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7-1話

「シャム姫様!?これをどうぞ」


 おれはシャム姫にどら焼きを渡した。


「これはお菓子ね!頂くわ・・・美味しい!何これ!こんな柔らかな・・・もぐもぐ・・・甘い、見たことないお菓子!」


 何とか最悪の状況は脱した。チョロイぜ!しかし、気を抜いてはいけない。相手はプロだ。

 

「ところで・・・もぐもぐ・・・シャム姫様!?どうして、いつから厨房に?」


「今来たところです。貴方が料理長を・・・もぐもぐ・・・バカンスに誘うところあたりから。厨房が大変だったとお聞きして駆けつけてみれば・・・もぐもぐ・・・旅行のお誘いですか。私も一度くらい誘われてみたいものです」


「い、いいえ!旅行でもバカンスでもなく仕事で・・・もぐもぐ・・・」


「ほう。勇者の仕事は・・・もぐもぐ・・・戦うことでしたよね。温暖でバカンスに人気のナガグツ半島で・・・もぐもぐ・・・何と戦うのですか?」


 話の方向性を間違えてしまった!せっかくどら焼きで誤魔化したのに!まずい!なんとかせねば!そうだ!ナガグツ半島って故郷でいえばあの国だったよな。ということは、もしかして、


「お忙しいと思って遠慮しておりましたが、シャム姫様もナガグツ半島へご一緒にいかがですか?」


「・・・もぐ?も!・・・え!?私も!?いや、選挙前だしスケジュールが、でも一日くらいなら取れるかな。と、取れるはず!どうしても来いって言うならしかたないわ!仕事、仕事なんでしょ!トマトだっけ?私、味にはうるさいのよ!それにナガグツ半島といえばファッションの聖地!ちょっとマネージャーに相談してくるわ。また連絡する」


 シャム姫はどら焼きを五つも食べた後、厨房を足早に出て行った。どうやらナガグツ半島に一緒に行きたかったようだ。目的は俺とは別のようだが。


 ◇ ◇ ◇


 翌日。


「ひえーー!」


 俺は料理長テツニン・タベタリーナ、護衛の女性兵士アンゴラと一緒に、時速300キロメートルを軽く超えるスピードで高速道路をすっ飛ばしている。


 馬車で!


 高速道路は故郷で見るような一般的な高架式で、アスファルトっぽいものを敷いた道路。ただし馬車は普通の馬車ではない。魔動馬車だ。魔動馬車は馬の代わりに馬のような形をした魔力で動く人工知能付きロボット、馬ゴーレムって言うらしいのだが、それでマイクロバスサイズの馬車を引いている。アンゴラが馬車内から魔動タブレットでゴーレムに指示を与え運転しているが、高速道路は自動運転が基本のようで暇そうだ。


 馬車の下にゴーレム組み込んでタイヤ回せばいいじゃん!


 魔術師のシバによると、それはできるけど一周回って様式美が許さないらしい。あれだ、流線型の宇宙船だったのがテクノロジーが進化しすぎて機関車型になって宇宙を飛んでしまう的な奴だ。たぶん。


 馬車にも何か魔法がかかっていて窓を開けても風が入ってこない。乗り心地も快適で故郷の高速鉄道よりも良いくらいだ。とにかく謎文化と謎テクノロジー満載の異世界である。


「いやー!いつの間にか到着したよ。海が綺麗だ!」


 城からナガグツ半島の南端までかなりの距離なのに2時間程度で到着した。俺もタベタリーナも高速道路に乗るまでは起きていたが、その後は寝ていたので一瞬で着いた感じだ。ちなみにシャム姫はスケジュールの都合で一緒には来れなかったが、そのうち来そうな気がする。


「見て下さい!一面のトマト畑です。ここには過熱料理に適したトマトが多く栽培されています」


「凄いな!トマトだらけだ」


 畑の方から金髪ロングの超絶ナイスバデー美女が登場した!やはりナガグツ半島は美女ばかりなのか!タベタリーナが美女に向かって手を振っている。


「お母さん!」


 へっ?お母さん?


「皆さん初めまして。この農場のオーナーのテツニン・タベタガールと申します。タベタリーナの母です。いつも娘がお世話になっております」


「勇者のツツゴウ・ヨシオと申します。この度は色々とお世話になります」


「まあ、あなたが勇者ヨシオ様ね。オムライス革命を起こしたとかで国中が大騒ぎですが、その張本人様ね」


「そんなことに!」


「ツーチャンやインストキログラムで新作オムライス『ヨシオのオムライス』の件が拡散してるみたいですわ」


「『ヨシオのオムライス』!なんだその微妙なネーミングは?」


「分かり易いでしょ?食べた人は美味すぎて失神するとか、美味すぎて他の食べ物が全てごみに思えてくるとか、虫歯が治ったとか寿命が伸びたとか」


 タベタリーナが説明してくれた。


「オムライス万能説!確かに凄いことになってる。ほとんどが嘘っぽいけど。でも、こんなに人気が出てきてしまいますとトマトケチャップづくりの責任が重大になってきます。がんばらねば」


「トマトケチャップの件は娘から聞いておりますわ。加熱用のトマトの品種を探されているとか。色々と取り揃えていますので、ご自由にお試しくださいませ」


「ありがとうございます!ここのトマトを使って超絶美味しいトマトケチャップを作り上げたいと思います!」


「頼もしいわ。昨日は娘から電話であなたのことばかり聞かされましたの。初めて食べたヨシオ様のオムライスの件や、ヨシオ様に教えてもらって作った新作オムライスが好評だった件も。それからはヨシオ様の凄さを延々と。料理にしか関心を示さないこの子が人に関心を示すのは珍しいわ。どうやら娘も気に入っているようね」


「もう!お母さん!余計なことは言わなくていいから!」


 いつも厳しい顔つきのタベタリーナの困ってる顔も可愛い!


「いえ、大したことはやっておりません。僕はアイデアを出しただけで、完成度の高い料理に仕上げたのは料理長のタベタリーナさんですから。しかし、そういう意味では二人の共同作業でした」


 ここは親から攻めていくべきだろう!母親を取り込めば勝利も近い!


「へー、二人の共同作業だったんだ」


「「「シャム姫様!」」」

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