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9-7話

 俺はロッソRの瞳を見つめながら言った。


「勇者の俺に隠し事などできないよ。全てお見通しだ」


「そ、そうよね。見たら分かるよね。新作のいちごシュークリームを食べ過ぎて太ったの。少し増えただけだから誤魔化せると思っていたのに。お見通しだったのね。さすが勇者様です」


「そっちかい!」


 まさかの告白である。


「ロッソRは『天ぷらキング』について詳しいの?」


「あそこの店、実はデザートが美味しいのです。特に新作のいちごシュークリームが絶品なのです。何度も通ってスキルも駆使して美味さの秘密、製作の秘密を探ったのです」


「極秘任務による調査対象はまさかのケーキ!」


「店の人に作り方を聞いたのです。でも教えてもらえませんでした」


「直接的に聞いてるし!スキルどうなった!しかしまあ教えてくれないだろうね。この辺では珍しいケーキ菓子だし」


「その後、私は諦めきれず従業員一人一人を懐柔したのです。しかし、それもダメでした。お金もかなり積んだのに。さらに酔わせて聞き出したりもしたのですが末端の店員は情報を持っていませんでした」


「そんなに知りたかったのか!」


「ええ、ケーキのことですから。そして、私は最後の手段として、禁断のお色気作戦を使ったのです」


「お色気作戦!」


「それでも情報が掴めませんでした。店側はガードは鉄壁です」


「ちなみにお色気作戦とは!」


「ふっふっふ!なんとシャム姫の幻の水着写真集、あのメジャーデビュー前に売り出されたお宝写真集をお譲りすることをチラつかせたのです」


「そんなモノがあったのか!」


「ええ、今ではプレミア価格、いやお金を積んでも手に入らない幻の写真集です。まあ、譲る気はありませんでしたけどね。しかし残念ながら、いちごシュークリームを作っていたのは全員が女性だったのです」


「そうか。残念ではあるが人手に渡らず良かった気もする。ちなみにその写真集は今お持ちじゃないですよね?」


「ありますよ。これです」


 ロッソRは写真集を鞄から出して、テーブルの上に置いた。


「おおおーー!!!これが幻の写真集か!(パコーーーン!)痛てーー!!!」


「ちょ!ちょっと!どうしてこの写真集がここにあるのよ!没収!没収!没収よ!取材を早めに切り上げて様子を見に来て良かったわ!」


 シャム姫は俺の顔をバッグで殴った後、顔を真っ赤にして写真集を持って部屋を出て行った。


「「あああ、お宝写真集がぁ」」


 部屋に取り残された二人はしばらく呆然としていた。ロッソRはコレクションを喪失したことでダメージを受けていた。


 ヨシオのダメージはさらに甚大だ。表紙しか見れなかったことにショックを受け血の涙を流していた。あの時、もう少し早く話題を持ち出していれば、あの時もう少し早く行動していれば数ページは見れたかもしれないのにと。後悔、先に立たずである。


「勇者ヨシオ様。前を、前を向いて歩きましょう。今はそれしかありません。お金さえあればオークションで落札できるかもしれませんし」


「・・・私の分も含め二冊お願いします。お金の心配はいりません。今回のトラブルは私が安易に写真集を見せてもらったことが原因です。私が二冊分負担します。たとえいくらであっても落札をお願いします。お金は借金してでも準備します」


「勇者ヨシオ様!借金の必要は絶対に無いとは思いますが、そこまで・・・わかりました。このロッソR、命に代えても落札して見せますとも!」


「「よろしくお願いします!」」


 二人は手に手を取り合った。ひょんなことから『二人の心は一つ』になり、第一段階の目的は達成されたのであった。


「では、気を取り直して、具体的な潜入方法などについて打ち合わせをしましょう」


「よろしく頼みます。俺は全然地理が分からないんです。そこら辺も踏まえて教えて下さい」


「わかりました。この大陸の最も南にあるのがハートフルピース王国です。そして、戦争を仕掛けてきたのが北にあるキタノオンセン帝国です」


「キタノオンセン帝国の特徴は?」


「産業としては地中から発掘される魔石の輸出、他にもイモやコメなどの農産物の輸出も盛んです。観光としては温泉、さらに温泉熱湯風呂が主な所です」


 魔石は電池の役目をする石みたいなモノかな、農産物は故郷の北の方と同じ感じだな。温泉熱湯風呂?


「温泉熱湯風呂って何?」


「ああ、それは『押すなよ!押すなよ!』とか言いながら押されて熱い風呂に飛び込む的なやつです」


「こっちにもあるのか!びっくりだよ。それは置いておいて、一番偉い人は誰」


「帝国は幾つかの国の集合体です。それらをまとめているのが細マッチョ派の女帝ラブ・メグです」


「出たな細マッチョ派。女帝なのか。女帝になるくらいなら意地悪婆さんのような奴だろうな」


「それが女帝ラブ・メグは見かけは20~30歳で、しかもムチムチボインらしいですよ」


「何処で習った言葉だよムチムチボイン!しかし、そう聞くと一刻も早く帝国に潜入せねばならない気がしてきた!」


「焦ってはいけません。ムチムチボインの居場所はここ最近は不明ですから。しかもこの国からの直接のルートは封鎖されているので両国の西に接しているニシノリゾート共和国経由で潜入する必要があります。途中この国には何泊かする予定です」


「ニシノリゾート共和国、何故だか分からないが高級リゾートな予感がする」


「その通りです。この共和国は、元々は点在していた別荘地帯やリゾート村が自治を始め、さらにそれらが集まって共和国を作ったものです。国が全てリゾート地や別荘地帯。もちろん食べ物も最高、今回行く北方面のオモイザワ村には温泉もあります。そんな素敵すぎる国なのです!」


「おお!」


 俺の心臓の鼓動は否が応でも高鳴った!温泉、リゾート、グルメそして可愛らしい女性と二人っきり。これは色々と期待できるはずだ。

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