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6-3話

 あまりの惨状に驚き、そして自分の力の無さを悔やみ、俺は目の前の様子を呆然と眺めていた。


 そこへ料理長のタベタリーナがふらふらになってやってきた。意識もうろうとしている。敵国の暗殺者にやられたに違いない!くそう、俺がもう少ししっかりしていれば!


「タベタリーナ!大丈夫か!何が!何が!起きたんだ!敵は誰だ!」


「終わった・・・何もかも終わったのです・・・敵は客です」


「客に暗殺者がいたのか!しっかりしろ!終わっていない!終わっていないぞ!意識をしっかり持て!俺達のオムライスを国中に広める夢はどうなった!」


「暗殺者?いえ、来てませんよ。オムライス人気が凄すぎて準備したにもかかわらず全然間に合わなくて。それでも必死にやりきったのです。一週間分のつもりで用意していたオムライスの調味料は全て無くなりました」


「え、暗殺者来てないの?じゃあなぜ皆死んでいるんだ?」


「いえ、寝ているだけです。赤いのはトマト汁や飛び散ったケチャップです。徹夜で特訓、準備してそのままレストランを営業したので着替える暇なくて」


「そ、そうなんだ。なら良かった。びっくりしたよ」


「驚かせてすみませんでした。あなた達!起きなさい!早く帰って寝なさい!」


 シェフ達とサポート係達は起き上がり、ゾンビのように厨房を出て行った。廊下で血まみれのようなトマトまみれの彼らに会った人達は腰を抜かすことだろう。


「大変だったようだけど新作オムライスが人気で良かった」


「ええ、まさかこれほどまでに忙しいなら限定食にすれば良かったです。私達もついつい意地になって頑張ってしまいました。でも、これをずっと続けるのは無理です。やるならばこのオムライスだけに集中する必要がありそうです」


「オムライスだけに集中?」


「ええ、ここのレストランではそれができませんので街中にオムライス専門店をつくるべきでしょう。今度、王にかけあってみます」


「そうか。ぜひ頼む!」


 俺の給料がかかっているのだ!ぜひ成功してほしい。


「それから、トマトケチャップの味を受け入れてもらえたので、本格的にトマトケチャップの製造に取り掛かりたいと思います。こちらも工場を作っていいくらいです」


「こ、工場つくるの?」


「はい。まずは手作りで城のレストラン用とオムライス専門店用を作りますが、トマトケチャップの一般販売を始めると明らかに生産が間に合いません」


「トマトケチャップの一般販売もやっちゃうの?」


「はい。本日だけでも味付けに関して多くの客から問い合わせがありましたから、何もしなければ誰かがそのうちケチャップを作るでしょう。それならば私達が作って販売すべきです。したがって工場を作るのは時間の問題かと。これも王に掛け合ってみます」


「そうですか。そのためには早急にトマトを入手する必要がありますね。どこか、あてはあるのか?料理長?」


「ええ。ナガグツ半島に行こうと思っています。そこではトマト栽培が盛んに行われています。私の出身地なんです。ここからだとかなり遠いのですが、私一人で行って適したトマトを探してきます」


 なんとなく俺の故郷の地中海にある半島っぽいな。パスタやピザがあるのだろうか。馬車で遠距離旅行は大変かもしれない。でもタベタリーナともっと仲良くなれるかもしれない!いや、さらに重要なのは女性が皆美人かもしれない点だ!ここにいる金髪美女タベタリーナの出身地なのだ!いや、これは美人だらけ確定でいいだろ!


「あなただけに責任を負わせるわけにはいかない」


「え?」


「一緒に行きましょう。ナガグツ半島へ」


「本当ですか!?嬉しいです!実は少し心細かったんです。自分の力でできるかどうか。ヨシオ様が一緒なら何も心配することは無いです!明日からでも行けるように、王様と話をして早速準備を整えてきます」


 料理長タベタリーナはキラキラした目で俺を見つめている。心なしか頬も赤くなっているような気がする。


「ヨシオ様、一緒に行きましょう!絶対ですよ!」


 タベタリーナは俺に手を振りながら厨房を後にした。よし!これでかなり好感度がアップしたはずだ!やっぱり焦ってはいけない。この調子で頑張るぞ!


「常夏のナガグツ半島へ金髪美人とバカンスですか。実に羨ましいですね」


「シャム姫様!」


 シャム姫が腰に手を当てて仁王立ちで、そして冷ややかな目で俺を見ている。


 非常にヤバい状況だ!タベタリーナの好感度は上がったかもしれないが、シャム姫の好感度は下がる一方だ。せっかく取り調べを乗り切ったのに!一刻も早く好感度を上げるか誤魔化さねば!


 タノムー!一生のお願い![コンビニ]さん[コンビニ]さん!


【スキル】・・・

【スキル】・・・・・・

【スキル】[コンビニ]しかたなく発動


 ありがとう!しかたなく、しかたなくでも発動してくれたのね!躊躇していたけれど!本当にありがとう!


 俺はこっそりバーコードリーダーでスキャンした。


「ピッ!」


『タイガー屋 どら焼き×6』


 高級品キター!

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