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召喚勇者はコンビニ店員 ~嫁にする予定のプリンセスはトップアイドル~  作者: 猫田ねむる
22章 婚約者3 キタノオンセン帝国とグレートユルフワ帝国
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22-6話

 婚約者集めの旅はほぼ終わった。キタノオンセン帝国から婚約者は得られなかったが、この世界においてはかなりの組織が俺の味方になっている。少なくとも巨大な敵対勢力は居ないはずだ。これなら魔王にも勝てるだろう。


 今後の計画を立てるため俺の婚約者が続々とこの館に集まってきている。昨日連れて来たメンクイーン(聖女)、プリンセス娘を最近卒業した元序列三位のマンチカン(姫)、オモイザワ村の村長アンゴーラ(建国王の子孫)はすでに到着し各自の自室を整えている。エルフ(姫)の二人は当初からここに住んでいる。そして、もうすぐ握手会が終わり、プリンセス娘序列一位と二位のシャム(姫)とミケ(平民)も駆けつけてくるだろう。


 こんな美人達が全て婚約者なんて素敵すぎる。魔王を倒した後は妻達とどうやって過ごそうか。そんなことに思いを巡らせながら自宅のソファーでくつろぐ。今日もいい天気だ。


「酷いです。私達を置いてけぼりにして。ちょっと聞いてますかー!」


「聞いてない」


 俺が旅から帰って自宅で久々にくつろいでいたのに、朝から館に押しかけてきた人物がいたのだ。それがユルフワ・ガリペラだ。ここに帰る途中でガリペラ達の馬車が立ち往生していたので、馬車を修理してあげたのに。


「今、耳がぴくぴくとなって、目も泳いでいたよねー」


「ぴくりともしてないし、泳いでもいない」


 俺がガリペラに婚約の申し込みをしないことが不満らしいのだ。ガリペラの側に居た軍服を着た初老のおやじが近づいてきた。


「まあ、そういわず考慮して頂けないものか。帝国は消滅したが旧グレートユルフワ帝国の帝国民は全世界に散らばっている。結集すればかなりの勢力であるぞ」


 この男は旧グレートユルフワ帝国の家臣の子孫ドーベル。ユルフワとは異なり、実直で真面目そうな印象だ。


「確かに、旧グレートユルフワ帝国の勢力を取り込み、一緒に魔王を倒したい気持ちはあるんだ」


「ならばぜひ! 我々は勇者ヨシオ様と一緒に戦えるならば、これほど光栄なことは無いと考えておりますぞ」


 そうなんだよな。理論的に考えれば仲間になっておいた方が良いのは確かだ。しかし、問題はガリペラ本人なのだ。


「だけど、どうもなー・・・ガリペラには婚約者がいたよな」


「エドワードの事かな? あれは前キタノオンセン帝国の帝王から息子をよろしく頼むと言われ、しかたなく婚約しただけなの。形式的なもので貴族にはよくあることなの。でも帝王がラブ・メグ様に代わってからは婚約破棄して、今は単なる奴隷・・・友達なの」


 当時エドワードはまたラブ伯爵家の長女メグの婚約者だった。自分主催のパーティーでエドワードはラブ・メグに婚約破棄を宣言し、さらに庶民だったガリペラと婚約した。その後、どこかの貴族と養子縁組しガリペラは貴族の地位を手に入れた。


「しかしなー。ガリペラがグレート・ユルフワ帝国の帝王の子孫であると証明する何かがあれば話は簡単なんだけど」


 以前、ヒツジキング三世王に尋ねた時、ガリペラの素性は不明だった。庶民の時の記録がほとんど残っていないのだ。非常に怪しい。意図的に消したか別人がなりすましている可能性がある。血筋が確認できればガリペラの性格には目を瞑ろう。家臣たちは俺の戦力になってくれそうだから。


「それなら、ここにあるよ!」


「え、あるの!?」


 ガリペラは金色に輝く立派な指輪を俺に見せた。


「ほら、この指輪。ここにグレートユルフワ帝国の紋章が入っているの」


 指輪には宝石ではなく楯のような小さなプレートが付いており、そこには確かに何らかの紋章が描かれていた。これがグレートユルフワ帝国の紋章なのだろう。


「俺達も持っている」


 ドーベルを含め、ここに居る数人の部下達の何人かが指輪を示した。部下達の指輪は木でできいる素朴なものだ。いたる所に傷がついていて、年季を感じさせる。そして指輪に付いた楯には同じ模様が描かれている。


「ドーベル達のは木でできているんだな」


「はい。帝国の幹部は、この指輪を子々孫々受け継いでいくのです。当時は堅い木を削って作り、帝王の魔道具で魔法をかけたらしいのです。魔法がかかっている時は銀色の指輪に見えると言い伝えられています」


 なるほど、魔道具で強化するなら素材は何でも良さそうだ。もしかしたらサイズ自動変更とか識別の魔法とか、色々と付けたのかもしれない。凄いのはその帝王の魔道具の方だな。


「その帝王の魔道具は残っているの?」


「はい。その魔道具がガリペラ様の持っているオリジナルの指輪です」


「じゃあ、それで魔法をかければ銀色の指輪に戻るという訳か」


「ええ、そのように伝えられているのですが、残念ながらエネルギーが切れているのか、何度試しても銀色にはなりませんでした」


「そうなのー。どうやったらエネルギーが補充できるのか私も教えてもらってないから分からないのー」


 同じデザインの指輪を持っていただけで子孫である信憑性は高いが、できれば確実に直接の子孫であるとの確証が欲しかったところだ。エネルギー切れでは確認のしようがない。どうしたものか。


 俺が迷っていると、ドーベル達が騒ぎ始めた。


「指輪が光を放ち始めたぞ」


「おお、言い伝え通りだ! これが魔法なのか」


「確かに銀色に見える」


 そこにユルフワがどや顔で自分の金の指輪を付けた手を高くかざした。


「ほら言った通りでしょ! これで私がグレートユルフワ帝王の子孫だと証明されたわ!」


「おお、確かに!」


「ガリペラ姫!」


 部下達が驚いているようだ。


「まさか・・・本物なのか!?」


 なぜか、ユルフワとの婚約を勧めていたドーベル自身が驚いている。そんな感じで皆が驚いているところで玄関ドアが開き、シャム姫とミケが入ってきた。無事到着したようだ。


「やっと握手会終わった! 疲れたー! ってこの人達誰?」


 シャム姫が背伸びをしながら近づいてきた。ミケは眠そうにふらふらと歩いている。


「zzz眠いです。ヨシオ様の館に来るのが楽しみすぎて、昨晩寝られず徹夜して握手会に臨んだのがまずかったのでしょうか・・・なんだか私の指輪が金色に光っている幻覚が見えます・・・」


 ミケの左手には、本当に金色に輝いている指輪がはめられていた。

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