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23-20話

「信じられない! また増やすなんて」


「やはり目を離したすきに増やしたか」


「その綺麗な人は誰、誰なのですか?」


「遺産の分け前が減るし!」


「生前分与も計算し直しですー」


「婚約者許認可制度を作るべきですわ」


 シャム姫、ダークエルフのジェーン、亡国の姫ミケ、エルフのラグドール、JSマンチカン、聖女メンクイーンの六人がヨシオとベンガルーを取り囲んで口々に意見を述べた。


「ほんと見境ない奴だ。ついでに私とも婚約しろ」


「「「「「「絶対ダメだから」」」」」」


 便乗して婚約者に名乗りを上げたサキュバスのクララの提案は婚約者達の全員一致の拒否によって不可となった。


「酷いじゃないか! ヨシオがOKならOKだろ!」


「ゴメンなさい。他をあたって下さい」


 俺も拒否した。これ以上婚約者が増えると命の危険が。いや、そもそもベンガルーが勘違いしているだけで増やすつもりは無かったのだが。でも今更、言い出せない。


「なぜだい! 私のどこが不満なのだ! ほら、よーく見てごらん」


 クララはスク水を着た樽体型を俺に見せつけた。そんな自慢気に見せつけられても、中年おばさんの、しかもだらしないバディは見たくないのだが。もちろん顔も好みじゃないし。


「なぜと言われても・・・周りを見たらわかるだろ。ここにいる婚約者達を」


 クララは周囲を見渡して考え込んだ後、納得して頷いた。どうやら分かってもらえたようだ。


「なるほど、あたしの顔と豊満ボディは気に入っているけど、このしゃべり方が気に入らないのだね。しかたないね。それは、おいおい直すことにするよ」


「違うから! コンプライアンスがどうたらとかうるさい事を言う人がいるから言いたくないけど、俺の婚約者にブタっぽくて不細工なお前みたいなやつは居ないから!」


 はっきりと言ってやった。


「ガーーーん! でも、そんな! おかしいじゃないか! ここに居るのは確かに皆芸能人レベルだけど一人だけブタで不細工がいたじゃないか!」


「それはアンゴーラのことか!」


「「「「「「それ間接的に認めちゃっているから」」」」」」


 婚約者達がハモった。


 確かに流れで婚約したもののアンゴーラだけちょっと種類が違うな。普通というか、ここに居る婚約者達と比較するとはっきり言ってブスだし最近特にデブだし。ここが乙女ゲームの世界ならヒロイン候補だからあり得ない人選だろうけど、しかしニシノリゾート共和国建国王の子孫だし。ていうかアンゴーラは俺を助けた後、ペンちゃんが持ち逃げした腕時計型おもちゃを取り返しに行ったままだった。無事だろうか。


「こうなったら本人から婚約者になる秘訣を直接聞きだしてやるから、それまで待ってな!」


 そう言って、側にいたスコティッシュフォールドとアメショを婚約者達に向かって放り投げた。


「「ぎひゃぁぁああああーーー」」


 サキュバスってこんに怪力な設定だったっけ。くるくると回転しながら飛んでくる二人を、ジェーンとラグドールが受け止めた。


 その間にクララは居なくなっていた。


「土地勘の無いこの場所で追う必要はない。どうせあと一階層だ。皆で協力して道を探して下の第七階層を目指そう。すぐにまた会える。アンゴーラを探し出し、今度はあいつをギットンギットンにしてやる」


 ジェーンがそう言うと、ベンガルーが手を挙げた。


「私が道を知っています。皆さまを案内できますわ」


「そうか。なら話は早い、早速案内して・・・「ちょっと待ったぁ!」」


 シャム姫が手を挙げた。いつから挙手制になった。


「そもそもあなたは誰ですか!? 貴族のようですが見たこと無い顔です」


 ベンガルーは唖然とし、気を取り直し話し始めた。


「えっと、ベンガルーです」


「え、あのベンガルー?」


 シャム姫が首を傾げた。


「上の階層ではお世話になりましたわ。っていうか、私もプリンセス娘のメンバーなのですが。そうですよね、センターともなると下位のメンバーの顔なんていちいち覚えてもいませんわよね」


