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5-1話

「俺もしかして貧乏?勇者のはずなのに・・・」


 召喚勇者の給料は月給制だ。召喚された翌日に一か月分の給料を頂いた。城に居れば食事は無料だし部屋代も無料。お金を使うことは無いだろうと思っていた。


 思い返してみる。先日、プリンセス娘の銀板を爆買いした(させられた)ことで、給料のかなりをつぎ込んだ。その後は、城内の俺の部屋で使う事務用品とか魔動パソコンとか魔動プリンターとか買ったくらいか。ちなみに来月は魔動スマホ買う予定だった。まだかなり余裕があったはずなのに。


「何度数えても減っている!たぶん日本円に換算して残り千円以下!」


 このままでは姫様を嫁に迎えることもできない(妄想)。他にも、湖の側に城を買って毎晩パーティーをやったり(妄想)、ドラゴン育てて空を飛ぶとか(妄想)異世界らしいこともやってみたい!そのため、お金はいくらあっても困らない。いや、それはいい。


 問題は使った以上にお金が勝手に減っていたのだ。


 いつの間にか、それも何度も。城の自分の部屋の金庫の中に置いたままだったのに。城の中なので誰かが盗んだとは考えられない。そして、これまでのお金が減るタイミングを思い返して俺はある結論に達した。


「【スキル】[コンビニ]が発動する度にお金が減っている!」


 つまり代金が支払われているようなのだ。どういう仕組みかは不明だが、どう考えても、そうとしか説明できない。後ろめたさもなく、安心して今後もスキル[コンビニ]が使えるので嬉しいのだが。故郷のコンビニにお金が転送されたかどうか確認する方法が無いので、支払われたものとしておこう。そうなると新たな問題が浮上する。


「やっぱり、頻繁に【スキル】[コンビニ]使うとお金が足りなくなるかも」


 お金が足りなければスキルで商品を取り寄せることが不可能になる、または安くて性能が低い商品が取り寄せられるかもしれない。これは戦闘能力がほぼゼロな俺にとっては致命的だ。今後もスキルに頼ること、さらに高価な高性能な商品を転送させることを考えると自分でお金を稼ぐことも考えねばなるまい。


「あんた私が迎えに来たのに無視してるの!?」


 シャム姫のキャラが変わってる!ツンデレお仕事モードからまだ抜けてないのかな。


「あ、すいません!ちょっと今後の戦略などを考えていました」


「勇者なんだから国を守るのは当たり前でしょ!私が来る前にそんなの終わらせておきなさいよ!」


 しかし、言えない。元はと言えばプリンセス娘の銀板を爆買いさせられたせいで金欠となり、そのせいで【スキル】[コンビニ]が使えなくなるかもしれないなんて!そのせいで我が国の防衛力がヤバくなり、それ以前に俺の生活がヤバイなんて言えない!ここは優等生的な回答が正解だ。


「もう終わりました。行きましょう。どんなことがあってもシャム姫とシャム姫の居るこの国の平和は俺が守る!それが俺の役目なのは変わりませんから」


「あなたが私を守るのは当然のことよ!でも、ケガなんかしたら許さないんだから!」


 シャム姫は俺と一緒に昼食をとるため、俺の部屋まで迎えに来てくれていた。ツンデレお仕事モードだけど結構優しい。俺達は城の中のレストランに向かった。お金のことは今後の課題だな。


「それにしてもここのレストラン大人気ですね。受付の外まで長蛇の列ができている。しかも若い女子ばかりですね」


 召喚されてこれまでは、俺の部屋にはサンドイッチが届けれれていた。不味くもなく美味くもない感じだったのだが、レストランが城内にあることを聞いてシャム姫に連れてきてもらったのだ。


「城の最上階にあるこのレストランは一般にも開放されているのよ。お城で食事なんて素敵でしょ!私だって総選挙で一位になる前はここに来たくて並んだのよ」


「そうなんですね。今日は並ばなくて良いのですか?」


「あんた知らないの?私達はレストランの別室を優先的に使えるようになっているわ。その分、食べても食べなくても食費が給料から天引きされているのよ?だから、今日は二人っきりで料理を楽しませなさいよ!」


 ツンデレお仕事モードのあなたの扱い方が良く分かりませんシャム姫!


「知らなかった!そんなシステムなんて。異世界、意外ときっちりしているのかも!」


「それ以外にもヨシオが使っている部屋の使用料、道具のレンタル料、メイドの手当など全て給料から天引きされているわよ?この世界、無料なものなど何一つないのよ」


「まぢですか!」


「今頃知ったの?馬鹿じゃない!」


 かなり天引きされてあの給料だとすると、俺の給料はとんでもなく良かったようだ。


 レストラン別室に到着した。連れてこられたのはレストランの隣にある広くて豪華なパーティールームだ。


「俺にとっては異国の料理なので楽しみです!ドラゴンのしっぽのステーキとか、ゴブリンの焼肉とか、巨大ナメクジのスープとかありますかね?」


「聞いたことないわ。霜降り牛肉のステーキならあるけど」


「霜降り牛肉は普通に美味しいでしょう。しかしそれを食うのは今じゃない。ここは異世界。異世界ならでは料理を食べたい」


 メニューを一通り見た。


「うん、普通だ。前居た世界のファミレスくらいの普通のメニュー。魔獣料理とかないのかな」


「普通の牛や豚や鶏の方が美味しいのに!あんた命がけで魔獣と戦い、さらにその謎の肉を食べるの?例えばミミック(宝箱に擬態した魔獣)なんて捕まえても食べるところあるの?まだカニの方が良さそうだわ」


「確かにミミックは食べるところなさそうだな。カニの方が身が詰まっていますよね」


 もしかして、ミミックってカニの進化版!などと思いながら、今度街で魔獣料理屋さんでも探してみようと考えていた。でも今日は普通素材の異国の味付けに期待しよう。


「というわけで、私はカニクリームパスタにするわ」


「じゃあ、オムライス」


「かしこまりました。しばらくお待ちください」


 メイドが注文を取って厨房へ行った。


「霜降り牛肉美味しいのに。オムライスなんて何時でも何処でも食べられるでしょ、相変わらず馬鹿ね」


「ええ、オムライスを食えばその店のレベルが分かると故郷の偉い人が言ったとか言わないとかという話がありまして。ちょっと試してみようかと」


 よくあるパターンでは、召喚された日本人は醤油と味噌とご飯を愛し、さらに自分の知識を基に次々と新メニューを開発(というか伝えるだけだが)するのだが、ここでは俺の出番は無さそうだ。メニューにはご飯もあるし、『天ぷらキング』では味噌汁もあった。


「ところで、先日の女性兵士へのプレゼント、あれは本当にプレゼントではないのね」


 いきなり核心を突くシャム姫の質問で、豪華なパーティールームがいきなり取調室となった。

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