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23-22話

「た、助けて下さい・・・」


 カゴの中には拘束されたアンゴーラが居た。ペンちゃんを追いかけているうちに捕まったのだろう。婚約者がこんな形で全員集合するとは。


「目的は何だ! 俺をエサに婚約者達を集めたのはどんな理由だ」


 ジャー少佐とクララに話しかけて少しでも情報を引き出すことによう。


「話が早くて助かる。これを全てこちらによこして欲しいのだ」


 そう言ってジャー少佐が見せたのはグリーンダイヤの付いたネックレス。


「そ、それはアンゴーラの持っていた婚約者のネックレス!」


 アンゴーラが変身すればあの程度の檻からは簡単に逃げ出すことができるはずなのに。何らかの理由で変身する前にネックレスを奪われたようだ。


「これはテハニー&GO!社が製造した希少なアクセサリーだ。これまで数十シリーズしか見つかっていない。この会社が製造したジュエリーはその精密なデザインと使われている希少石のせいで一シリーズ揃えると一国が買えると言われるほどの価値がある。一シリーズは数個で構成されている場合もあれば、数百個の場合もある。数百個の物は一つ一が小さいのでそれだけでは大きな価値は望めないが集めることで価値が上がる。それに比べ、ここにあるものは単体でも立派で素晴らしく価値がある」


 この世界にあるテハニー&GO!のジュエリーは遺跡の中でまれに発見される希少なものだ。お店では売っていないし作られてもいない。この世界に無い素材や鉱石が使われているため同等品も作ることができない。その希少性ゆえ各国の貴族や王族がこぞって手に入れようとしている。


「つまり、婚約者のネックレスとアンゴーラを交換しようということか。それならもういいだろ。そのネックレスはお前が持っていればいい。だからアンゴーラを解放しろ」


 高価とは言え、たかがジュエリーだ。命には代えられない。


「理解が早くて助かる。その通りだ。実は魔王なんてどこにもいない。魔王軍七天王だって急遽作った傭兵軍団にすぎない。俺たちの目的は最初から君の言う婚約者のネックレス、テハニー&GO!なのだよ。全てのネックレスをこちらによこしたまえ。檻の中に囚われた婚約者と、ここにいる婚約者全員の命と引き換えだ」


 周囲から二回り大きいペンギン型ゴーレムが集まってきて俺達を囲んだ。シャム姫が魔動携帯で検索している。


「あれは最強のゴーレム、ジーヤン・プラチナ型! なんと28コア! 今までのゴーレムとは比べ物にならない強さと書いてあるわ」


 ジェーンが魔法少女に変身し、一体のジーヤン・プラチナ型ゴーレムに奇襲攻撃を仕掛けた。ジェーンの蹴りがゴーレムの顔に綺麗ヒットした。しかし、表面で魔法的な何かが発生しジェーンは跳ね返された。ゴーレムには傷一つついていない。


「まさかTAフィールド!」


 ジェーンが自分の膝をさすっている。


「わかっただろう。そこに居る婚約者達を大切に思うならテハニー&GO!を差し出したまえ」


 それを聞いてラグドールが前に出た。


「いや、まだですよー 大きなゴーレムは小回りが利かないはずでーす。ここで活躍してダーリンからボーナスをもらうのよーーーー!!!!!」


 今度はラグドールが魔法少女に変身してジーヤン・プラチナ型ゴーレムに攻撃を仕掛けた。狙うは足元だ。なるほど、いくらゴーレムといえど物理法則には逆らえない。つまり大きくて重いゴーレムは、小さくて軽いラグドールのように速くは動けない。隙が生まれるかもしれない。


 しかしラグドールの攻撃は新たに現れた数百の小型ゴーレムの組織的防御によって無効にされた。


「うそー! また新しいゴーレム! 今度は小さいのが沢山いるし」


 シャム姫が検索した。


「あれはアーモ型ゴーレム! 一つ一つはそんなに強くないけど並列連携機能で驚異的な強さを見せると書いてある。その技術は最近のスパコンにも使われているらしいわ」


 ジャー少佐とクララが楽しそうに笑っている。


「どうだい、気が済んだだろ。どうやっても君達はこのゴーレム達に勝てない。ここにいるゴーレムは婚約者の彼女達が戦ってきたものとは格が違うのだよ。まあ、意図的に弱いゴーレムと戦わせてここまで来てもらったのだけどね」


