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23-1話

 ミケは旧グレート・ユルフワ帝国の帝王の子孫だった。騒ぎはひと段落して、旧グレート・ユルフワ帝国派は近隣の宿へと移動した。


 今日は俺の館で全婚約者七人と俺を含めた初の会議が開催される。今は婚約者達が自分達の部屋を模様替えをしたりと準備をしている。早めに俺達の戦力を整え魔王が十分強くなる前に倒す。そのためには婚約者達の属する組織との協力体制を構築しなければならない。俺の館は、そのための戦略拠点になる予定だ。


 しかし、ガリペラのことは相変わらず気になっていた。


「ガリペラはやはり無限野ばあさんなのだろうか」


 状況から考えると無限野ばあさんだと思うのだが、しかし転移前と人格がかなり異なる。俺も筋肉さんも天井ちゃんも人格は転移前と同じなのに。


「何をぼーっとしているのかしら」


「あ、シャム姫様」


 俺の部屋の入口には可愛らしいワンピースに着替えたシャム姫が居た。


「シャムでいいわ。ノックしても返事が無いし、寝ているのかと思ったわよ。二人で事前打ち合わせをするのを忘れたの?」


「シャムさん、す、すいません!」


「さんづけも要らない」


「し、シャム、ちょっと気になることがあって」


 俺はシャム姫にガリペラと無限野さんとの関係について相談した。


「なるほど、転移・転生してきた中で一人だけ人格が異なるのね。でも、なんとなく想像できるわ。その人だけ老人から少女になったのね。年齢差があまりに大きい。相当本気でなりきらないと演じることができないはず。私も女優として少女から母親まで演じたことがあるけど、年齢差が大きいほど演じるのが大変なの。そんな時は自分の人格を捨て、本気で別人格になりきるのよ。撮影期間は日常生活も別人格で過ごすこともあるくらいよ。その分、撮影が終わった後、元の人格に戻すのが大変だけど」


 確かに俺も天井ちゃんも地球に居た時と比べ年齢的な差はほとんどない。筋肉さんは転生だから少し性格が違うけど違和感は無い。育てられ方の問題もあるのか? 無限野さんは、極端に異なる年齢相応の言葉使いや振舞いが求められ、さらに、キタノオンセン帝国内でグレート・ユルフワ・ガリペラになりきり数年に渡って政治的に暗躍していた。


「なるほど、最初は演技のつもりでも、数年に渡ってその演技を続けていれば、元の人格が演技の人格の影響を受ける場合もありえそうですね」


「そうよ。半年程度のドラマの撮影でさえ、恋人を演じているうちに本当に好きになって結婚してしまう芸能人カップルが何組もいるのよ。無限野さん? って方は、本気でガリペラを数年に渡って演じているうちに、そして理想のガリペラに近づこうとしているうちに、その人格にかなり影響を受けたと思うわ。きっとガリペラとして本気でぶつかり、本気で悔しがり、本気で喜んだと思う。さらに言えば、そもそも自分自身が無限野さんであること認識する必要もなかった」


「認識する必要?」


「言い換えれば、元の自分に戻りたいという願望かしら。例えばヨシオが同じ状況ならどうかしら」


 元の自分、老人に戻りたい願望?


「それは・・・無い、全く無いな。若返ったのにわざわざ老人の頃の気持ちを取り戻したいとは思わない。知識さえ引き継げれば、他はむしろ忘れたいくらいだろう。中二病の頃の自分を無かったことにする感じかな。なるほど、無限野さんの頃の知識はあるけど、性格もちょっとくらいは似ている点があるかもしれないけど、無限野さんと別人格のガリペラとなったのか」


