表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
227/231

最終回

 ヨシオ達が魔王を撃退してから数千年後。ヨシオが領主を務めていたダンジョン自治区は国家として独立していた。その名もヨシオ合衆国。


 ハートフルピース王国とエルフ国の間にあった広大な砂漠は、ヨシオの始めた緑化事業により人が快適に住めるようになっていた。その全てがヨシオ合衆国の領地だ。そしてこの国はヨシオのもたらしたビジネスにより急激に発展し裕福な商業国となっていた。


 ヨシオ合衆国はその名の通り、複数の国の集まりである。領地は十分割され、ヨシオの妻達がそれぞれの領地を任され発展していった。そして今もその子孫達が運営している。


「しかし、こんなに景気が良いとどこも人手不足だな」


「ああ、何と言っても数千年に渡って好景気が続いているらしいからな。うちの店も系列の店舗を増やしたいけど人手不足だよ」


 カレー屋の店主と客の会話である。


「そういえばこの店は建国王ヨシオが始めた店らしいな」


「そうなんだ。当時はそこいらじゅうに野生の砂漠ウサギがいたらしいからな。この砂漠ウサギは人を見ると攻撃してくる害獣だったらしいぞ。しかも不味くて食えない肉質で誰も見向きもしなかったらしい」


「今じゃ考えられないな。砂漠ウサギの肉は美味い! カレーには最適だよ」


「ああ、それもこれも建国王がもたらした知識のお陰だ。まあ、この国そのものが建国王の知識の上に成り立っているんだがな。建国王様様だよ」


「違いねえや。しかし、そのおかげで発展し続け、常に人手不足というのも皮肉だな」


「しかたないさ。だが、建国王はそれを解消しようとして、十人の妻にそれぞれ十人以上の子を残したらしいからな」


「合計百人以上だな」


「すげえな」


「ああ」


「中でもシャム姫ってのは二十人も子供を授かったらしいからな」


「淫乱なお姫様だったんだな」


「ちげえねぇや」


「「わはははは」」


 二人の男は顔を見合わせ笑っていた。


「ごちそうさまでした。お金ここに置いておきますね」


「まいど!」


 カレー屋のカウンターにお金を置いて女が出て行った。


「あのお嬢ちゃん、顔を赤くしていたぞ」


「ばかやろう、お前が下品な話を大声でするからだろ」


 カレー屋の店主と客の男の会話は、その後もとめどなく続いた。



 ◇ ◇ ◇



「淫乱なお姫様ってどういうことよ! 確かに今はそんな格好だけど、当時はそうじゃなかったわ! もう人前に出られない! うわーん」


 真っ白なビキニアーマーを身に着けリビングでソファーを殴る女。そう、この人こそ先程カレー店にいた当人のシャム姫だ。


「しかたあるまい。二十人も生んだのは事実だからな。ビキニアーマーも似合っているぞ」


 小麦色のダイナマイトバデーで真っ赤なマイクロビキニアーマーを着こなすダークエルフ。ジェーンだ。この時代はビキニアーマーの上にローブを羽織るのが女性の一般的なファッションだ。


「そういうジェーンもエルフなのに十五人も生んだではありませんか」


 そう指摘しているのは元聖女メンクイーン。


「そうだよー 長寿のエルフがそんなに子供を産んだら大変なことになるんだからー」


 エルフのラグドールも同意する。


「ラグドールも子供十四人だから、あんまり変わりませんわ」


 元貴族のベンガルーだ。


「ただ正確に話が伝わっていないのは問題だと思います」


 優等生のミケそう指摘した。


「確かに。最も子供が多いのはシャム姫ではなく二十五人産んだマンチカンなのに」


 アンゴーラがマンチカンを指さす。


「だってー、私が一番若かったからあたりまえですー」


 元JSのマンチカンが自慢そうに胸を張る。


「くっそー、私だってもうちょっとで一番だったのに」


 悔しがるロッソRアカネ。


「アカネちゃんも二十四人だったから、十分に建国に貢献していますよ」


 元王城の料理人タベタリーナが慰める。そこに背中に巨大な剣を背負ったヨシオが登場。もちろん張りぼての剣。この時代の男は勇者ファッションが一般的らしい。


「みんな! 未来を楽しんでいるか、ぐぇ!」


 いきなりシャム姫にソファーのマットを投げつけられたヨシオ。そう、ヨシオと婚約者達は数千年後の未来にいた。建国王の館として厳重に保管されているヨシオの館。その地下にタカスィーが作った秘密基地があった。ここを拠点としてヨシオ達は活動している。


 話は遡る。


 ヨシオ達が魔王を撃退した翌日に、タカイ・パピコが訪ねてきた。目的は二つ。


 一つ目はロストテクノロジーの魔道具の回収。タカスィーがいい加減な管理をしていたため、この世界にあるべきではない高度なテクノロジーを持つ道具が地上や地中に幾つも存在していた。これらに依存すると、この星の進化に良くない影響を及ぼすから回収したいとのこと。原始人に銃を与えるようなものらしい。


 二つ目はこの星の管理委託。そもそもこの星は星系管理会社社員のタカスィーとパピコが管理していた。悪意を持った生物が星を支配するのを防ぐためだ。星の管理人は、時には地上に降り立ち、原住民に成りすまし人々を導く。その任務をヨシオ達に託すというのだ。管理と引き換えに遺伝子操作による若返り、つまりは繰り返せば無限の命を得る技術と装置が得られる。だが、建国王ヨシオとその妻という役割は終える。星の管理人として密やかに生きることになるのだ。


 一つ目はすぐに了承した。二つ目はダンジョン自治区の運営が軌道にのり、子孫に自治区の運営を譲ることができた後、という条件で了承することとなった。


 それらを了承したことで、ヨシオ達は上空の宇宙ステーション基地、コールドスリープ装置、地上の拠点、地上と基地を往復するためのゴーレムなど星の管理に必要な機器や基地を譲り受けることになった。


 そして数十年後にそれは実行された。ヨシオ合衆国を建国し、十分割した各地域を子孫にゆだねた。ヨシオ達は老後は静かに暮らしたいと子供達に伝え姿を消し、そして宇宙ステーションに移動した。コールドスリープを行い、同時に遺伝子操作を行い数千年後に目覚めたのだ。出会った頃の姿で。


「Aiによるとプリンセス娘達の行動に問題が見つかった。メンバーの何人かがプリンス事務所やオラオラ事務所の若い男達と繋がっている。このままではプリンセス娘全体が食い物にされ、組織の解散に追い込まれかねない。研究生として潜入しているチームは、素行の悪いメンバーが誰なのかを特定してくれ」


「「「了解」」」


「TV局、プロデューサー、スポンサーのチームはそっちの面から情報収集してくれ」


「「「了解」」」


「裏垢調査チームはどうだ?」


「「「こっちはほぼ特定できていますが、引き続き続行します」」」


「よろしく。シャム姫と俺は一緒に現地調査だ。握手会に行くぞ」


「はいはい」


 まだ立ち直れていないシャム姫であった。


 妻達はそれぞれ行動に移った。ヨシオはシャム姫とともにヨシオ合衆国の街並みに消えていった。



おしまい







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


練習と実験をかねて始めたこの小説もいつの間にか226話まで続くことができました。

長い間お付き合いいただきありがとうございました。

ヨシオの旅は一旦ここで終了となります。


機会がありましたら、そのうち新作を始めたいと思います。

その時にまたお会いしましょう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 急に終わっちゃったぁーーーーー>□<
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