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10-1話

「それでは、行ってきまーす」


「土産物よろしくね。特に泥パック」


「はーい」


 シャム姫が忙しいにもかかわらず見送りに来てくれた。たぶん土産物の念押しに来たに違いないが、朝日を浴びて手を振るその仕草は神々しく、しかも可愛らしい!全財産をつぎ込んで土産を買って帰りたくなるよ!気をつけねば直ぐに俺の財布が空になりそうだ。


 俺とロッソRは城を出て早朝の城下町を歩いている。これからキタノオンセン帝国へ潜入する。まずは馬車センターに行って、ニシノリゾート共和国オモイザワ村行き乗り合い魔動馬車に乗るのだ。


「ロッソはオモイザワ村へ行ったことあるのか?」


 旅先ではロッソRではなくロッソと呼ぶことなった。俺はヨシオと呼んでもらう。


「あります。ニシノリゾート共和国の中でもかなり北に位置しているので寒いですよ。この季節は雪が積もってます」


「じゃあ、雪道だから大変なんだな」


「いえ、途中まで高速道路で行けますから今日の夕方には着きますよ。もよりのインターチェンジで高速道路を降り、山を幾つか越えたらオモイザワ村です」


「結構、早く着くんだね」


「ええ、有名リゾート村ですから、ここからでも週末に遊びに行く人が多いんですよ」


「ロッソも友達や恋人と遊びに行ってるの?」


「恋人はいないし仕事で行っただけです。あ、でも幼い頃両親と一緒に、夏に行きました。たしか別荘があるはずです」


「セレブの夏は避暑地だよな。いいなぁ。俺なんて近所の川や海で遊ぶくらいだったなぁ。でも友達がいっぱい居たから楽しかったよ」


「そっちの方がいいな。危ないからと言って、川にも森にも近づけなかったし。ずっと屋敷の敷地の中ばかりでした。退屈でした」


「川や森には危ない生物がいるの?」


「うーん、森にはアルマジロがいるって聞きました。あと、川にはテッポウ魚っていう水を飛ばしてエサを取る面白い魚がいるらしいです」


「両方とも俺の故郷にもいたよ。アルマジロは危険を感じると丸くなる生物、テッポウ魚は水面から水を発射して近くの葉っぱの上にいる虫を落とすんだよね。確かに面白い生物だよね」


「私は残念ながら両方とも見たことないです。今思えば、いったい何が危なかったのかしら」


「じゃあ、チャンスがあったら今回の旅で見に行こう!」


「本当!?やったぁ!」


 馬車ターミナルに到着した。オモイザワ村行き長距離馬車乗り場はすぐに見つかった。始発なので、すでに馬車が待機していたからだ。魔動馬車は十五人くらい乗れる大型だ。馬ゴーレム三体でけん引するようだ。


 俺達は魔動馬車に乗り込んだ。すでに、若い女性が二人乗っていた。その後も、乗客が乗り込み、俺達も含め男性五人、女性五人の計十人となった。なぜか女性は全員が美人で可愛らしい!ロッソRにジト目で見られた。いかんいかん、ついつい頬が緩んで鼻の下が伸びていたようだ。


 出発時刻になった。


「私、運転手のロードススムです」


「護衛兼観光案内担当のパーフェクトマモルです」


「「よろしくお願い致します」」


 運転手も護衛も非常に頼りになりそうな名前だ。しばらくして魔動馬車は走り始めた。市街地はかなりゆっくりと、そして高速道路に乗るとすぐに高速巡行を始めた。


 任務と言いながら楽しみしかない良い仕事だ。ロッソRのような可愛らしい女性と一緒に旅ができるなんて!いえーい、お仕事最高!乗り心地も最高!


「ヨシオ!速いのに乗り心地がいいわ!景色がどんどん流れていくよ」


「たぶん速度は時速二百二十五キロメートルくらいだ。乗り心地はサスペンション、特にダンパーとバネに魔動機械を組み込んであるおかげだ。魔動PCで制御しているのだろうな」


「全然意味が分からない。女の子と一緒の時はもっとそれっぽい話をして下さい」


「すいません。緊張して何だかいつも以上に不自然になってしまいました」


「ダメですよ。カップルにはもっと甘い会話が必要です」


 俺達は馬車内でも偽カップルとして行動している。これから心を一つにし任務にあたらねばならない。もっと意識して意思疎通をし、自然な雰囲気を出さねば。


「とはいえロッソが可愛らしいから緊張するんだよ」


「そう?でも超絶美人で可愛いシャム姫様と話をしている時は自然な感じでしたよ。逆に他の人達は皆緊張するのに。いったい、どういうことですか」


 ショートボブのスポーツ系少女のちょっと怒った顔だ。これはこれで可愛らしい!


「そう言えばそうだな。何故だろう」


「もしかして、付き合ってるのですか?」


「イヤイヤ!プリンセス娘は恋愛禁止なのでバレたらトップオタに俺の命を狙われますよ。命がけ!恋愛、ダメ絶対!ていうか何故メモ帳取り出した」


 ロッソがメモ帳を取り出しペンで何かを書き込んでいる。

 

「あ、気にしないで。メモしているだけだから。そういえば、以前、ミケちゃんに手を出して命を狙われていましたよね」


「何故それを!いや手は出してませんから」


「じゃあ、本当にシャム姫様とは付き合ってないのですね」


「はい。全く付き合っていません。むしろ養分として労働力とか財力とか吸い取られているような気がします」


「それはファンに対する正しい扱いです。あなた以外の多くの方々も同じ立場なのです。宿命として受け入れるべきでしょう。でも、チャンスがあれば付き合いたいないな、とか結婚したいなとか思っているでしょ?」


「・・・全然思っていません」


「思っていますね。まあ、いいでしょう。シャム姫様は別格ですから。いまの調子で頑張って下さい。そのうちきっと良いこともあるでしょう」


「わかりました先生。何だか心が軽くなってきました」


「そうでしょう、そうでしょう」


 何か書き込んでいる。いまの会話は重要なのだろうか。


「先生!これって取り調べっぽい、さらにはエセ宗教の勧誘っぽい感じがします。これは甘い会話なのでしょうか?」


「恋愛の話をしているのです。甘いに決まっています。じゃあ、次ですが、大金を手にしたらどう使いますか」


 ロッソRの目がギラリと輝いた。もしかして知っている?いやあの目は確実に知っているだろ!俺がオムライスで大金を得たことを!

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