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23-6話

「現地の冒険者に調査を依頼した結果、ギルドの地下がダンジョンと繋がっているのが発見されました。しかしダンジョン入口には魔法的な何かがかかっていて入れなかったという連絡を受けています。というわけで、ハイエーナの話が本当ならば私達なら入れる。私達だけでダンジョン自治区中央ギルドのダンジョンに挑みヨシオを奪還するほかに方法はありません」


 長時間にわたる会議の結果、シャム姫が方針を述べた。色々と議論したが他に方法が無かったのだ。ダンジョンにはこの七人しか入れない。

 

「受けた恩はここで返します!」


「我らが愛するヨシオを取り返します」


「砂まみれにされた恨み、百倍にして返してやろう」


 ぽっちゃりミケ、村長アンゴーラ、ダークエルフのジェーンの意気込み、非常に頼もしい。


「お部屋の模様替えがまだなのにー 終わってからでいいですか」


「砂漠で日に当たるのはお肌に悪いわ それにダンジョンとか気持ち悪いし」


「ヨシオの口座は城で管理しているからいいじゃん 皆で山分けしようよー」


 小学生マンチカン、聖女メンクイーン、残念エルフのラグドール、三大守銭奴の意見である。


「ヨシオに万が一のことがあったら資産は国が没収することになります。皆さまへの資金援助は無くなります。それで、私達だけでダンジョン自治区中央ギルドのダンジョンに挑むことに異議はありますか?」


「「「「「「異議なーし」」」」」」


 ヨシオの館での第二回婚約者会議の結果、満場一致で今後の方針が決まった。会議の前に、シャム姫達を襲ってきたハイエーナ達は尋問にかけられた。


 その結果分かったのは、彼らは熱狂的なプリンセス娘のファンであり、特にミケ推しのグループだということ。彼らはアクドーイ商会が無許可でやっていたアイドルショップで買い物をしているうちに店員に偽情報をつかまされ、洗脳されるような形で魔王軍の駒として利用されていたのだ。


 ヨシオが女性の弱みにつけ込んだり金にものを言わせて無理やり婚約者にしているという偽情報を真に受け、可哀そうな女性達を開放するつもりだったようだ。リア充勇者許すまじ、というモテないオタ達の深層心理を突いた作戦である。お金にものを言わせているのは確かだが、実際にはヨシオの方が婚約者にたかられているという方が近いのだ。


 事態を重く見たヒツジキング三世は、ハイエーナ達の背後にあるアクドーイ商会を調査するため、王城で彼らを再尋問することとした。


「ミケは王城に行って、ハイエーナ達の尋問およびミケオタ達の調査に協力して下さい。それが終わり次第、ダンジョンに来て下さい」


「分かりましたシャム姫様」


「じゃあ、次の議題ね。たぶんここに居る婚約者は皆ミケのように変身してパワーアップできるはずです。というか、できなければ危険すぎてダンジョンに挑めません。どうやったら魔法少女に変身できるのか、能力も含め確認する必要があります。そしていつでも変身できるよう準備しなければなりません」


 皆がミケを見た。すでに変身は解除されている。ミケがその時の様子を語った。


「あの時は、確かハイエーナに無理やり自己紹介しろと言われたので、キャッチフレーズを述べて、その後で、そうそう、このネックレスについている宝石を触ったのです」


 皆がそれぞれ自分達の胸元の宝石を見た。ラグドールが手を挙げた。


「自己紹介して宝石を触ればいいのねー やってみる! えっと、”こんにちは、皆のアイドルラグドールです!”」


 ラグドールはそう言って宝石を触ったが何も起きなかった。


「え、なぜ! 自己紹介して宝石を触ったのに! 変身できない!」


 ラグドールはセリフを変え何度か繰り返したが結局、変身できなかった。


「勝手に考えた自己紹介ではダメなのかしら? プリンセス娘のメンバーならキャッチフレーズがあるわよね。マンチカン試してみて」


「やってみるよー」


 マンチカンが立ち上がった。


「”みんなの妹、世界の妹、そしてあなたの妹、JS六年生のマンチカンです!”」


 マンチカンが胸元の宝石を触った瞬間、まばゆい光に包まれ黄色い魔女服を纏った魔法少女に変身していた。


「・・・うまくいったようね。ということは現役のプリンセス娘の私達三人は問題なさそうね。じゃあ、次は元プリンセス娘のジェーン、お願い」


 ジェーンはなぜかうつむきながら言った。


「どうしてもやらないとダメか?」


「ジェーンもキャッチフレーズあるのかー そうだよねー 元プリンセス娘センターだよねー 聞きたい聞きたい! やってやって!」


 気乗りのしないジェーンに対してワクワクしているラグドール。

 

