丘にいる!」
「きっとヨシオは一人で盗賊と戦うつもりよ!」
いくらヨシオといえど一人でフル装備の盗賊四人と戦うのは無理がある。さらに、魔獣が近づいている可能性がある。助けに行かねば!
その時!
(ゴロゴロゴロゴロ)
「何の音?」
「丘の方で何か転がっている?」
「レーダーで見ると、たぶんアルマジロが一斉に移動している?」
「アルマジロの雪崩!」
丘の斜面で丸くなったアルマジロは丘の下に向かって転がり始めている。数十匹、いやすでに百匹を超えるかもしれないアルマジロが斜面を転がっていることをレーダーは示している。
(ゴゴゴゴゴーーーーーー!!!!!!)
「雪崩よ!アルマジロの雪崩を使ってヨシオは盗賊を撃退いようとしている!」
私達は再び丘を回り込み、盗賊達が登っていた付近が見える場所まで移動した。予想通り大量のアルマジロが丘の下まで転がり降りているのが見えた。盗賊の姿は見えない。巻き込まれて丘の下まで転がり落ちたようだ。
「助かった!」
「またしても戦わずに勝った!」
「凄いヨシオ!」
「さすが勇者!」
しばらくするとヨシオが何食わぬ顔をして丘から降りてきた。そして魔動馬車に乗り込んだ。あれほどの事をしたのに、威張るわけでもなく、全くいつもと変わらない素振りだ。これが勇者の余裕というやつなのだろうか。
馬車に乗り込むとロッソRとヨシオは楽しそうに話をしていた。
「アルマジロ、ダメ!絶対!」
何の話なのかは良く分からないが、見つめあってアルマジロの話をしているようだ。そんなに気に入ったのかアルマジロ。
やがて休憩を終えた乗客の男達も乗り込んできた。ニシノリゾート共和国北端のオモイザワ村までもう少しだ。