表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/231

23-3話

自己紹介は続く。


「次は、メンクイーンお願いします」


「スイーツ教の聖女を務めていますメンクイーンです。宝石はパープルダイヤです。アルバイトでハートフルピース王国の衛兵もやっています。ヨシオ様とは以前からフリスビーなど犬関係グッズ開発販売を一緒に行っています。いわばビジネスパートナーです。今回、スイーツ教の上層部に言われて仕方なく婚約しましたが、金銭的サポートに財産分与があると最初から言って頂ければヨシオ様に快くこの身を捧げるつもりでした。アマイ様の代理分も含め二倍頂ければなお嬉しいです」


 スイーツ教女神のアマイちゃんと俺との婚約が難航しているので、スイーツ教幹部達はメンクイーンを生贄として俺に差し出した感じだ。とはいえ、こんなに金にうるさい聖女も珍しいのではないだろうか。二倍は無理だ。政略結婚なので諦めてくれ。


「金銭面に関しては後程ヨシオと交渉して下さい。えーーと、次はミケね」


「はい! あなたのハートをもふもふしちゃうぞっ! プリンセス娘の癒し担当、序列二位のミケです! ネックレスの宝石はインディゴブルーダイヤです。良く分からないのですが旧グレートユルフワ帝国帝王の子孫らしいです。私がプリンセス娘からの卒業を考えていたとき、美のカリスマのヨシオプロデューサーに偶然出会いました。お陰で私は美しく生まれ変わることができ、アイドルを続けることができました! ヨシオプロデューサーさえいればもっともっと美しくなれると確信しています! 今後ともよろしくお願いします!」


 いつから俺は美のカリスマになったのだろうか。たまたま髪型をアドバイスしたのがうまくいって、大人気となったリップもバーコードリーダーで取り寄せただけなのだが。そんなキラキラした目で期待しないでほしい。あと自己紹介のキャッチフレーズを言った時、ネックレスのダイヤが少し光ったような気がしたけど気のせいかな? 


「皆さんありがとうございました。最後になりましたがシャムです。プリンセス娘の序列一位、現在ハートフル・ピース王国の王女を兼任しています。ネックレスの宝石はレッドダイヤモンドです。ハートフル・ピース王国はこれから起きるであろう困難な出来事、つまり魔王との戦いに備え、勇者ヨシオを異世界から召喚しました。勇者ヨシオと共に皆で一致団結してこの世界を魔王から守りましょう。それでは、私達の夫となる勇者ヨシオから一言」


 シャム姫に合図され俺は立ち上がった。婚約者達が全員俺の方を見た。世界各国のトップアイドルといっても過言では無い七人だ。キラキラ感が半端ない。もしかして、俺ってリア充なのだろうか!? 故郷で冴えないコンビニバイトだったのが懐かしい。


「ヨシオです。皆の協力感謝します。各種の情報から総合的に判断すると、魔王は今から二年後に誕生すると予想されています。だけど、我々はそこまで待つつもりはない。魔王が完全体となる前に見つけ出し叩き潰す予定です。なので皆にはそれぞれが所属する組織の力を使って、魔王の居場所を探し出してほしい。早く見つけられればそれだけ俺達の勝率は上がります。各組織に十億HPD(十億円)ほど提供しますので、取り急ぎの調査費用に充てて下さい」


 全員が頷いた。しかし今ひとつ手応えが無い。こうなったら奥の手だ。


「また、婚約者の皆には一人当たり一億HPD(一億円)をお渡しします。これは、おこずかいなので、自由に使ってください」


「「「「「「おおー!」」」」」」


 特にマンチカン、ラグドール、メンクイーンの三大守銭奴が大喜びしている。とりあえずこれで皆の心は一つになったようだ。お金の力も借りたが良しとしよう。


「あと、この館は自由に使ってほしい。今後も定期的に集まって情報交換することになると思うのでよろしく頼みます」


 全員が頷いたところでシャムが締めの挨拶をした。


「それでは第一回婚約者会議は終了とします」


 残った紅茶を飲み干し席を立とうとすると、扉が開き館の警備兵が入ってきた。


「ヨシオ様、カタタターキ様がお見えになられました。ヨシオ様に緊急でお伝えしたいことがあるそうです!」


 カタタターキは、俺が領主をやっているこのダンジョン自治区の中央ギルドマスターだ。以前、エルフ国への行きと帰りに立ち寄ったのだが会えなかった。緊急とは何事だろうか。