「しかたない。じゃあ始めるぞ。笑うなよ! お前ら絶対笑うなよ! 特にラグドール!」


「笑う訳ないよー いいから始めて始めて!」


 ラグドールがはしゃいでいる。


「じゃあ、始めるからな! では、”寝ても起きてもクイーンワールド。あなたを夢中にさせちゃうぴょん! 皆のお姫様クイーン・ジェーンだぞ”」


 ジェーンが宝石を触った瞬間、光に包まれ魔法少女に変身していた。


「・・・変身できた! 青い魔女服だ! やったぞ! ラグドール見たか!」


 ラグドールは口を押えてうつむいている。


「うぷぷぷ、夢中にさせちゃうぴょんとか・・・皆のお姫様とか・・・ビキニアーマーなのに・・・ヒー、もうだめー」


 ラグドールは大笑いをし始めた。他のメンバーもつられて笑いそうになるが、こらえている。


「笑わないっていったじゃないか! だから言いたくなかったんだ! 私が決めたキャッチフレーズじゃないのに! 運営が勝手に決めて私は嫌だったのに! うわーん!」


 ジェーンは魔女服のまま部屋を飛び出し自分の部屋に閉じこもった。その後、皆の必死の説得と謝罪、さらにシャム姫が持ってきた高級ワインのおかげで一時間後にやっと機嫌を直したのであった。



 ◇ ◇ ◇



「・・・ここは? ピンクの天井だ」


 ヨシオが目を覚まし最初に見たのはピンク一色の部屋。窓は無い。ヨシオはピンク色のベッドに寝ている。まるで趣味の悪いドールハウスのようだ。しかし出入口には鉄格子がはまっている。つまり牢屋だ。


「起きたようだね」


 スク水を着たぽっちゃり樽体型のサキュバス、クララが鉄格子の向こうに現れた。


「思い出した! よくも婚約者達との打ち合わせをダメにしてくれたな! 皆忙しくて調整するの大変だったんだからな。やっと会議が終わって彼女達にあんな事やこんな事をお願いしようと思っていたのにって・・・ここどこ?」


 ヨシオは徐々に現状を認識し始めた。


「ここは我らがアジトだ。あたし達が丁重にお前さんをお招きしたのだよ。どうだい、素敵な部屋だろ。お前さんのためにあたしが特別にプロデュースしたのだよ」


「お前が攫ったんだろ! しかもこの部屋ピンクだらけでチカチカして落ち着けないだろ! どうして俺を攫った!」


 クララは”くっくっく”と笑い満足そうに頷いた。


「喜んでいただけて何よりだよ。まあ、理由なんて知らないよ。その場で亡き者にするのは簡単だったけど魔王様の命令なんだよ。お前さんに勝手に動かれると困るらしくてな。かといって殺すのもダメって。なんでもシナリオがめちゃくちゃじゃないか、修正が大変なんだと怒っていらっしゃったぞ」


「シナリオ・・・まさか魔王も転生者・・・」


 ヨシオ達はこの世界が地球に居た頃のゲームの世界に類似していることを知り、ゲームシナリオ本編が始まる前に魔王を討伐しようと考え行動していた。


「あたしらには何のことやら分からないけどね。とにかくお前さんはここでじっとしていればいいさ。飯はそれなりのものを出してやろう。客だからな。いや、逆だな。魔王様の国の言葉では客よせパンダっていうのかい? 邪魔者たちを排除するためのエサになってもらうよ」


「貴様! 婚約者達に手を出すなよ!」


「それは無理な話だね。彼女たちは喜んでここに来ようとするだろう。この中央ギルドダンジョンの最下層に! 無事にここにたどり着ければいいねー あの軍人でもない小娘達には無理だと思うけど。あははは」


 クララは笑いながら去って行った。


「ダンジョン最下層だと!?」


 ヨシオは唖然とした。

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