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10-2話

 俺は魔動馬車の中でロッソRから取り調べを受けている。いや、悪いことはしていないはずなのだが。えっと、大金の使い道だったよな。


「ズバリ貯金かな」


「その貯金は何のための貯金ですか」


「何となく・・・ではなく、将来結婚する時の資金とか、家を買うためのとか、恋人にプレゼントを贈るためとか」


「平凡だけど、まあまあです」


 試されているの?俺、確実に試されているよね!


「じゃあ、次。この五人の中で最も好みなのは誰ですか?」


 写真の中の女性は皆、目が大きくさらに黒目が不自然なほど大きい。そして、肌が真っ白だ。プリクラ?加工され過ぎて良く分からないけど、たぶん一人はロッソ、残りは知らないけど全員可愛い。うーん迷うなぁ。


「ん?今、ふいに視線を感じたような」


「き、気のせいじゃないかな。さあ、早く選んで下さい」


「じゃ、じゃあこの人」


 ロッソらしき人を指さした。


「中々女性を見る目がありますね」


 口元が少しにやけた!なんか後ろの方で「ちっ」とかいう音が聞こえたような?とにかく合格、合格ですか?これで取り調べ終了ですよね。


「じゃあ、私からカップルらしい甘い話をしますからうまく合わせて下さいね」


 そうか!ロッソRは仕事にかこつけて俺のことを知りたかったに違いない。現在、恋人がいるか、好きな人はいるか、結婚してからのお金の使い方、自分に好意を持っているか、質問内容を思い返せばすぐに分かったぜ。可愛いやつめ。


「よろしくお願いします。さっきまで迷っていたけど覚悟ができました。どんな言葉でも受け止めます」


「なんだか急に重い感じがします。普通でいいですから」


「わかりました」


「まずは生クリームとカスタードクリーム。生クリームは一口目が非常に美味しいけど食べ続けるうちに飽きが来ます。一方、カスタードの方は最初はなんだカスタードかって感じだけど、いつまでも食べ続けることができます」


「・・・甘い会話?」


「会話はキャッチボール、繋いで繋いで」


「確かに。スポンジケーキの中に生クリーム入っていたら当り、カスタードが入っていたら外れって感じですよね。でも、俺の故郷ではカスタードのクリームパンが大人気で定番商品です」


「何それ!クリームはケーキだけじゃなくパンにも使うの?もっと詳しく聞かせて、他にも!」


 その後、俺はロッソRにせがまれて数時間にわたって故郷の菓子パンの話をさせられていた。甘い会話の定義が少し違うような気がする。


「もうしばらくすると昼食休憩のため、サービスエリアに停車します。すでにニシノリゾート共和国領内ですので、レストランで異国料理をお楽しみください」


 護衛兼観光案内担当のパーフェクトマモルからアナウンスがあった。俺達は魔動馬車を降りサービスエリアに併設されたレストランに入った。


「テッポウ魚料理があるんだ!これにしよっと」


「私も!近くで採れるのかしら」


「すいません!テッポウ魚定食二つお願いします」


「はい、二つですね」


「この辺りでテッポウ魚が採れるのですか?」


「ええ、このレストランの側に深い谷があるのですが、その谷底を流れる川で採れます。でもあまり近づかない方がいいですよ。谷は危ないですから」


「わかりました。谷の上から見てみます」


 テッポウ魚定食は美味しかった。しかし、切り身だったので魚の形は良く分からない。俺達は食べ終わってすぐに谷の方に向かった。谷の上には手すりが設置してある展望台があり、安全に景色や谷底を観察できるようだ。すでに観光客が群がっている。


「こんなに遠くから魚が居るのがわかるのかな」


「あれかしら」


 そこにはカバくらいの大きさのムツゴロウのような体形の巨大魚が十数匹泳いでいるのが見えた。


「「大きい!」」


「俺がイメージしていたテッポウ魚と違うんだけど。特にサイズが」


「うん、大きいですね。両親が私を川に近寄らせなかった理由が分かりました」


「あそこに魔獣シルバーウルフがいるぞ!」


 誰かが叫んだ。対岸で谷底に向かってこっそりと下っている銀色の狼の姿が見えた。もうすぐ谷底の川岸にさしかかる。


「あれが本物のシルバーウルフか。凶悪そうだ。ミニチュア・ダックスフントとは全然違うな」


「シルバーウルフはテッポウ魚を狙っているようですね。シルバーウルフは俊敏で頭も良く、そして強い。多分、テッポウ魚はシルバーウルフの餌になるだけでしょう。可哀想に」


(バシュ!ドーーーーン!)


 突然、テッポウ魚の口からシルバーウルフに向かって水の塊が高速で発射された。シルバーウルフは突然のことで避けきれず、水の勢いを体にもろに受けて崖にたたきつけられた。


(バシュ!ドーーーーン!)

(バシュ!ドーーーーン!)


 十匹のテッポウ魚から連続的に水の塊が発射された。二発目以降、シルバーウルフは持ち前の反射神経で水の塊を除けながら逃げまわっている。外れた水の塊は付近の崖や岩を砕いている。恐るべき破壊力だ。人間だったら確実に気を失っているぞ。やがてシルバーウルフは水辺を離れた。


「「・・・」」


 俺達は唖然として谷底を見ていた。


「恐ろしい魚だったね。テッポウ魚」


「私、絶対水辺には近づかないわ」


「俺もそうする」


 テッポウ魚、ダメ!絶対!

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