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23-33話

 今日はプリンセス娘総選挙当日。



 ◇ ◇ ◇



 キタノオンセン帝国の北の端に位置するカイザー領。前皇帝カイザーは、山中に密かに建設した地下基地に避難していた。二週間分の食料、武器、三十人の軍の精鋭も一緒だ。いつ魔王が現れても、ここにいるメンバーは生き残れるだろう。


「くっはっはっは! ついにこの時が来た。遺跡壁画の通り事が運べば魔王が現れるのは今日。そして、これから一週間、地上は地獄と化すのだ。せいぜい頑張って地上を守ってくれ勇者達よ」


 カイザー達は安全な地下から監視カメラを通して地上を観察できるよう準備を整えていた。もちろん総選挙会場にもカメラは設置されている。カイザーはワインを片手に地上が映されているモニターを眺め満足げだ。


「地上を手に入れるのは我々なのだ!」


 魔王が勇者達に撃退された後、地上を制定することを企んでいるカイザー。勇者と勇者ハーレムが疲弊している時に勇者を倒し、ハーレムを手に入れる。そうすれば地上にカイザーの敵はいなくなるだろう。



 ◇ ◇ ◇



「予想通り、王城は手薄ね」


 アンゴーラ、アクドーイそしてゴーレムのペンちゃんはハートフル・ピース王国の王城に忍び込んでいた。総選挙の日は王城の衛兵の大部分が選挙会場のコロシアムの警備にあたっている。さらに王と王妃も選挙会場にいるため、王城の警備は最小限となるのだ。


「計画通りです。しかも、本当にゴーレムがカギを解除していやがる。ダンジョンコアのゴーレムにこんな能力があるとは」


 ペンちゃんは封鎖されている扉のカギを次々と解錠している。アンゴーラ達はオモイザワ村にグレー商会の拠点を作り、この日のための準備を密かに進めていた。


「衛兵の数は少ないけど、王城ともなると守りは最高難度で強固。特定の魔力にしか反応しない扉や監視システムが各所にあり簡単には入れないのよ。でも、これらのシステムはダンジョンで発掘された遺跡を解析して造られたもの。だからダンジョンの主であるペンちゃんが解錠できるのはあたりまえよ」


 そう言いながら王城の中を進んでいくアンゴーラ。


「初めて聞きましたよ、そんなこと。ほんと、学者でさえ知らないことをあたかも当然のように。まさか大陸の東の端にあると言われている幻の国、テクノロジーと黄金の国の生まれでは・・・やっぱり怖いからお嬢が何者かは詮索はしません。命と給料の保証だけはお願いしますよ」


「それが賢明ね(まさか前世の乙女ゲームの知識、しかも私が主人公なんて信じてもらえないでしょう。しかし、この世界にも日本があるの? 場所は合っていそうだけどゲームには出てこなかったわね)」


 アクドーイは婚約者のネックレスが入ったケースを片手にアンゴーラの後を付いていく。先頭はもちろんペンちゃんだ。


「この先からはさらに警備が厳重になるわよ」


「大丈夫でしょうね? 俺は頭脳派なので戦いはからっきしですよ」


「大丈夫よ。最強のゴーレムがここにいるのだから」


「ぺぴ?」


「それもそうですな」


 アンゴーラ達は人目を忍んで城の地下へと進んでいく。



 ◇ ◇ ◇



「私にとっては昨日の事のようだけど、あれから千年経っているのね」


 モニターを見つめながら、しみじみとつぶやいたのは天井千代子(スイーツ教女神アマイ)。


「アマイちゃんは千年間寝てたからね。それより千年前からこの選挙やっていることの方が驚きだよ」


 モニターに映るプリンセス娘のコンサートを見ながらそう言ったのは筋肉好代ラブ・スジーク


「まったく平和なものですよねー 魔王がこの世に現れるなんて想像もつきませーん」


 クッキーをポリポリと食べながら紅茶を飲んでいるロリータは無限野婆さんの記憶を引き継いでいるガリペラ(アラサー)。


 この三人はヨシオと共にこの世界に来た。というか、ヨシオの転移に巻き込まれて転移・転生してきた被害者だ。三人は最近スジークの作ったマッチョな男しか従業員にいない旅館、通称マッチョランドで楽しく過ごしていた。


