23-46話
『むきー! どうなっているんだ!』
タカスィーの放ったペンギン型ゴーレム達は、ペンちゃん率いるダンジョンゴーレム達に全て破壊された。怒るタカスィー。
『こうなったら破壊光線で何もかも破壊してやる!』
破壊光線の威力は絶大だ。数時間前に試し撃ちしたその光線は山を吹き飛ばし、さらに平地となったその場所を汚染した。
「まずいぞ! 婚約者のネックレスで防御できそうだが、さすがに広い範囲は無理だ」
ジェーンが悔しそうにそう言った。
「いや、まだ手段はあります!」
アンゴーラが声をあげた。アンゴーラは乙女ゲームの主人公だ。そして地球にいた時はこの乙女ゲームをやり込んでいた。乙女ゲームのシナリオの強制力がこの世界にあるなら、彼女のゲーム知識が役に立つ時だ。
「魔女っ子にはお約束があるのです!」
お約束。それは、変身中には攻撃しないとか、主人公たちのセリフは最後まで聞くとか、戦いの最中スカートがめくれそうな時は謎の光が遮るとか、温泉のシーンでは何故かいい感じで湯気が大切な所を隠してくれるとか。そのおかげでR18でなくても放送できるのだ。
「さあ、皆、こっちに集まって輪になって手を出して!」
ボロボロの魔女服を着たヨシオの婚約者達は輪になり、輪の中心で全員が手を重ねた。それを確認してアンゴーラが叫んだ。
「一人はみんなのために、みんなは一人ために! チェーンジプリンセス! 最終形態!」
ヨシオは目を輝かせた。その先が予想できるからだ。これこそお約束だ!
「まさか、本物を見ることができるなんて! TVアニメで最終回間際になると最終進化するやつ! フリフリの魔女っ娘服が豪華で無敵で神聖な感じの衣装になるやつ! そして皆で必殺技を出しまくって敵を倒す! この世界にもそれがあったか! さすがアンゴーラだ!」
ヨシオは一人感動しながら、金色に輝き始めた婚約者の少女達を見つめていた。そして変身は最終局面を迎えた。
「「「空よ!」」」
「「「海よ」」」
「「「大地よ」」」
皆の声がこだました! 言葉の意図は分からないけどなんとなくいい感じだ!
「「「変身オールプリンセス!」」」
シャム姫が手を掲げヨシオを指さした。
「え、俺!?」
ヨシオの体が虹色に輝き始めた。
「ひぃー!」
ヨシオを中心として虹色の光が膨れ上がった。空からはきらめく光が、海からは水面から輝く光が、そして大地からは草原の優しい光が。あたりは眩しい光に包まれた。そして、光が消滅すると・・・
「まじか」
「これが最終兵器なのか」
「予想外」
「勝てるかな」
「自分が戦うつもりだったけど」
「尊い犠牲というか」
「まかせてもいいのかしら」
「本当の主人公だし」
「しかも当事者」
「いいところを見せてもらうわよ! ヨシオ!」
虹の光が消えたその場所には巨大化したヨシオがいた。