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23-14話

「私こそが魔王七天王 人形使いの乙女ベンガルーですわ。プリンセス娘元センターの痴女、現センターのすぐ怒るツンデレ頑固女、序列三位の守銭奴のガキ、同じくカネにがめつい聖女、覚悟しなさい。あなた達を倒してついでに私がプリンセス娘の次期センターを頂きますわ。おほほほほ」


 ベンガルーは取り出した扇子を口に当て高笑いしている。


「誰が乙女だ! 誰が痴女だ! 少なくともこの海辺の階層でビキニアーマーは普通だ!」


 ジェーンは胸をはってそう言った。ビキニアーマーが海辺以外では普通でないことは認識しているようだ。となりではシャム姫が怒っていた。


「はぁ!? すぐ怒るツンデレ頑固女って私のこと? そんなわけないでしょ! 私は後輩にも慕われている優しく素敵な正統派プリンセスなのよ! ねえ!?」


 シャム姫は仲間に同意を求めたが、皆目をそらした。リーダーとして行動規範に厳しく、間違ったことは許さないシャム姫。日ごろから周囲に冷気を放ったり(雰囲気的に)、コンサート前後では気分が高まりツンデレになったりと、感情の起伏が激しいことを本人は自覚していないようだ。


「そ、それよりも守銭奴って何ですかー! マンチカンちゃんは世界の全てのお兄ちゃんたちの妹なのにー、純真無垢なニーハイの似合う妹なのにー こうなったら最下層のダンジョンコア奪ってオークションで高値で売りさばいてやるんだから!」


 素直に悪意を表現するマンチカン。さすが小学生である。


「私に対してカネにがめつい聖女なんてひどいですわ! 聖女に祭り上げられた私が教会運営のため日々どれだけ苦労しているのか知らないのでしょう。夜な夜な楽しくパーティーしているピープルのくせにうらやま・・・こうなったらスイーツ教教会を通じて世界中の魔王軍の拠点や協力者を探し出し財産を根こそぎ頂いていくから! 少なくともあなた達の家族は見つけ次第相当額のご寄付を頂くから。もらうまで地の果てまで追い立ててやるから! 覚えていなさいよ邪教徒!」


 権力を持っているわりに贅沢が規制されている聖女メンクイーンが最も怒っている。もちろん個人的な妬みである。ベンガルー達三人は震えあがった。


 ジェーンが何かを思い出したようだ。


「そういえば私がヨシオと一緒にエルフ国に行く途中でホテルに押しかけて来たのはお前達だったな。しかも、その後で冒険者が襲撃してきたのだが、それもお前の差し金だろう。そんなにヨシオの婚約者になりたいなら身を清めて正当な手順で申し込めば良いものを。まあ、そうであってもパーティーピープルのお前が仲間になると風紀が乱れるからお断りだがな。ちなみにこのジェーン様はヨシオと初めて出逢った日に婚約したぞ。こればかりは女子力の違いかもな。ふふん」


 ジェーンがマウントを取りに来た。


「むきー! あの時はせっかく私がヨシオと婚約して差し上げようと言ったのに、断るなんてほんと失礼ですわ。思わずパーティー仲間の冒険者達を送り込んでしまいましたわ。あの冒険者達、いざという時のために仲良くしてあげたのに、エルフ二人ごときに負けるなんてほんと役立たずでしたわ。でも、魔王軍の七天王にもなったし新たな金づるも見つけたことですし、もうヨシオなど不要ですの。財産を搾り取って捨ててやるわ。あなた達もここで終わりよ。スコとアメショ、行きなさい!」


 ベンガルーの指示と共に、スコティッシュフォールドとアメショのチョーカーが光り、シャム姫達に向かって襲いかかってきた。


「やめな! 研究生が私達上位メンバーに勝てるわけないだろ」


 アイドルは有名になるほどトラブルに巻き込まれやすい。そのため、この世界のアイドルはダンスを習うと同時にダンスを利用した戦闘方法も教わるのだ。つまり上位のメンバーほど強いのである。


