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23-9話

「砂嵐が発生して、そのせいでミケの合流が遅れるみたいなの。ラグドールには引き続きダンジョン入口の中央冒険者ギルドでミケの到着を待ってもらっています。遅くなりそうなのでここのメンバーだけでも先に進んでいて欲しいという連絡があったわ」


 シャム姫がダークエルフのジェーン、JSマンチカン、聖女メンクイーン、村長アンゴーラに告げた。それを受けジェーンが口を開いた。


「ダンジョンの上層の敵は比較的弱いはずだから進めるところまで進んでおくのがいいだろう。もちろん、危険だと思った時は引き返すか待機すればいい。状況を見て判断しよう」


「「「了解です」」」


 先程の戦いで圧倒的に相手をせん滅したため、皆早く次の敵を倒したいようだ。


「それでは、私達五人で進みましょう」


 ラグドールとミケを除いたヨシオ婚約者一行は目の前の小さな山に向かって歩き始めた。山の頂上には入口らしき人工物が見える。頂上に向かう一直線の階段を登り、ほどなくして頂上に着いた。


「こ、これは・・・」


 ジェーンがつぶやいた。そこには地下鉄の入口のような形状の建築物があった。しかし、シャッターが閉まっていて中に入れないようになっている。ジェーンがシャッターの下をもって上げようとしたがびくともしない。


「でも間違いなくここが入口っぽいですよね」


「どこかに開閉ボタンがあるのでしょうか」


「入口付近には何もないわ」


「周囲を確認しましょう」


 皆で手分けして入口周辺を調べた。しかしその後一時間くらい調べても何も見つからなかった。皆のやる気は一気に萎えたようだ。シャム姫は落ち込む皆の気持ちを感じて言った。


「しかたありません。どうせミケとラグドールもまだですから、ゆっくりと調査しましょう。とりあえず、腰を下ろして休みましょう」


「そうだな。ここは景色がいい」


「風も穏やで気持ちいいよー」


「太陽の日差しも心地いいです」


 早くもやる気がなくなった一行であったが、気を取り直し芝の上に寝転んだり、日陰に腰掛たりしてくつろぎ始めた。とっとと任務完了して帰りたい聖女メンクイーンは、まだシャッター付近を調べていた。


「全く、世話のかかるヨシオですわ。帰ったらたんまりとお礼をもらわなくちゃ」


 メンクイーンはぶつぶつと文句を言いながら調査を続けたが、やがて諦めシャッターを背もたれにして休もうとした。


「ひぎゃ!」


 その瞬間、メンクイーンはシャッターの中に飲み込まれた。よく見ると、扉はシャッターに見せかけた回転扉だった。シャッターを背もたれにしようとしたメンクイーンは、回転扉を背中で押してしまい、そのまま中に転げ落ちたようだ。


「くそう、押し上げても開かないはずだ。まさか回転扉とは! 皆、入るぞ!」


 ジェーンが回転扉を回し、中に入っていった。下に向かう直線の階段が続き、そのまま地下二階につながっているようだ。最下段の先の床に、カエルのような格好でのびている聖女メンクイーンが見えた。どうやら、勢い余ってそこまで転げ落ちたようだ。ジェーンを先頭に皆は階段を駆け下りた。


「大丈夫かメンクイーン!」


「いたたた・・・ちょっとびっくりしただけですの。怪我はありませんわ。宝石が身を守ってくれましたもの」


 恥ずかしそうスカートのすそを直しながら聖女メンクイーンは立ち上がった。そして自分の胸元に輝くネックレスに手をそえた。念のためシャム姫がメンクイーンを体を確認したが、傷や痣はなかった。


「まだ敵はあまり強くないが、罠には皆も気を付けてくれ」


「「「はーい!」」」


 一行は階段からつながる下に向かう廊下を歩き始めた。しばらく一本道が続いていたが、やがて豪華な扉が現れた。


「ダンジョンの入口とは異なる扉ですね」


「扉なのに無駄に豪華ですわ」


「これって、ボス部屋ってやつかもー」


「でもボスは居ないはず。ハイエーナを捕まえたから」


「扉を開ける以外に道は無いようだ。ボスは居ないはずだが、念のため敵に備えろ」


 皆の準備が整うのを見届けてジェーンが扉を開けた。そこは白い壁の大きな部屋だった。部屋の反対側に出口らしきところが見える。だが中央付近に中型犬サイズの銀色の小動物が三匹居た。