 ジェーンもラグドールも首を振っている。このエルフの二人が勝てないのならば、他の婚約者にはなおさら無理だろう。


「しかたありません。婚約者のネックレスを渡しましょう」


 シャム姫の指示に従い、皆はネックレスを首から外した。


「決まったようだな。俺は嘘はつかない。全員分、七つのジュエリーをまとめて地面に置き、後ろに下がれ。そうすれば全員無事に地上に帰してやろう」


 言われた通りネックレスを置き、後退した。クララが檻からアンゴーラを出して拘束具を外し、こちらに連れて来た。


「ほらよ」


 クララはアンゴーラを無造作に俺達に向かって放り投げた。


「「「「「うぎゃー 重いー」」」」」


 最近巨漢となったアンゴーラを婚約者全員でなんとか受け止めた。


「ぶえーん! 私のせいで・・・でもありがとう、みんなありがとう」


「あんた最近太りすぎ」「元気でよかった」「鼻水ふけ」「帰ろうよー」「風呂入りたい」「眠い」


 色々と言われているアンゴーラは鼻水をたらしながら皆にお礼を言っている。元はと言えば、俺の持っていた妖〇ウオッチ的なおもちゃが盗まれたのが原因なので、彼女も被害者なのだ。


 クララはその間にネックレスを持ってジャー少佐の下へと戻っていった。ジャー少佐は宝石を受け取り満足そうだ。


「素晴らしい! 素晴らしい輝きだ! さすがテハニー&GO!社製だ! しかも同じシリーズが八個も揃ったぞ! 残りはあと二つ、なんとしても集めてコンプリートしたいものだ」


 あと二つ、つまり十個あるというのか?


「どういうことだ。なぜ十個あると知っているのだ」


 ジャー少佐は微笑んだ。


「勇者なのにそんな事も知らないのか? まあ異世界人とはいえ所詮人間だな。俺達エルフは人間の十倍以上生きることができる。つまり人間達をはるかに超える正確な情報を持つことができるのだよ。エルフの王族が管理している予言書もその一つだ」


 ジェーンが怒りをこめて言った。


「ジャー少佐! お前が私と婚約したがっていたのは王族が管理している禁書を手に入れるためだな」


 ジャー少佐は笑顔で答えた。


「その通りだ。まあ禁書の管理を任されている何も知らない馬鹿女どもを利用したから君はもう必要ないけどね。話をもどそう。人間達は忘れているようだが、この物語は何度も繰り返されている。そう魔王は何度もこの世界に生まれている。そしてその度に勇者が召喚され勇者ハーレムとともに戦う。テハニー&GO!のジュエリーもその度に生まれるのだよ。ハーレムにいる婚約者数がシリーズを構成するジュエリーの数。そしてジュエリーのデザインは時代ごとに毎回異なる。だからテハニー&GO!は貴重なのだ。今度の魔王は十人の勇者ハーレムと戦うことが予言されている。だからジュエリーも十個あるはずなのだよ」


 テハニー&GO! は奴の手に渡った。しかし魔王が居なければあれは単なるジュエリーに過ぎない。無くてもかまわないのだが。


「魔王は生まれるのか?」


「この世界では科学技術・魔法技術が発達しすぎると魔王が現れ全てを無に帰そうとする。理由は不明だが、歴史を振り返ればそのうち生まれる、あるいはすでに居るのは確かだろう。そしてこれまで通りなら勇者とその婚約者が魔王を退治すると同時に世界はほぼ滅亡する。その後、生き残った勇者ハーレムと、運よく難を逃れた少数の人達を元にこの世界は再生を始めるのだよ。それを何千年、何万年の間に何度も繰り返しているのだ」


 つまりこの世界にあるテハニー&GO! は過去に存在した婚約者達のために勇者が召喚したものだ。


「エルフの王族が禁書庫に隠していた勇者の秘密を俺は見つけ出したのだよ。そして魔王が現れる前にジュエリーを集めることを思いついた。ジュエリーさえあれば魔王は倒せるはずだ。魔王が現れれば俺のガールフレンドが変身して戦えばいいからね。世界が滅亡しても俺と俺のガールフレンドは生き残るのだよ。そして俺がこの世界を再生するのだ。素敵なシナリオだろ。これは禁書の一部をコピーしたものだ。記念に君にあげよう。もう数年でこの世界は滅亡するけどね」


 ゴーレムが紙を持ってきてくれた。そこには、俺そっくりな勇者が魔王と戦っているイラストが描かれていた。これ多分、攻略本・・・

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