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召喚勇者はコンビニ店員 ~嫁にする予定のプリンセスはトップアイドル~  作者: 猫田ねむる
22章 婚約者3 キタノオンセン帝国とグレートユルフワ帝国
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22-5話

 スジークは俺を追い出し、メグはおもちゃの腕時計を俺に渡して去って行った。つまり、キタノオンセン帝国としては俺と婚姻関係を結ぶつもりはないという意思表示なのだろう。ただ、敵対するつもりもなく、魔王が現れれば協力してくれるとは言っている。


 軍事力の大きいキタノオンセン帝国を取り込めなかったのは痛い。かといって他に心当たりが無い。いや、キタノオンセン帝国内旧グレートユルフワ帝国のユルフワ・ガリペラはいるが、彼女は女帝ラブ・メグの敵対勢力なので関わらない方が良いだろう。


 ということで、次はニシノリゾート共和国のスイーツ教会女神アマイちゃんと聖女メンクイーンに会うことにしよう。そろそろ二人とも婚約の許可が下りていることだろう。俺は来た道を戻り、魔動馬車でニシノリゾート共和国に向かうことにした。


 魔動馬車がキタノオンセン帝国とニシノリゾート共和国内の国境付近に差し掛かったところで、一台の馬車が路肩に停まっていた。制服を着た運転手が馬車の下を覗き込んでいる。どこかの貴族の馬車のようだ。


「どうされましたか?」


 危険は無いようだったので、後ろに馬車を停めて話しかけてみた。


「それが、どうやら、馬車の車軸が壊れてしまったようなのです。修理に時間がかかるので、可能であれば、近くの街まで乗せて行ってほしいのですが」


「ああ、いいですよ。あなただけ?」


「あ、いえ、私は良いのです。馬車の中にいるお客様二名をお願いできればと思いまして」


 どうやら彼は客をニシノリゾート共和国まで運ぶ任務の途中だったようだ。そこに可愛らしい声が聞こえてきた。


「やっほー! 皆のアイドル、ガリペラだよ」


 あざといロリっアラサーが馬車の窓を開けて手を振っている。アラサーだとわかっていても可愛らしい。客とはガリペラと護衛だったようだ。


「お久しぶりですガリペラ様」


 他人行儀を装いあいさつした。


「こんなところで会えるなんて運命の出会いかしら! 今婚約を申し込まれたら一瞬で承諾してしまいそーですー(はーと)」


 怪しい。明らかに作為を感じる。こんな所で偶然会うなんて、ありえるだろうか。うさん臭さを感じた俺は方針転換することにした。


「今、馬車を治しますからね!」


「え? それより、今婚約申し込まれたら一瞬で・・・」


 俺はガリペラの言葉を無視して馬車の下に潜り込み、バーコードリーダーを起動した。バーコードリーダーのマイクロマシン達に命令し車軸を修理することにした。有能なマイクロマシンのお陰で車軸は一分も経たないうちに直った。


「お待たせ! 直りました!」


「「はやっ!」」


「それでは!」


「いや、ちょっと、待ってーー!!!」


 俺は素早く自分の魔動馬車に乗り込み、全速でその場を離脱した。馬車も直ったことだしガリペラもきっと喜んでいるだろう。うん、そうに違いない。俺の魔動馬車は最高級仕様なので普通の馬車どころか、そこら辺の魔動馬車でさえ追いつけない。全速で走り続け、しばらくしてスイーツ教会に到着した。


「ようこそ勇者ヨシオ様」


 可愛らしいシスターに出迎えられた。あざとさが無く自然体で可愛らしい女性。やっぱこれだよ!


