8-6話
「ビタミン類を破壊せず野菜を美味しく食べるにはマヨネーズ!美容と健康にマヨネーズ!故郷のソウルフード、マヨネーズを作って売り出そう!」
「「マヨネーズ?」」
「この国にマヨネーズがあるかどうかは分からないけど、俺の故郷では大人気の調味料です。必要な材料は、玉子、酢、塩、胡椒、油です」
「はい、全てあります」
「ヨシオ様、私、そのマヨネーズを食べてみたくなりましたわ。ぜひ作って下さいませんか」
「分かりましたシャム姫。それでは食器と材料をお借りします」
「どうぞ!ここにあります」
「まず玉子を割って黄身と白身を分ける。卵黄に酢を少し、それから塩と胡椒入れて良く混ぜます。次に油を少し入れます」
「トマトケチャップより簡単そうね」
「ここからが大変なところです。ひたすら棒で混ぜながら少しずつ油を入れます。分離しないようひたすら混ぜるのです。そしてちょっとだけ油、そして混ぜる、ひたすらこの作業です」
「単調だわ。でも重要な工程なのね」
「とても重要です。これがすべてと言っても過言ではありません。そのうち白濁してクリーム状になったら酢、塩、胡椒で味を調え出来上がりです」
俺は全身全霊でマヨネーズを混ぜた!三十分くらいずっと!もう腕がパンパンです!もうすぐ出来上がりだ!
「本当は魔動撹拌機でもあれば楽なのですが」
「魔動撹拌機ありますよ!独身OL時代に買ったの」
「あるんかい!もう出来たわぁ!」
「やったー!どんな味でしょうか!」
シャム姫が可憐な少女に戻っている。キラキラした目で子供達と一緒にマヨネーズを見ているよ!このシーンだけでCMになっちゃうよ!
ミランダクーが畑からレタスっぽい野菜を採ってきたので試食会を始めた。
「「「「「いっただきまーす!」」」」」」
「(もくもぐ)母さんの野菜、美味しいよ姉ちゃん!」
「(もぐもぐ)貴族!これが貴族の味なのシャム姫様!」
「(もぐもぐ)貴族でもこんなに美味しい野菜は食べられないわ!」
「本当に美味しいです。このようなレシピを教えていただき大変感謝しております!」
「うん、美味いな。作り方はあんな感じです。味付けなども含め色々試して作ってみてください。野菜と一緒に売れば高く売れるでしょう」
俺達は美味しい野菜を食べて大満足だった。マヨネーズ作りがうまくいって、生活が少しでも良くなることを俺達は願った。ついでに魔動馬車に積んであった試作トマトケチャップ用の小瓶が百個くらい余っていたのでここに置いて行くことにした。
俺たちはコジロー達と別れ城へと帰って行った。
◇ ◇ ◇
その頃、農場のレストランでは。
「シャム姫様とヨシオ様遅いなぁ」
完全に置いてけぼりにされたタベタリーナがいた。
◇ ◇ ◇
「マヨネーズ作り、なかなか難しいわね」
コジローとヒカゲの母であるミランダクーは、あれから連日マヨネーズ作りに取り組んでいた。
「母さんマヨネーズできた?」
「ぼく、早く食べたいよ」
「ちょっと待って、すぐ出来るから」
私は出来立てのマヨネーズと野菜を食卓に置いた。
「「「いただきます!」」」
「ニンジンが臭くないよ。これならいっぱい食べられるよ」
コジローはむしゃむしゃ食べている。マヨネーズの油が舌をコーティングして臭みが抑えられるようだ。ご機嫌だ。
「母さん美味しいよ!たぶん貴族の味」
貴族味がどんなのかは不明だが、ヒカゲはシャム姫に会って以来、プリンセス娘に憧れている。スキルが戦闘向きなので兵士の方が向いていそうだが。
ミランダクーは試作したマヨネーズを時々無料で村民に配っていた。新しい味で野菜が食べられるということで、マヨネーズは大好評だった。もっとほしいという人には、原材料である玉子、香辛料、油、塩などと交換することにした。
やがて、お金を払ってでもほしいという村民まで現れ始めた。マヨラー誕生の瞬間だ。一家の生活レベルはマヨネーズのおかげで徐々に向上していった。
マヨネーズの恩恵はそれだけではなかった。皆が健康になったのだ。マヨネーズは高カロリーな食べ物なので、これまでの栄養失調ぎみの食事を補うことができたのだ。
ミランダクーはひたすらマヨネーズの改良を続け、とうとう勇者ヨシオの故郷の製品レベルにまで達した。話を聞きつけ、村民のみならず村外からもマヨネーズを買いに来る人達が現れた。
「そろそろブランドを付けようかしら。勇者様と姫様、まさに神のような方々から頂いたレシピだから・・・天使!商品名は『天使のマヨネーズ』にしましょう」
ミランダクーのスキルは[イケテルOL]。ビジネスの才能が非常に優れているのだ。これまでは才能を活用する余裕がなかったのだが、精神的にも金銭的にも余裕の出てきた今、まさに才能が開花しようとしている。
小さな紙に『天使のマヨネーズ』と手書きし、可愛らしい天使の絵を描いた。それを瓶に張り付けて売り始めた。可愛らしい絵とキャッチーなネーミングが話題となり、さらに人気となった。やがて、街の商人が取引を持ち掛けてきた。しかし、今は一人で作っているため大量生産出来ず、商人の要望には応えられない。
「母ちゃん!僕が手伝うよ」
「私も作る!貴族の味できるかな!」
コジローとヒカゲが手伝ってくれた。だが所詮子供、商品になるようなマヨネーズはできなかった。二人には家族で食べる分を作ってもらうことにした。
それは家族にとって大切な幸せ味のマヨネーズとなった。