「そう考えるべきね。ガリペラの事はこれ以上考えても意味ないわ。そのうち本人から聞けばいいでしょ。それはそうと、ヨシオは何か忘れてないかしら」


 シャム姫がソファーに座ったまま両手を胸の前に組んで可愛らしいポーズをとった。


「えっと、打ち合わせをすることは忘れていませんよ」


「いやいや、もっと重要なことがあるでしょ。今日は婚約者全員が揃うのよ」


「ええ、ですからシャムと一緒に事前会議ですよね」


 俺は自信満々でそう言った。しかし、なぜか可愛らしいポーズのままシャム姫の目つきだけが厳しくなり冷凍ビーム(心理的な意味で)が漏れ出た。やばい、これは何か女性関係で失敗した感じのやつだ。このままでは俺の命が危ないと本能が言っている! 何だ、何か忘れていないか・・・・う~ん?


「・・・ネックレス・・・」


 シャム姫が眉間にしわを寄せそうつぶやいた。ちなみにポーズは可愛らしいままだ。次の瞬間、俺の左手にエメラルドグリーンの革袋が転送されてきた。素早い行動のバーコードリーダーさんであった。そう、シャム姫にだけまだ渡していなかった。テハニー&GO!の婚約者のネックレス。俺はおもむろに革袋を差し出した。


「・・・つけて・・・」


 言われるがまま革袋からネックレスを取り出した。キラキラした金属チェーンの先に真紅の宝石が輝いている。婚約者のネックレス(レッドダイヤモンド付き)だ。見ているだけで圧倒的に美しく高貴な印象を与える。それを、そっとシャム姫の首にかけた。すると、シャム姫の眉間のしわは消え、冷凍ビームは消滅し、天使のシャム姫様となった。すごいよ、さすが、超高級ジュエリー!


「やっともらえたわ。なかなかくれなくて、実は結構気にしてたのよね。嬉しいわヨシオ。ありがとう」


 レッドダイヤモンドに手を当て熱いまなざしでシャム姫が俺を見ている。

 もしかして久々のキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!?


「シャムは俺の妻になるのだからこのくらい当然だ。これはシャムに捧げる幸せの第一歩だ。これからどんどん俺が幸せにしてやる!」


 シャム姫が頬を紅くしている。二人の顔がどんどん近づいている。これいけるんじゃね!? シャム姫の頬に手を当てようとした時、ふと視線を感じた。


 俺の部屋の少し開いた扉の隙間から婚約者達(六名)がこちらを半目で覗いていた。


「ちょ、ちょっとー! これ打ち合わせしているだけだからね! それより、あなた達何しているのよー!」


 シャム姫があたふたしながら立ち上がった。


「二人の声が廊下にダダ漏れだったから・・・ずるいです! 抜け駆けはダメです! 一番最初にマンチカンがネックレスもらったです! だから最初に仲良しになるのはこの私ですー!」


「いやいや、未成年のマンチカンは普通にだめでしょ。ここは公平に歳の順でいきましょうね。となるとエルフであるこの私、一番のお姉さんであるこのラグドールからですよねダーリン!」


「なに言っているんだ残念エルフとちびっこ。そんなちっぱいな二人が一番なわけないだろ。おっぱいの大きさと筋肉量はこの私が一番だ。となるとこの私ジェーン以外は考えられないな。そうだなヨシオ」


「おっぱいの大きさなら私だって負けて無いはずです。だけどジェーン様の鋼の体は女性らしさが欠けていると思うの。女性らしさ、特に全体のふっくら感でいけばミケちゃんだと思いますー そうですよねーヨシオ様」


「体のパーツの大きさ形とか、年齢とかどうでもいいことろです。ここは清楚さで決めるべきでしょう。ヨシオなどどうでもいいですが、一番はいい響きです。神に選ばれし聖女、最も清楚なメンクイーンが婚約者のトップなのは間違いありません」


「みんなーケンカをやめてー 皆は地位や権力があって美人なんだから恵まれているんだから争わないで! だから平民育ちで平凡で財産も権力も無く顔も残念な感じの私アンゴーラに譲ってみてはどうですかー」


 魔王と戦う前に心労で倒れそうです。

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