「ちょうどいい。婚約者達も居ることだし、ここに通してくれ」


「わかりました!」


 しばらくすると白いスーツを着たキラキラ金髪長身の男、その後ろからフード付きコートを着た従者が入ってきた。え、これが中央のギルマスのカタタターキ!? どこかの王子にしか見えない。始まりの街のギルマスである冴えない事務官マドギーワとは大違いだ。


「お前がカタタターキか!?」


 長身の男は頷いた。


「初めまして領主様。ダンジョン自治区中央冒険者ギルドのマスター、カタタターキと申します。こちらは冒険者ギルド受付のクララです」


 冒険者ギルド受付!? クララなんて可愛らしい名前の受付嬢いたっけ? カタタターキの斜め後ろにいた従者クララが前に出てきた。


「お会いするのは三度目だな。エロ勇者ヨシオーーー!!!!」


 そう言ってクララはナイフを手に持って俺に襲い掛かってきた。ええええーー???


「ガキーーーーン!」


 しかしそのナイフは俺に届く直前でジェーンの剣によって弾かれた!


「お前、ただの受付嬢では無いな」


 ジェーンはそう言って、俺を守るように立ち剣を構えた。後ろから見ると、ビキニアーマーでは隠しきれない筋肉が素敵すぎる! ジェーンが守ってくれる今なら言える。


「領主に刃を向けるとは従者の教育がなってないぞカタタターキ!」


 カタタターキはニヤニヤしながら様子をうかがっている。どうやらクララを止めるつもりは無いようだ。


「さすがダークエルフ。あたしのナイフを防ぐとは大したものね!」


 そう言ってクララは上に着ていたフード付きコートを脱ぎ捨てた。コートの下に隠されていたのはだらしない中年太りの樽体型、しかもピッタリとした黒いスクール水着っぽい服を着ている。なぜか背中に小さな蝙蝠の羽根の生えている。この顔、見覚えがある!


「お、お前は中央ギルド受付に居たクソババア! 可愛らしいクララって名前、お前だったのか! しかも痴女とは!」


 ビキニアーマー対スク水、まさに痴女対決といえよう。


「誰がクソババアで痴女だ! くらえ!」


 クララが周囲に投げキッスをした。


「ぐああぁ! 気持ち悪いぃ! 吐き気がぁ」


 俺とセバスチャンだけがダメージを受けている。男限定? ジェーンが叫んだ。


「まずいぞ! そいつはサキュバスだ!」


 サキュバスと言えばエロい格好で男を誘惑する淫魔と呼ばれている亜人。間違ってもこんなおばちゃん体系のおばちゃんがサキュバスなはずはない! もっとエロエロでエロくておっぱいの大きいお姉さんのはずだ。しかもいい気分になるはずなのに吐き気が! 俺の夢を返せ! そんな事を考えているうち、再びナイフを持ったクララが襲ってきた。


「甘い!」

 

 今度もジェーンがナイフを弾き俺を助けてくれた。そして、いつの間にか側に来ていたラグドールがクララの腹に一撃を加えた。


「まだヨシオからお金が振り込まれてないんじゃー!」


 その掛け声はどうよ。しかし、クララはふわりと浮き上がって衝撃を逃がし、にやりとしながら着地した。


「なかなかやるな。さすがS級冒険者ショコラの妖精・ラグドールちゃんだな」


「二つ名で呼ぶなー!」


 ラグドールが自分で決めてギルドに登録した名前なのに。エルフの歳で中二の頃に決めたのだろう。ジェーン、ラグドールとクララはにらみ合った。その後ろで俺は床に膝をついている。バーコードリーダーに内蔵されたマイクロマシンが稼働しているのか、吐き気が少し改善してきた。だがセバスチャンは床に倒れたままだ。ダメージが大きいようだ。他の婚約者達は俺達の後ろに避難しているが全員無事だ。カタタターキがクララの横に来た。


「クララ、そこまでだ。目的を忘れるな」


「はいはい」


 いきなりクララはラグドールにナイフを投げつけ、同時にジェーンに蹴りを入れた。しかし、ラグドールは横に飛びナイフを避けた。蹴りを受けたジェーンは後ろに飛んで衝撃を逃がした。


 そして一人残された俺は・・・クララにさらわれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