「シャム、あの銀色の奴、多分ゴーレムだな。情報はあるか」


 シャム姫は急いで魔動携帯で調べた。


「わかりました! あれはアトムシリーズのペン銀N5000型ゴーレムです。名前から上位のペンリーズと誤解されるが、実は下位アトムシリーズの最上級ゴーレムである、って書いてあります」


 まんま銀色のペンギンに見えるが、やはりゴーレムだった。


「意味は良く分からないが外で戦った蟻・・・アントムという奴よりは強いということだな。とはいえたった三匹だ。皆、一気にせん滅するぞ!」


「「「「 おおー! 」」」」


 ジェーンが猛然と飛び出し、あっという間に二匹を拳と蹴りで瞬殺した。


「ぴぎゃー! ぴぎゃー!」


 残った一匹はシャム姫達に追いかけられ逃げ回っている。ジェーンは一匹くらいは自分達で倒せという感じで腕を組んで静観している。しかし、さすが下位のシリーズとはいえ上位型、思った以上に素早いようでなかなかシャム姫の攻撃が当たらない。


「マンチカン! そっち行った!」


「まかせて! あれ!?」


 シャム姫に追いたてられマンチカンの方に向かったペン銀N5000型だが、すんでのところでマンチカン棒切れアタックをかいくぐった。


「メンクイーン!」


「任せなさい、覚悟! てやー・・・・あれ?」


 メンクイーンの蹴りも避け、逃げるペン銀N5000型。しかし、その逃げた正面にはアンゴーラがいた。さすがにこれは避けれそうにない。アンゴーラは飛び込んできたペン銀N5000型を捕まえた。


「ぴー! ぴー!」


 ペン銀N5000型は逃げようと体を左右に動かしているが、パワーが無いようでアンゴーラの腕を振り払うことができない。所詮下位シリーズのゴーレムである。アンゴーラはペン銀N5000型の頭についているコアを拳で破壊しようとし・・・その手を止めた。


「どうしたアンゴーラ! 早くそいつを倒せ! コアを砕け!」


 ジェーンが不審に思って叫んだ。しかし、アンゴーラは動かずペン銀N5000型を見ている。そして言った。


「ぴいちゃんを殺せないわ! だって可哀そうなんだもん!」


 ぴいちゃん(ペン銀N5000型)の目から涙が流れている。そして弱弱しく「ぴぃぴぃ」と言っている。この時ペン銀N5000型ゴーレムはアンゴーラによってぴいちゃんと命名されたのであった。思い付きである。


 シャム姫達も、さすがにこれは放置でいいんじゃないか的な雰囲気となっている。


「そいつは単なるゴーレムだぞ! プログラムに沿って生き残るための演技をしているだけだ。バレバレの非常にあざとい演技だぞ! 騙されるな」


 ジェーンは自ら破壊しようとペン銀N5000型とアンゴーラに近づいた。するとアンゴーラがペン銀N5000型を抱え込んだ。


「ダメ! 殺しちゃダメ! ぴぃちゃんは私が守るの!」


 パンチを繰り出そうとしたジェーンだが、ペン銀N5000型の顔の前でその拳は止まった。しかし、その様子を見て、ペン銀N5000型は「ケケケ」と笑った。次の瞬間、アンゴーラを背中に乗せ、ペン銀N5000型は爆発的な速度で逃げて行った。


「ちょ! ぺんちゃん! 止まって! 止まって!」


 アンゴーラのいう事は無視して走るペン銀N5000型。さすがに不意を突かれたためか、ジェーンでさえ止めることはできなかった。


「くそう! だから言ったのに!」


「ケケケ」


 追いかけるジェーンをあざ笑いながら、アンゴーラを捕獲したペン銀N5000型は、部屋の出口へと向かって走り去っていった。

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