「・・・」


 今度はシャム姫の目が点になっている。


「ベンガルーってあのパーティーピープルの!?」


「いやこんな美人じゃなかったし。もっと厚塗りの」


「そういえば何となく面影が」


「別人でしょ。ドリルじゃないし。でも髪色が一緒かも」


「そもそもこんな優し気な顔じゃないし」


「そうそう、もっと邪悪な感じでしたわ。いまの清らかさとは全く違う印象でしたわ」


 本人そっちのけで婚約者会議が開催されている。答えが出そうになかったので、俺が彼女の置かれていた立場や状況などを説明した。


「つまり元凶は取り巻きの二人なのね」


「「はい・・・」」


 シャム姫が元取り巻きのスコティッシュフォールドとアメショを前に直接確認したところ、二人はこれまでベンガルーを脅していたこと、他もろもろの悪事を詳細に吐き出しベンガルーの無実を認めた。これによって、逆にベンガルーが被害者だったことが皆の知り得ることとなった。ベンガルーは胸をなでおろした。


「とはいえ、これまで私が行ったことで被害を受けた人達もいます。これに関しては今後、誠心誠意対応させて頂きます。皆さま、本当に申し訳ありませんでした。ところでヨシオ様の婚約者は変身グッズをお持ちと聞いたのですが」


 その瞬間、俺の手にテハニー&GO! の見慣れたエメラルドグリーンの革袋が転送されてきた。バーコードリーダーさんにも新婚約者として認められたようだ。しかし、虹の七色で終わりと思ったのだが、今度は何色だろうか。


「どうぞ、これを」


 革袋をベンガルーに渡した。ベンガルーは革袋を開け、中からネックレスを取り出した。


「綺麗!」


 現れたのは半透明の黒いダイヤモンド、ブラックダイヤモンド付きのネックレスだった。黒いのに光を反射してキラキラと輝いている不思議な感じだ。ベンガルーはネックレスを首にかけ、頬を紅潮させうっとりと宝石を見ている。周りの婚約者達も”仕方ないなぁ”って感じで、その様子を微笑ましく見ている。


「聞いて下さい! 実は私達もベンガルーさんを脅したくて脅した訳では無いのです」


「私達の家族もグレー商会に職場を奪われたのです。借金を背負わされてしかたなくグレー商会の言いなりになるしか無くて」


 スコティッシュフォールドとアメショはここぞとばかり、自分達の事を語った。よくよく考えると一般市民の彼女達が貴族だったベンガルーに簡単に大金を貸せるわけがない。それらも含め、ジャガ男爵家を乗っ取るためグレー商会が画策したことなのだろう。


「ほんと、これまでゴメンなさい!」


「申し訳ありませんでした」


 二人は泣きながらベンガルーに謝った。


「あなた達もグレー商会の悪事に巻き込まれた被害者ですわ。ジャガ男爵家に責任の一端もあります。もう少しうまく統治できていれば。もう少し早くヨシオ様に会えていれば良かったのかもしれません。悔やんでも悔やみきれませんが、まずは二人の実家の方をなんとかすることが先決ですわ」


 三人は泣きながら俺を見た。婚約者の六人もあきらめたような目で俺を見た。


「大丈夫! スコティッシュフォールドとアメショの実家も助けてあげるから。お金のことなら心配しなくていいから」


 金で解決できることは、全て金で解決する主義ですから。


「「ありがとうございます!!」」


 二人は抱き合ってぴょんぴょん跳ね、そして俺の前に来てひざまづいた。


「この御恩をお返しするため、私はヨシオ様の従者として働くことにいたします」


 スコティッシュフォールドがそう言って俺に同意を求めてきた。


「ならば私はメイドとなり一生かけて恩返しさせて頂きます」


 アメショがなぜかライバル意識を隠さずそう言った。一生とか重いから。


「じゃあ、私は従者ではなくヨシオ様だけの専用メイドとなり日夜ご奉仕することにいたします」


 スコティッシュフォールドも負けじと言った。日夜って何するつもり?


「なら私は奴隷として一生をヨシオ様にささげます」


「じゃあ私はヨシオ様専用奴隷となりヨシオ様から1メートル以上離れません」


「それは迷惑よ! 離れなさいよ!」


「あなたこそ遠慮しなさいよ!」


 さっきまで抱き合って喜びを分かち合っていた二人が険悪な雰囲気に。それもこれも俺がモテすぎるせいなのか。モテる男というのもツライものだ。


「そこまでにしなさい。もう満足でしょ。あなた達は婚約者として認められなかったようですわ」


「「はーい」」


 二人はあっけらかんとした様子で俺の前を離れた。どうやらスコティッシュフォールドとアメショは婚約者の座を狙って行動していたようだ。万が一、バーコードリーダーさんが認めればめっけものって感じなのか。


 モテる男とはいったい何だろうかと、一人自問自答するヨシオであった。

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