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23-21話

 現婚約者7人、さらにベンガルーが加わったことで婚約者が8人になった。ほぼ全員がアイドルまたはアイドル級の美少女である。これがゲームシナリオの強制力なのだろうか。お金もあるし美少女もいるし、これでエンディングになり勇者は生涯幸せに暮らしましたとさ、となればどんなに素晴らしい事か。


 美少女婚約者軍団の中で唯一の例外がオモイザワ村村長アンゴーラだ。出会った頃は普通の顔、普通の体型で普通こそ最高と俺に思わせたアンゴーラだったが、最近は体重が増えだんだん力士のようになってきている。これはこれで特定の層には人気なのかもしれない。ただ彼女もヒロインの一人なので、今後何らかのイベントが起こり超絶美少女になる可能性もある。楽しみにしておこう。


 そのアンゴーラは、ゴーレムのペンちゃんに奪われた俺の時計のおもちゃを取り返すべく下の階にいるはずだ。その時計のおもちゃはラブ・メグを通してラブ・スジーク(筋肉好代)から身に着けておくよう渡されたものだ。地球では妖〇ウオッチとして子供達に人気の玩具だったものに似ており、この異世界には無いものだ。だが、美術的価値は無さそうだしこれといって役にも立っていない。それ自体に価値が無いならば、イベントを進めるためのキーアイテムなのだろうか。


 そんな事を考えながらアンゴーラ以外の婚約者7人と俺は最下層である七階に向かっている。アンゴーラを見つけ出し、魔王軍に少しでもダメージを与えるためだ。なおベンガルーの取り巻きだったスコティッシュフォールドとアメショは地上に行くということで別行動となった。地上行きの関係者専用エレベーターがあるらしい。


 道案内のベンガルーを先頭に地下道を進んでいる。ジェーンが俺に話しかけた。


「ヨシオ、おかしいとは思わないか?」


「ん? 何か問題がありましたか?」


「問題というか、逆に問題が無さすぎるのが問題だ。これまで地下一階から順次攻略してきたが、ゴーレムもボスもあまりにも弱い。本当に我々を倒すつもりなのか疑問に感じているのだ」


 ジェーンがベンガルーの方を見た。ベンガルーが首をかしげながら答えた。


「私以外のボスがそれほど強くなかったとお聞きしてびっくりしていますの。私はお金で雇われ、ボス部屋侵入者と戦うということしか知らされていませんでしたから。他の階層のボスとは会ったことはありますが、私自身が借金奴隷のような扱いでしたので重要なことは聞かされていませんわ」


 魔王軍七天王の一人だったにもかかわらずベンガルーにはあまり情報を与えていなかったようだ。


 このダンジョンで婚約者達が戦っているところは見ていないが、戦いの素人であるシャム姫、聖女メンクイーン、JSマンチカンが無事にこの階層まで来られているということは攻略難易度は低いと言えるだろう。わざわざ俺をさらって、それをエサに婚約者達を呼び寄せた割に敵が弱すぎるのは奇妙だ。


 しかしすでに地下六階だ。七階に強い敵がいるのか、あるいは足止めの為にダンジョンに呼び込んだのか。何が待ち構えているかわからないが、地下七階に行く以外の選択肢は無い。行けば分かるだろう。


 地下七階行きのエレベーター乗り場に到着した。道案内をしていたベンガルーが振り向いた。


「ここから、このエレベーターで地下七階に下ります」


「この地下六階層にはボス部屋は無いのですか?」


 シャム姫がベンガルーに質問した。


「裏道を通りボス部屋をショートカットしました。ですが、この階はクララがボスのはず。肝心のクララは地下七階に行ったのでこの階に居ないでしょう。まあボス部屋を通ったとしても、居るのは弱いゴーレムだけなので、皆さんの強さなら問題なかったでしょうけど」


 エレベータの扉が開いた。全員が乗り込みエレベーターは下降を始めた。そして地下七階に到着。エレベーターが設置されているのは地下七階と六階を繋ぐ高層ビルの内部。ちなみに俺がここを利用するのは三度目。さらわれてきたとき、そこから逃げた時、そして現在だ。エレベーターを出て建物の外に出た。


「ほおお」


「見たことも無いデザインです」


「異世界に迷い込んだかのようだ」


 婚約者達は驚いている。俺にとっては何の変哲もない見慣れた街並み。婚約者達にとっては異世界の景色。地下七階は地球の都市によく似た街並みとなっている。ただし人はいない。


 ベンガルーの案内の元、街並みの中を俺が囚われていた建物の方に向かって歩き始めた。突如、ジェーンが小声で皆に注意を与えた。


「囲まれているぞ」


 ジェーンの声にベンガルーが歩みを止めた。しばらくすると、ジェーンの言う通り、周囲からペンギン型ゴーレムが現れた。ゴーレム達は一定の距離を保つようにして俺達を包囲した。まさか、ベンガルーが裏切って俺達を罠にはめたのか!?


 正面に大型のペンギン型ゴーレムが現れた。


「やあ、久しぶり。約束通り最下層にきてくれたようだな」


「さっきぶりだね」


 そのゴーレムの後ろから現れたのはジャー少佐とサキュバスのクララ。


「勇者ヨシオが逃げ出し、さらにベンガルーが裏切ったのは予定外だったな。まあいい。こちらには切り札がある」


 クララの後ろから鉄格子のカゴが運ばれてきた。


「ま、まさか!」


「た、助けて下さい・・・」


 カゴの中には拘束されたアンゴーラが居た。

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