 ジェーンが攻撃をやめさせようとしているが、二人は効く耳を持たない。剣を持ち出して振り回しながら近づいてきた。ジェーンは戦いを意識し拳に力を込めた。


「ジェーン、彼女達を傷つけないで! 彼女達はまだ研究生で悪い噂も聞いたことがない大人しいメンバーよ。それがこんなにも好戦的なんて・・・なんだかおかしいと思うの」


 シャム姫がジェーンに言った。確かに、研究生二人の動きはぎこちない。


「そうかもしれないが、奴らは刃物を持っているぞ」


 ジェーンも戦うかどうか決めかねているようだ。


「時間を稼いでくださいませんか。その間に私達があの邪教徒のババアを倒しますわ」


 そう言って聖女メンクイーンとJSマンチカンが魔法少女に変身した。


「・・・しかたない、捕まえるか。シャムはアメショの方を捕獲してくれ」


「わかったわ! 頼んだわよ!」


 アメショはシャム姫に、スコティッシュフォールドはジェーンによって羽交い絞めにされた。


「しかし、こいつ、体が細いのにやたらと力が強い! 長くは持たないぞ!」


「ほんと、どこから力が出ているのかしら! 急いで!」


  聖女メンクイーンとJSマンチカンは滑るようにしてベンガルーに近づいていった。そして二人のラリアットがベンガルーにさく裂する、と思われた直前に何かに阻まれた。


「うそー!」


「何ですの!?」


 二人は跳ね飛ばされた。現れたのは黒色ボディーに紫色のお腹という強そうな三匹のペンギン型ゴーレムだった。三匹のお腹にはそれぞれ、七、五、三と書いてある。


「あっはっはっは! 私を倒したいならば、まずはこの三匹のゴーレム”黒い三年生”を倒すことね! そいつらは三年前にお父様が私の為に造って下さった特別なゴーレムですのよ」


 高笑いするベンガルー。聖女メンクイーンとJSマンチカンは再度攻撃をしたが”黒い三年生”のコンビネーションを打ち破れずベンガルーに近づけない。後方からシャム姫が叫んだ。


「そのゴーレムは最新型よ! 同じコアから作られているけど人為的に機能が制限されていて、制限の大きい順から愛三、愛五、愛七型となっているわ! 弱い順に倒せば勝てるわ! だけど必殺技の噴流気流攻撃には気を付けて!」


 シャム姫がアメショを羽交い絞めしながら携帯を操作しゴーレム情報を伝えた。


「あれが怪しいー あれ取り上げられるかなー」


「あの扇子ですわね。確かに何か操作している感じですわね。ゴーレム破壊したら真っ先に扇子を破壊しましょう」


 ベンガルーは時折研究生の方を見ながら扇子を動かしている。非常に怪しい。


 守りに徹していた三匹のゴーレム”黒い三年生”が一列となって二人に近づいてきた。先ほどまでは防御態勢だったが攻撃態勢に切り替えたようだ。


「あれが、噴流気流攻撃かも!」


 流れるように三匹のゴーレムが迫って来た。二人は倒すどころか防御するので精一杯だった。


「急げ! あまりもたないぞ!」


 二人を安全に拘束しているシャム姫とジェーンが限界に近づいている。それを聞いて、聖女メンクイーンはマンチカンに合図を送った。JSマンチカンは頷き少し離れたところに退避した。メンクイーンは一人でゴーレムと戦ったが、やはり避けるだけで精いっぱいだった。


「見切ったよー 先頭の愛三が囮となって回避、その隙をついて愛五が愛三の後ろから現れて攻撃、最後に退避先を愛七が攻撃。横から見たらバレバレだよー」


「ケッケッケ(分かったところで回避できまい)」


「クッケケ(俺達の噴流気流攻撃は最強だ)」


「ククク(ジャー坊やに俺達の凄さを見せつけてやろうぜ)」


 ”黒い三年生”が迫って来た。

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