 スジークはこれまで双子の姉でありキタノオンセン帝国の女帝ラブ・メグの影武者となり、政権交代後の不安定な帝国を支えてきた。その後、帝国は安定し始め、さらに最近はヨシオの活躍もあり各国とも経済状態が良くなった。これを機にスジークは夢を実現すべくマッチョランドを作ったのだった。


 一方のアマイちゃんは眠りから覚めた後は教会と信者に熱烈に歓迎されていた。だがあまりにも熱狂的信者達シスターが過保護なため、教会から外に出ることができなかった。嫌気が差してこっそりと抜け出し、マッチョランドでかくまってもらっている状態だ。


 そしてガリペラは第二の人生のお礼としてこの世界に貢献しようと考えた。キタノオンセン帝国では敵役を演じ反乱分子の炙り出しに協力することでこの世界の安定に貢献した。一通りの任務が完了してやることも無くなったので、マッチョランドに遊びに来た。それ以来、居候している。


「この異世界も楽しかったけど、そろそろ潮時よね。飽きて来たわ。それに定期的に魔王降臨とか怖すぎ」


 スジークがそう言うとアマイちゃんが頷いた。


「私もちやほやされるのは慣れたけど、女神は自由が無さすぎでダメ。マッチョランドに匿ってもらうにも限界があるわ。居場所がバレる前に日本に帰り、新作スイーツ食べたいわ」


 アマイちゃんは背伸びをしながらそう言った。


「二人は日本に帰れたら嬉しいでしょうけど、私はお断りですー だってまたお婆ちゃんになるもの」


 ガリペラはそう言って椅子から立ち上がり、腰を曲げて婆さんのふりをした。スジークとアマイちゃんはそれを見て笑った。


「嫌ならここに残ればいいわよ。この世界もそこまで悪くは無いし。無限野さんの料理が食べられないのは残念だけどしかたないわね」 


 スジークは残念そうにそう言った。するとアマイちゃんが甘い香りのする紙袋を持ち出してきた。


「さあ、私達はもうしばらくこの異世界を堪能しましょう。イチゴシュー買ってきたから皆で食べよ!」


「「やったー」」


 異世界を満喫する三人であった。



 ◇ ◇ ◇



「凄い迫力!」


 目をキラキラさせてペンライトを振るヨシオ。貴賓席で総選挙前のプリンセス娘のパフォーマンスを楽しんでいる。もちろん、周囲には九人のハーレムメンバーもいる。


「プレッシャー無くパフォーマンス楽しめるわ。新鮮な気分だわ」


 清々しい顔でコンサート会場を見つめているシャム姫。


「しかし、良いポジションもらっているのに、あの白塗りの女は下手だな。シスターペルシャ? 新人かな」


 怪訝な顔をするジェーン。今日はさすがにマイクロビキニではなく普通のドレスだ。


「その後ろにいる白塗りも下手だよねー あの娘ー最近昇格した人かな」


 白塗り女が気になるJSマンチカン。


「さらにその後ろにいる白塗りも目立って下手ですね。誰かの代理ポジかな」


 そう指摘するのはミケ。


「大変申し訳ありません。後ろにいる白塗り二人は元私の後輩ですわ。実力が付いていないから無理だと思っていたのに最近急に昇格しましたの」


 申し訳なさそうにそう言ったのは元ジャガ男爵家のベンガルー。


「確かに言われてみると周りの人達とすこしズレているけど、普通は気にならないレベルよ。プロの目は厳しいですね」


 聖女メンクイーンは申し訳なさそうなベンガルーに気を使って言った。


「でも、あれくらいなら私の方がうまく踊れるヨー」


 ラグドールは踊ったことも無いのに自信だけはあるようだ。


「きっと選挙順位が気になっているのよ」


 王と王妃の実子ロッソRはそう言った。


「お腹が空いているに違いない」


 王城の料理長タベタリーナの分析である。


 皆、なんだかんだ言いながらも総選挙を楽しんでいた。

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