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23-16話

地下四階


 地下四階は洞窟のダンジョン。ボス部屋まで一本の長い道。途中、雷伝三、雷伝五、雷伝七というこれまでと傾向の異なるペンギン型ゴーレムが出現したが、”黒い三年生”よりも弱かったためジェーンが軽く蹴散らし難なくボス部屋に到着した。


 そして地下四階ボス部屋。


「ぐへっへっへ、本物のマンチカンたんと会えるなんて、魔王七天王に応募してよかったでふ」


「またあなたなの!? いい加減にしてください! くらえ! ダブルラリアット!」


「ぐはぁ 幸せ・・・(ガク、バタ)」


 変態男は壁に叩きつけられ気絶した。その後ゴーレムに運ばれていった。


 地下四階のボスはマンチカンのストーカー男。小学生マンチカンの通学写真を盗撮することを生き甲斐にしている変態男。これまでも通報され何度も捕まっている。


 JSマンチカンと聖女メンクイーンのラリアットでKO。


地下五階


 地下五階は森のダンジョン。ジェーンはダークエルフであり海の民だが、森の民であるエルフの特性も受け継いでいる。そのためサクサクと攻略していった。出現したゴーレムは愛九と雷伝九という高性能ペンギン型ゴーレムであったがジェーンによりあっさりと破壊された。森の中のエルフは最強である。ボス部屋も難なく見つけることができた。


 そして地下五階ボス部屋。


「待っていたわ! この偽聖女め! くらいなさい『魅了!』」


「そんなもの効きませんわよ。婚約者のネックレスがありますもの。くらえ! ダブルラリアット!」


「ぎゃぁ!」


 ピンク髪小動物系のいかにもヒロイン顔の少女は、ラリアットで吹き飛ばされ後方に回転しながら床に顔を打ち付け気を失った。そして上の階と同様、どこからともなく現れたゴーレムに運ばれていった。


 地下五階のボスは聖女メンクイーンのライバルを自称するピンク髪の少女。貧民街出身の庶民派巫女としてスイーツ教内で独自派閥を形成していた。もちろん魅了の魔道具で洗脳して派閥を形成していたのだが。その勢いでメンクイーンを追い落とし聖女の座を狙ったのだが、なぜかメンクイーンの人気が高く(メンクイーンの事務処理能力は異常に高いので雑務を任せるのに便利だった)上手くいかなかった。結局、魔王側に寝返ったようだ。


 魅了が効かなければ単なる少女。JSマンチカンと聖女メンクイーンのラリアットでKO。そして地下六階に続く扉をくぐるジェーン、シャム姫、マンチカン、メンクイーン。


「ほほう」


「これはこれは」


「いいかもー」


「ダンジョンにこんな場所があるなんて」


 地下六階はスパリゾートと呼ぶ方が適切なのかもしれない。炭酸風呂、ゆず風呂、濁り湯、塩風呂、泥風呂・・・各種露天風呂の階層であった。四人は各風呂に近づいては湯加減や毒などを確認したが、単純にいい湯加減の温泉でしかなかった。


「本当に普通の温泉のようだ。ゴーレムもいないし毒も無いようだ。ここでくつろげということか。よっぽど我々の足止めをしたいようだな」


 時間稼ぎをするための罠とも思えるが、一方で非常に魅力的な温泉群。無視するか、それともひとっ風呂浴びるか、皆の心は揺れていた。


「やっほー!」


「ダーリンはまだ見つからないのー?」


 シャム姫達の後ろから扉をくぐって現れたのは合流が遅れていたヨシオの婚約者である二人、ラグドールとミケ。


「遅かったな」


 ジェーンがラグドールとミケに言った。


「砂嵐が思いのほか治まらず、なかなか渡れなくて苦労しました。けど、やっと追いつきました」


「ダンジョンに入ってから追いつくのにそう時間はかからなかったよ。ボスがすでに倒されていたし、ボス部屋への入口もすぐに見つかるよう印をつけてくれていたから楽だったよ。それより、汗だくだよー 温泉入ろうよー」


 皆がシャム姫を見た。


「それでは、ここで少し休んでいくことにしましょう」


「「「「「「やったー!」」」」」」



 ◇ ◇ ◇



「あいつらめちゃくちゃ元気じゃん! 少しくらいあなた達が弱らせていれば私の魅了の魔道具だって効いたのに。ほんと役立たずね」


「ほんと揃いも揃って。だからパーティーピープルはダメだって言ったのに。ジャー少佐の無理強いには困ったもんだ」


 四階ボスのキモ男と五階ボスのピンク髪の少女が文句を言っている相手は、三階ボスのベンガルーと二階ボスのキッコリー。ここはダンジョン六階にある魔王七天王の部屋である。負けた責任の擦り付け合いをしているようだ。


 四階ボスのキモ男と五階ボスのピンク髪の少女はその後言いたいことを言い、怒りながら部屋を出て行った。しかし室内ではまだゴタゴタが続いていた。


「ゴーレムを使えばヨシオの婚約者達を捕獲できるって言ったよね。僕との婚約を破棄したラグドールに復讐ができると思ったから協力したのに全然ダメじゃん。あーあ、魔王軍になんて入るんじゃなかったなぁ」


 キッコリーはそう言いながら部屋を出て行った。


「だって、まさか変身できるなんて。しかも、あんなに強いなんて知らなかったし・・・」


 部屋に残されたベンガルーがつぶやいた。ジャー少佐に命令されキッコリーを魔王軍に引き入れたのはベンガルーだった。


「ほんと、私達も迷惑しているのよ」


「悪役令嬢のくせに。きちんと任務を全うしてほしいものですね」


 ベンガルーを責めているのは取り巻きのスコティッシュフォールドとアメショである。実はこの二人はベンガルーに無理強いされていることを装いながら、この二人がベンガルーを陰で操っていたのだ。


「ほんと落ち目の貴族って嫌よね」


「プライドばかり高くて役立たずだわ」


 スコティッシュフォールドとアメショの親は悪徳商会であるグレー商会の幹部である。一方、ベンガルーはかつてジャガ男爵と呼ばれていた貴族の子女である。アクドーイ商会に多額の借金をしているためベンガルーはこの二人の命令を無視できない。


「おとうさまに言って借金の取りたてをしてもらおうかしら」


「そんな! 命令通りプリンセス娘の研究生にしてあげたじゃない」


「それだけじゃ駄目よ。もっとあんたが悪役にならないと。私達が性格の悪い先輩に振り回される可哀そうな後輩を演じられないでしょ」


「そうよ。馬鹿なオタク達はそういう可哀そうなメンバーを応援するのが好きなんだから。でもそろそろこの女は潮時かしら。次の寄生先を見つけなきゃいけないかも」


 そう言いながら、スコティッシュフォールドとアメショは部屋を出た。


「はぁ、どうしてこんなことに。真面目に頑張ってきたんだけどなぁ」


 落ち目の貴族は真面目であればあるほど周囲に利用され落ちぶれるだけなのだ。疲れ果てたベンガルーはミニスカートのまま誰もいない控室の床で大の字になった。ほどなくして近くで「パタン」と音がした。


「あれ? ここどこ? あ、どこかで見たような。だれだっけ? えっと、とりあえずコンニチワ」


 声のする方をベンガルーが見ると丁度ベンガルーの股間あたりにある床のタイルが開いて中からヨシオが顔をのぞかせていたのだった。


「キャー! 変態!」

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