「アマイ様はこちらです」


 教会の中は以前より女性向けの温かい色使いで、それでいて清楚なデザインになっている。そして、シスターや侍女が以前にも増して沢山働いている。皆、アマイちゃん似の美しく可愛らしい女性に見える。化粧のせいなのかな?部屋に着いたようだ。


「久しぶりー」


 部屋に着くなりアマイちゃんは気楽に挨拶してきた。スイーツ教会女神アマイちゃんは、俺と一緒に時空の狭間に飲み込まれた女子高生の天井千代子さんだ。スジーク(OLの筋肉好代)さんとは違い、周りにマッチョはいない。少し安心した。


「実は先程スジークと会ってきたんだけど」


 スジークの状況をアマイちゃんに伝えた。


「はは、筋肉さんらしい! マッチョランド!!! そしてフラれる勇者!!! ぷぷっ!」


 深刻に俺が話しているのにアマイちゃん的にはツボにはまったらしく、めちゃくちゃうけている。笑いすぎて肩で息しているよ!


「はぁ、はぁ、めちゃうけるぅ・・・くっくっくっ」


 つぎは思い出し笑いのようだ。しかたなく、笑いが収まるのを待って話をした。


「それで、婚約の件なんだけど」


「そうそう、それだったよね。聖女メンクイーンとの婚約はOKよ。妻として大事にしてあげてね。それで私の方なんだけど・・・」


 アマイちゃんは口ごもった。何か問題が起きたのだろうか。


「教会上層部は勇者ヨシオと私との婚約を推進しているのだけど、シスターと侍女達が反対しているの」


「え、それは何故!?」


 俺自身に特に悪い印象は無いはずだが。


「男は汚らわしいからよ!」


 部屋のドアが開き、侍女とシスター達が入り込んできた。


「あなた達、持ち場に戻りなさい」


「いいえ、アマイお姉さま! これだけは譲れません。お姉さまは愛の象徴。一生清らかなまま私達と一緒に迷える子羊たちを導くの。だから、こんな薄汚い男にお姉さまを渡すものですか! みんな! この男を追い出すのよ!」


 アマイちゃん似の可愛らしいくも美しい侍女とシスター達。化粧だけではなく似ている人を集めたか整形したかのような雰囲気を感じる。


「待ちなさい!」


 アマイちゃんの言葉も空しく、俺はシスターと侍女達に追いやられ、教会の外に追い出された。彼女達はほうきや鍋を持って可愛らしく入口を封鎖している。まさか兵でもない女性と戦う訳にはいかないし、これ以上はどうしようもない。しかたない、出直そう。


 俺は自分の魔動馬車に乗り込んだ。


「遅いわ!」


 中には不機嫌そうな聖女メンクイーンが乗っていた。


「婚約承諾して頂いたようでありがとう」


「しかたないでしょ。アマイ様があんな状態だから教会としては私が婚約するしかないって考えよ。いわば生贄みたいなものよ。はぁ」


 メンクイーンはがっくりとうなだれた。


「ありがとう。これあげるから元気出して」


 俺は遠隔スキャンして取り寄せたテハニー&GO!(パープルダイヤ付き)を差し出した。


「こんなものじゃ誤魔化されないんだから」


 そう言いながらも、ネックレスを袋から取り出した瞬間、一瞬嬉しそうな顔をしたのを俺は見逃さなかった。彼女も本心から嫌がっているわけではなさそうだ。


「イケメンの方は良かったの?」


 メンクイーンは俺よりもイケメンの方が勇者にふさわしいと考えていたはずだ。


「あんな奴どーでもいいわ! 後宮を建てて365人の妻を娶るんですって! 一日に一人の奥様と過ごし日替わりで一年とっかえひっかえ! 資産なんて365人で分けると微々たるものよ。これまであんなに尽くしたのにバカみたいでしょ。それならヨシオの方がましよ。妻が十人くらいならヨシオの資産から考えて一人当たり莫大な金額! 一生遊んで暮らせるわ!」


 カネか、ここでもカネなのか! まあいい。本人もご機嫌そうだし問題は起きないだろう。しばらくして、アマイちゃんからメールが届いた。


『私だって彼氏とか欲しいのに、一生清らかなままとか無理だから! もう千年以上清らかなのに・・・いつかここを抜け出してマッチョランドに行ってやる!』


 願いが叶う時が来るのだろうか。

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