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8-7話

 ミランダクーは、連日マヨネーズ作りに取り組んでいた。現在の問題は一日に作れる量が少なすぎることだ。これでは商人の必要数にも応じることが出来ない。つまりビジネスにはならない。


「村の人に頼もう!」


 村民達の朝は忙しいが、午後からは暇そうだ。知り合いの村民にお願いして、手伝ってもらった。最初はうまく作れなかったけど、やがてコツをつかみ生産能力は数倍になった。少しづつ手伝える人を増やしたところ自分の家で手狭になったので、村内の空いている家を借りることにした。小さな工場だ。


 生産能力はさらに増強された。無事、商人の必要数にも応じることができた。マヨネーズはミランダクーにささやかな利益をもたらし始めた。しかし、需要には全然追いついていない。街でのマヨネーズ人気は増加する一方だった。


「まずいわ!全然追いつかない!真似をされたら終わりだわ。人気のあるうちにブランドを浸透させなきゃ。何か良い方法は無いかしら。勇者様が確か・・・魔動攪拌機!これだわ!」


 近所の鍛冶屋に協力してもらい、魔動撹拌機とボウルを固定し、植物油がその中に定期的に入るような簡単な装置を作った。色々と改良を重ね、材料とタイマーをセットすれば自動的にマヨネーズが作られるマヨネーズ専用魔動機械が完成した。この頃からミランダクーが改良した最適なレシピは秘密にすることにした。


 マヨネーズ専用魔動機械のおかげで、商社の要望にさらに応えることができた。そして少なくない利益がもたらされ始めた。しかし、街から離れているので輸送費がかかる、材料を街から運び込む必要があるなどの問題が顕在化してきた。


 そこでミランダクーは村を出て、街の近郊に小さな倉庫を借りることにした。子供二人を連れ、倉庫の片隅に寝泊まりし、さらに改良したマヨネーズ専用魔動機械を5台制作した。マヨネーズは作ったはしから売れて行き、輸送費がかからなくなったため利益率も向上した。


 稼いだお金でさらに倉庫を借り、マヨネーズ専用魔動機械を20台制作、人も雇った。安定した生活ができるくらいの収入が毎月生じ始めた。子供達も学校に通えるようになった。


「今こそ恩返しする時だわ」


 少額であっても利益が生じたら、必ずその一部を別に保管していた。それはレシピを教えてくれた勇者ヨシオに渡すお金だ。この日、数万円相当の金額をヨシオ宛に送った。それは小さな金額であるが、恩返しの最初の一歩であった。


「まだまだこれからだわ!」


 この日から毎月、ヨシオ宛に利益の一部が送られるのであった。


 やがて、ミランダクーは『天使のマヨネーズ』会社を興した。商品の人気はナガグツ半島を飛び出し国中に広まった。そして敏腕女社長ミランダクーとして活躍し始めた。マヨネーズは莫大な利益をもたらし始めたのだ。


 そのうち『天使のマヨネーズ』の類似品がでてきたが、味とブランドを確立した今となっては敵ではなかった。


 ミランダクー、ヒカゲ、コジローはミヲノ中心にあるマンションに引っ越しした。安全面の問題からだ。もう貧乏家族ではなくセレブ一家なのだから。しかし貧乏気質の抜けない三人は、最上階のワンフロアーぶち抜きで10室ある高級マンションにもかかわらず、1室とキッチンしか使っていない。そして家で使うマヨネーズを作るのは相変わらずヒカゲとコジローの役目だ。まだ貴族味には程遠いらしい(ヒカゲ談)。


 現在も元住んでいたパルア村のほったて小屋はマヨラーの聖地として大切に保管されている。最近では観光地となってバスツアーに組み込まれているようだ。


 夫らしき人がほったて小屋に時々訪ねてくるらしいが、引っ越ししたことは言ってないのだろうか。言い忘れているだけに違いない。きっと。ちなみに夫が歌手で成功したという話は未だ聞かない。


 これらはコジローが街で勇者ヨシオと出会ってから、ほんの一年間の出来事である。


 ◇ ◇ ◇


 全ての天使のマヨネーズの裏面には必ずメッセージが記載されている。


『姫様から頂いた愛と勇者様から頂いた諦めない心に感謝を込めて』

 ~ミランダクー~

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