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23-44話

「アンゴーラ! 再会の喜びは後だ! ネックレスを!」


 ジェーンが大声で叫んだ。アンゴーラは我に返った。ペンちゃんからアタッシュケースを受け取り、婚約者達の前に駆け付けた。


「勝手な行動をしてゴメンなさい!」


 アンゴーラはアタッシュケースをシャム姫に渡し、皆に謝った。


「言い訳は魔王、あの巨大ゴーレムを倒した後でお聞きします。今はやるべきことがあるはず。もちろんあなたも仲間なのだから協力するわよね」


「・・・ありがとう」


 シャム姫の言葉にアンゴーラは頷いた。ヨシオの婚約者達はそれぞれのネックレスを受け取った。


「さあ反撃の時よ!」


 全員がネックレスを身に着け変身ワードを唱えた。あたりは白く輝き婚約者達は魔法少女に変身した。巨大ゴーレムは今立ち上がろうとしている。


 ジェーンとラグドールのエルフコンビは真っ先にゴーレムに飛び掛かった。狙うは脚だ。そして二人の得意技は力。というか殴ること。


「「筋肉は裏切らない! プリンセスパーンチ!!」」


 二人はゴーレムの右膝を交互に殴っている。魔法でも何でもない力技だ。しかし、立ち上がろうとしていたゴーレムがよろめいた。


『ふざけるな、てめーら! 生かしておいてやろうとしたのにあだで返すとは!』


 タカスィーが怒っているところを見ると、それなりのダメージはあるようだ。


「いけるぞ! 生物でもゴーレムでも巨大化すれば足にかかる負担は大きいはず! ペンギンの短い脚であっても同じ、つまりお前の弱点は脚だ!」


 ジェーンが叫んだ。後ろから声が聞こえた。


「「まかせて!」」


 現役プリンセネス娘の二人、ミケとマンチカンが呪文を唱えると魔法陣が足元に広がった。ミケが魔法陣から巨大な黄金の弓を取り出し構えた。マンチカンが魔法陣から光る矢を取り出し、ミケの持つ弓にセットした。


「「これまで消滅させられた人々の恨みをその体に受けなさい! プリンセスアロー!」」


 弓から放たれた一本の矢が数百にも分離してゴーレムの左足に命中した。左ひざの装甲が吹き飛び火花が噴出した。


『ちょっと! 魔法少女変身セットにそんな機能あったっけぇ!?』


 焦るタカスィー。ゴーレムは尻もちをついた。そこにスイーツ教つながりのアンゴーラとメンクイーンが走り込んできた。シンクロしながら高く飛び上がった。


「「甘いものは皆の幸せ! プリンセスキーック!?」」


 衝撃波を放ちながら飛ぶ魔法少女。二人のキックは先程装甲を破壊された左ひざに命中した。シンクロ率×10倍の威力を発揮する恐ろしいキックである。膝は破壊されゴーレムの左ひざから下は分離した。


『ギャー! おかしい! おかしいぞ! そんな強力な攻撃をする機能は無いはずだ!』

 

 焦るタカスィー。


「いいぞ! 勝てるぞ!」


 後方で応援するヨシオ。さらに攻撃は続く。ベンガルーとタベタリーナの両手に魔法陣が浮かび上がった。ベンガルーの右手と左手には光り輝く高級そうなナイフとフォークが! そしてタベタリーナの両手にはいかにも職人が作った切れそうな包丁が握られていた。


「「大人しく料理されなさい! プリンセスレストラン!」」


 もはや意味不明! 光り輝くナイフ・フォーク・刃物がボコボコに変形したゴーレムの右足に刺さり、脚が体から分離した。もう、ゴーレムは歩けない。


『なぜー!? 馬鹿なー!?』


 地面に倒れるゴーレム。


「アカネ、準備はいいわね」


「シャム姫様! ばっちりです!」


 次の瞬間ロッソRアカネの両手から魔法陣が展開され、手のひらから勢いよく水が噴き出した。


「罪を洗い流しなさい! プリンセスウォータージェット!」


 ゴーレムの破損部分にかけられた水は回路をショートさせ被害を大きくした。シャム姫がそれを確認して呪文を唱える。魔法陣が浮かび上がり両目が青白く輝いた。


「時よ止まれ! プリンセスアブソリュートゼロ!」


 シャム姫の目から発射されたビームは、ゴーレム、地面、そしてロッソRの撒いた水を凍らせた。ヨシオがシャム姫に向けられていた冷たい瞳の強化版だ! これによりゴーレムは氷で地面に縛り付けられた。


「すごい! 皆凄い力をもっていたんだ!」


 シャム姫がヨシオの側にやってきた。


「それは違うの。このネックレス、いや宝石の力なの。この宝石が呪文と力を与えてくれたのよ。ヨシオがくれたこの婚約者のネックレスが戦い方を教えてくれたの」


 シャム姫はそう言ってヨシオの手を握った。


『くそう、そんなの設定無いはずなのに、何かがおかしい・・・しかし、動けなくなった今、残念ながら俺の負けだ』


 動けないゴーレムに乗っているタカスィーは、魔法少女に想定以上の力を感じて諦めたようだ。婚約者達は全員がヨシオの側に集まった。そして注意深く動かなくなったゴーレムを観察していた。


「勝ったか?」


 ヨシオが不用意なフラグ的な一言を口にした直後。

 

『なーんてな』


「!?」


 そんな言葉と共に巨大ゴーレムはいとも簡単に氷を破壊した。そして自ら破損した脚を切り離し、魔法陣を展開し空中でホバリングした。


『はっはっは、ゴーレムにとって足なんて飾りですな。偉い人は知っているのだ』


 足を切り離した巨大ゴーレムは俊敏に空中を飛び回った。物理法則を完全に無視した動き。魔法テクノロジーならではの挙動だ。


「まずいぞヨシオ! あの動き、速すぎる! しかも空中。攻撃を当てることさえ至難の技だ!」


 ジェーンはそう言って拳を強く握りしめた。

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