表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/231

8-1話

 ここはハートフルピース王国の南にある長靴のような形をした半島。農業、特にトマト栽培が盛んな地域だ。勇者ヨシオはトマトケチャップ作りのためシャム姫、料理長タベタリーナおよび護衛と一緒にここに来ている。


 昨日の昼からずっとケチャップ作りをしている。夜が明けて周りが明るくなってきた。勇者の仕事ってなにーーー!?


「終わった!やっと終わった!瓶詰も完了したぞ!手が痛い!眠い!もうだめ!」


「お疲れさまでした!」


 ヨシオはタベタリーナと一緒に徹夜で256種類のトマトを使って256種類それぞれのトマトケチャップ試作品を作り、瓶に詰め終わった。


 そこにシャム姫が護衛のアンゴラと一緒に登場した!遅い!遅すぎるよ!


「久々の休日!昨日は買い物も出来たし大収穫だったわ。タベタリーナの方はどうでしたか?ヨシオ様と作っていた試作品はうまくいった?」


 シャム姫はご機嫌で、置いてけぼりにした件は怒ってないようだ。


「はい、シャム姫様。今、終わったところです。一週間熟成させて試食をし、使う品種を決定しようと思います。今からその試食が待ちきれず、わくわくしています!これから城に帰ろうと思います」


 料理馬鹿のタベタリーナは相変わらずだ。


「あら、もう帰るの?ゆっくりしていけばいいのに。家に帰ってきたのは三年ぶりだし」


 母親のタベタガールが厨房に入ってきた。


「俺はもう少しゆっくりしていきたいな。地元の美人ゴホッゴホッ、び、ビジネス街とか見たいし。ぜひ、じっくり観察したい!」


「でも作って頂いたケチャップが気になるし。それより、どうしてヨシオ様は、ナガグツ半島のビジネス街に御興味があるのですか」


 そんなキラキラした目で見つめられても言えない!出まかせなんて言えない!


「ええっと、ビジネスは人間が生きていく上で大切ですから。つま先から頭のてっぺん・・・いや基礎から応用まで」


 シャム姫が冷たい目で俺を見ている。ビジネスの話ですよ!


「シャム姫様もヨシオ様もお忙しい身の上です。あまりお時間も無いのでは?」


 シャム姫が俺の横に来て脇腹を肘でつついて目くばせしている。ア・イ・シ・テ・ルのサインかな?あ、再び冷たい目に!ち、違いますよね。


「俺もさすがに疲れちゃって。休息したいから帰るのをもう一日伸ばしてみるのはどうだろうか?」


「確かにそうですよね。よく考えたらヨシオ様、徹夜で作業して下さって休む暇もありませんでした。すみませんでした」


「そ、そうよ!勇者とはいえ休息は大切なのよ。私も忙しいのですが、ヨシオ様がこのような状態ではしかたありません。明日の朝、帰ることにしましょう!それまでは自由行動よ。明日の朝、このレストランに集合ね」


「「わかりました」」


 シャム姫の一声により、俺達は明日の朝帰ることに決まった。俺とシャム姫、護衛のアンゴラはレストランを出た。


「シャム姫様は優しいですね。タベタリーナさんが久々に帰省したのに家族と話をしていないことを気にしていたのですね」


 俺はシャム姫の優しさに気づいていた。


「え?昨日売り切れだったバッグが今日入荷する予定なの。だからまだ帰れないわ。一緒に店まで取りに行くわよ」


「わかりました!お供します」


 タベタリーナに気を遣わせないための行動だろう。さすが姫様だ。俺はシャム姫と一緒に魔動馬車に乗り込みアンゴラの運転でミヲノの店に向かっている。高速道路ではないこの道は普通の馬車と同じ速度でゆっくり進むようだ。しかし、この馬車は乗り心地が良すぎるよな。乗ったら寝てしまう・・・。


 夜遅くまでガールズトークに華を咲かせていたシャム姫と、徹夜でトマトケチャップを試作していた俺はすぐに馬車の中で寝り始めたのであった。


 ◇ ◇ ◇


「到着しました」


 魔動馬車の運転をしていたアンゴラが俺達を起こしに来てくれた。


「あれ?もう着いたの?」


「はい。大型馬車なので街の入口までしか入れませんが、ここから歩いてすぐのところに店はあります」


「わかった。シャム姫様も起きて下さい。到着しましたよ」


「うーん・・・」


 シャム姫が目を覚ました。何だかウルウルした目で俺を見ている。心なしかほおも紅い。もしかしてこれって!恋!?


「なんだか頭が痛いわ・・・」


 恋の病ではなく、本当の病のようだ。アンゴラがすぐに駆け寄りシャム姫のおでこに手を当てた。


「なんてこと!すごい熱!これは・・・ここ最近流行っているナガグツ風邪という伝染病だと思います」


 そういえばシャム姫は昨晩はミヲノの街中にいたはずだ。その時に感染した可能性が高い。しかし、いつもと異なる弱弱しいシャム姫もいいなぁ!守ってあげたい!素敵すぎる!しかし、残念ながらこのまま放置するわけにはいかない。


 俺はバーコードリーダーを姫の体に当ててスキャンした。俺のメガネの内側にデータが表示された。


【性別】女

【種別】人

【年齢】15歳

【レベル】A

【スキル】[ツンデレ]

<状態異常:ナガグツ風邪>


 シャム姫が時々ツンデレになるのはスキルだったんだ!いや、今はそこではない。見慣れない<状態異常>の項目が表示され、点滅していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