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9-2話

 ヨシオは気になっていた。ナガグツ半島から帰ってから城内で時々見かける、バレバレな感じで俺の後ろを付いてくる女性。襲ってくるわけでもなく、しゃべりかけてくるわけでもない。


 尾行?でも素人の俺から見ても隠れきれていないというか隠れる気が無い?今日も付いて来ているようだが。


(ガツン)「キャ!」


 何かにぶつかった!痛そう、涙目になっている!


 助けた方が良いのかな?これは明らかにスパイとかではなさそうだし。衛兵の中にいる俺のファンかな?いや、単なるオムライスのレシピが聞きたい人かな?でも、たまたま同じ方向に歩いているだけだったら自意識過剰っぽくて恥ずかしいし・・・


 ◇ ◇ ◇


 城の中の一室に『赤い少女隊R』と呼ばれる部隊のメンバーのうちの四人が集まっていた。


「勇者ヨシオ様がナガグツ風邪を鎮圧したらしいわ」


「単なるグルメな人かと思っていたけど、なかなかやるわね」


「オムライスは絶品だったわ。しかし戦力としてはどうなのかしら?」


「確かに。戦闘力を発揮しているところは見たことないわ」


 どうやら、ヨシオについて話し合っているようだ。


「ロッソRはどうしてるの?まだ帰ってきてないの?」


「ロッソRはまだ勇者様の調査をしているわ」


「尾行しているの?大丈夫かな」


「別に尾行がばれたところで城内だから問題ないわよ」


 ロッソRがヨシオの調査をするのは、元々赤い少女隊が行う予定だった敵国への潜入調査にヨシオが加わる可能性がでてきたからだ。戦略を立てるのに個人の能力把握は必要だろう。


「通常ならロッソRに二人付いて、残りの二人が隠密行動だけど」


「今回は戦略を練る時間もあまりないし、宣戦布告した敵国が相手なので私達四人は別行動が良いかも」


「そうね。勇者様もロッソRもやらかすことが多いので、あちらはあちらで任せた方が良さそう」


「そうなると私達は同行するにしても別行動ね。あの二人には普通に観光してもらうのが良いわね。二人がうまく事件などに巻き込まれてくれると、色々と情報が手に入りそう」


 ロッソRは格闘や尾行などのスパイ的な行動は苦手なので、しかななく囮役をやらされることが多い。もちろん、ロッソR本人はそれを認識していないが。


「それにしてもロッソR遅いわね」


「見に行きますか?」


「どこにいるか、わかる?」


「それなら財務局ね。勇者様がそこに行っている頃よ」


 赤い少女隊Rの四人は隠密行動で城内の財務局に向かった。もちろん、この四人はプロなので誰にも見つからず移動することが可能だ。


 ◇ ◇ ◇


 赤い少女隊Rの四人は、財務局の出入口から少し離れた所で気配を消している。


「勇者様が出てきたわ」


「何だかご機嫌そうね、スキップしているわ」


「オムライスがかなり売れたらしいから、きっと儲かったのね」


「羨ましいわ」


 その通りである。赤い少女隊Rの情報収集能力は伊達ではない。


「いたわロッソR」


「ああ、柱の陰に隠れているけど、あれじゃバレバレよ」


「あ、ロッソRと勇者、今、完全に目が合ったでしょ」


「ロッソRが目をそらしたわ。全く意味がない。むしろわざとらしくて怪しい」


 ヨシオはもちろんロッソRに気付いている。一方、赤い少女隊Rの四人には気づいていない。


「勇者様も戸惑っているようね」


「あんなに堂々と見られると逆に尾行だとは思わないでしょ」


(ガツン)「キャ!」


「「「「ああ!」」」」


「ロッソRがスネを打った!痛くて涙目になってる。なんか可哀そうな目で勇者様に見られてるよ」


「勇者様の方が、ロッソRを助けに行った方が良いのか、迷っている感じだわ」


 ヨシオは助けるかどうか迷っていたようだが、何となく少女から発せられる近づくなオーラを感じ取り、結局、一人で部屋へと戻って行った。


 赤い少女隊Rの四人もひっそりと元居た部屋へと帰っていった。


 ◇ ◇ ◇


「『赤い少女隊R』定例会議ぃ!」


「「「「「パチパチパチ」」」」」


「遅れてきたロッソRも含め五人全員揃ったわね。それでは敵国の情報収集計画について話し合いを始めます」


「「「「はーい」」」」


 赤い少女隊RのリーダーのクレナイRが場を仕切って会議を始めた。机の上にはお菓子や飲み物がこれでもかと準備されている。すでに女子会だ。


「まずはルージュR、潜入経路を提案して」


「調査対象は宣戦布告をしてきた敵国です。直接の道路は封鎖されていますので、第三国経由で潜入することになります。比較的交通量の多い西側の国経由が良いと思われます。情報が多く集まるでしょうから」


「拠点はどこがいいかしら、ヴェルメリオR」


「西側の国の北に位置する村が良いと思います。最も敵国に近い村です。そこには温泉、特に美人の湯があるし」


「「「「異議なし!」」」」


「それでは今回の変装はどうする。エリュトロンRお願い」


「基本的には全員がツアー客を装って行動する予定です。もちろん他人同士のふりをします。ただし、今回は勇者ヨシオ様が協力することになるとお聞きしました。そこで、ロッソRは勇者様とカップルになってもらいます」


「え?私?」


「ロッソRが勇者様の偵察をしてくれたのでちょうど良いでしょう。私達は四人でいつもの通り、一般人を装って行動するわ。ロッソRは勇者様とペアで行動ね。ロッソRが調べた勇者様に関する情報の中で、気になることはあるかしら」


「はい。実はここで公表して良いのかどうか迷うのですが勇者ヨシオ様はとんでもない奴です!」


「「「「とんでもない!?」」」」

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