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8-3話

「バーカ!バーカ!」


 病院の表は患者でごった返していたので反対側の関係者入口から入ったのだが。


「馬鹿って言った奴が馬鹿だぞ!」


「バーカ!バーカ!」(バサバサーーー)


 病院に入った途端、変なオウムらしき鳥に馬鹿呼ばわりされた!しかも言い逃げ!ムカつく!


「くそぅ、しかし、先に薬を渡さねば。その後であの失礼な鳥と対決だ!」


 勇者といえどヨシオは大人げ無いのだ。


「すいません!魔術師はどちらでしょうか?勇者のヨシオです!」


 奥の方から病院の看護師らしき清楚な女性が出て来た。


「お待ちしておりました!勇者様ですね。私、看護師兼魔術師助手のカモナースと申します。新開発の薬はどちらでしょうか?」


「これです。どうぞ」


「ありがとうございます。一緒に、こちらへ」


 カモナースは俺が持ってきた薬を手に取ると、足早に奥の分析室らしきところへと向かった。そして魔道具で薬の分析を始めた。


「なるほど!特別な方法で魔力を封じ込めてあり、飲んだら体の状態を薬が認識し、それに対応した特定のヒールが起動するような回路が含まれていますね!こんなの見たこと無い!」


「え、そうなの?・・・そうなのだ。ここまで仕上げるのに苦労したぞ。今までに無い方法だからな」


 よく分からないが、ナガグツ風邪に効果があることは確認できたようだ。しかし単なる風邪の市販薬のはずだが魔力?回路?


「凄い、さすが勇者様!特にここの部分の術式は見事です!」


「うむ、そうだろうな。俺も自分の才能が怖くなることがある」


 こんなに都合良く出任せの言える自分の才能が怖いです!


「ぜひこの術式の薬の製造の許可を下さい。相応のライセンス料はお支払いしますので」


「あ、どうぞ」


「そんなに軽く・・・良かったです!そうそう、先生にお薬飲んでもらうの忘れてましたわ」


 カモナースと一緒に魔術師の居る病室に行き薬を飲ませた。魔術師の顔色はすぐに良くなった。バーコードリーダーによるスキャンでも(回復中)が表示された。しばらくすると全快するだろう。


「それにしても何時からこんなに風邪が蔓延し始めたのですか?」


「一ヶ月前くらいでしょうか。しかも今回の街中での流行は、たぶんここに入院している患者が発端だと思います。どういうわけか、ヒールで治しても治してもすぐに患者達が風邪を再発させてしまうのです。そのうち見舞客を通じて広まったと考えられます」


「一ヶ月くらい前か。もしかして、病院内にいた鳥って一ヶ月くらい前に来たとか?」


「ええ、そうですよ。良くご存じで。口が悪いところがまた人気で。皆の癒やしのペットのココちゃんです」


「きっとそれだ!」


「ええ?」


「滅多に無いのですが動物の持っている風邪が変異して人に移った場合、どんな影響をおよぼすか不明なのです。俺の故郷では鳥の病気が変異して人に感染し、猛威を振るったことがありました」


「大変!ココちゃんを呼ばなきゃ!」


「呼んだら来るのですか?頭が良いのですね」


「いえ、食い意地が張っているので、人が何かを食べようとするといつの間にか登場して食べ物を横取りしていきます」


「タチが悪いな!しかし、そこを利用させてもらおう。皿をお借りできますか?」


 俺はポケットから薬を出し四分割し皿の上に置いた。


「このオレンジのキャンディー美味しいのですよ!異国の土産です。皆で食べましょう」


「わーい!」


 カモナースも合わせてくれた。


(バサバサーーー)「うげぇ」


「バーカ!バーカ!」


 ココちゃんはいつの間にか現れ薬のかけらを一粒食べて俺の頭の上に乗った。素早くスキャンしてみた。


【性別】女

【種別】おしゃべりオウム

【年齢】1歳

【レベル】C

【スキル】[おしゃべり]

<状態異常:変異風邪(回復中)>


 やはりこいつが原因のようだ。(回復中)の表示が出ているので無事に原因を撃退したはずだ。任務完了だ。


 俺は病院を出て、街中をゆっくりと歩きながら馬車へと帰ることにした。


 ◇ ◇ ◇


 俺たちの乗ってきた魔動馬車の近くまで来たところ、病院の側で看護師と小さな男の子が言い争いをしていた。


「僕の姉ちゃんが病気なんだ!姉ちゃんを治して下さい!お願い!」


「だから、今は風邪の患者さんが病院にいっぱいいて、あなたの家まで行って診ることができないって言っているでしょ」


「でも、ぼくの姉ちゃん昨日からすごく体調が悪いんだ!」


「治療費も持ってないでしょ」


「お金ならあるし!」


 男の子は握りしめた小銭を看護師に見せた。


「全然足りないわね」


「後で払うから!お願いします!」


 どうやら、姉がナガグツ風邪のようだな。見捨ててはおけまい。


「俺が診てやろう」


「「え!」」


「少年よ、家は近くか!?」


「来てくれるの!病院の先生?家はパ、パルア村です!」


「俺は勇者ツツゴウヨシオだ。俺に不可能は無い。病気は俺が治す!」


 看護師がアイドルと突然出会ったような顔で驚いている。そして、頬を紅くして熱っぽい目で俺を見ている。久々にキターーーー!!?

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