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10-7話

 盗賊団五人は縛って奴らの馬車に載せ一緒にオモイザワ村まで運ぶことになった。


「ヨシオは凄い魔道具持っていたのね」


「ええ、誰にでも使える使い捨ての魔道具です。持ってきて良かったです。ロッソに怪我が無くて良かったです」


 花火を使ったと言う訳にはいかないので、魔道具ということにしたのだ。周りの皆は、俺のことを魔術師兼魔獣使いと思っているようだ。肩書が増えていく。


 俺達を乗せた魔道馬車はオモイザワ村に向かって走り始めた。


 ◇ ◇ ◇


 オモイザワ村の停留所に到着した。盗賊は警備兵に引き渡されたようだ。俺達は魔動馬車を降り、予約していた宿に向かった。


「今日は最後が大変だったけど、無事到着したね」


「ほんとに良かったです」


「あの時、ロッソが焚火をしてくれて良かったよ。あれで寒さを乗り越えることができた。その上魔道具に火をつけることができ、すぐに使うことができたんだ」


「焚火は得意なんです。芋をよく焼いていました」


「こっちの世界でも焼き芋あるんだ!」


「芋の話をしていたらお腹が空いてきました。早く宿に行って晩御飯を食べましょう」


「そうしよう。そろそろだ。あ、あそこに看板が見えた『アルマジロ亭』」


 ロッソRが一瞬、青ざめた。俺は素知らぬ顔をして『アルマジロ亭』に入った。


「いらっしゃい。ご予約の方ですか」


「はい。二人部屋を予約していたヨシオとロッソです」


「確認しました。カギはこちらです。どうぞ。食事は一階にあるレストラン『アルマジロの巣』をご利用下さい」


 俺達はすぐに部屋に荷物を置き、すぐにレストラン『アルマジロの巣』に向かった。レストランでは適当に料理を頼んだ。


「知らなかったんです!アルマジロが、あんな、あんな動物だったなんて!名前が可愛いと思ってこの宿選んだのに。最悪です」


 ロッソRは昼間に見た巨大ダンゴムシ、いやアルマジロを思い出して震えている。


「大丈夫だ。名前がアルマジロってだけでここにはいないから。ほら、ロッソはプロだろ。仕事仕事!」


「そ、そうでした。お仕事でした」

 

 ロッソRはすぐに平常心に戻った。俺達は周囲の話に聞き耳を立てながら食事をした。しかし、ここでは特に面白い情報は得られなかった。


「今日は何も成果が無かったなぁ」


「初日だし。そんなに簡単には収穫は得られないわ。地道に頑張りましょう」


「そうだね。とりあえず宿の部屋に戻ろう」


「そうね」


 俺達は食事を終え席を立った。しかし、運動不足のせいか、乗りなれない馬車に長時間乗っていたせいか、俺はちょっとふらついてしまった。


「若いのに、こんな高級宿に泊まって、いいご身分じゃねぇか・・・ぐぁ!(バタン)」「きゃ!」


「あ、すいません」


 側を歩いていた酔っ払いとぶつかってしまった。さらに酔っ払いは急いでいた女性ともぶつかり、そのまま床に倒れて気を失った。変な奴にぶつかってしまった。


「すいません、急いでいたもので。あ、店員さーん!ここで酔っ払いが寝てます」


 ぶつかった女性は酔っ払いを店員に任せて出て行った。


「高級リゾート施設でも変な酔っ払いがいるんだな」


「そうね、気を付けなきゃ」


 俺達は宿の部屋に戻った。恋人同士という設定なので同じ部屋だ。布団が畳の上に二人分敷いてあった。しかもくっつけてある。ちょっとドキドキするよ!


 ロッソRは赤い顔をして無言で布団を動かし、布団と布団の間に荷物を置いた。


「さ、早速、温泉に行きましょう!」


 心なしかぎこちない。


「そうだな。初めての温泉だ。すぐ行こう」


 俺達は温泉に向かった。温泉は残念ながら混浴ではなく男女別々の露天風呂だった。


「くそう!混浴じゃないのか!」


「え、何それ?」


「男女一緒に入るシステムを混浴って言うんだけど、こちらには無いの?」


「そ、そんなもの無いわよ!」


 ロッソRはタオルで赤い顔を隠し、女風呂に入った。おれも仕方なく男風呂に入った。


「さすがニシノリゾート共和国だ。温泉が本格的。自然石をを使った温泉だ」


 男風呂には誰もいなかった。貸し切りだ。俺は感心しながら久々の温泉を堪能していた。


 それにしても露天風呂、畳の部屋、畳の上に布団。あまりにも文化が共通している。オモイザワ村、いやニシノリゾート共和国は故郷の人々が設立にかかわったのかもしれない。


 しばらくして、若い男子が四人入ってきた。


「この壁の向こうは女湯だ。皆で登ってみようぜ」


 温泉、男子あるあるだな。俺はとっさに声をかけた。


「おいおい、やめとけ」


「何だおっさん!文句あるのか!」


「こういう場合、見えそうで見えない、見えそうで見つかる、見えたのにおばちゃんだった、のパターンのどれかだ。やめておいた方が良いぞ」


 俺は自分の経験を元に的確なアドバイスをした。しかし、奴らは納得していないようだ。


 四人は俺のせっかくのアドバイスをも無視し、必死になって壁を登り始めた。そして、やっと壁の上から顔を出した時、


「ガン!」「ガン!」「ガン!」「ガン!」


「「「「うぎゃー」」」」


 タライが女風呂方面から同時に四つ飛んできて男子は床に落下した。見えそうで見つかるのパターンだったようだ。

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