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19-7話

 スワン王妃は女神あまいちゃんとの協力を重要視しているようだ。


「スイーツ教の女神陣営とは密に情報交換すべきですわ。彼女の知っている知識とスイーツ教の信者達が持っている情報はとても有用と思われますの。我が国の遺跡から発掘された小説情報を彼女に伝え、我々と情報を共有すると良いでしょう」


「わかりました」


 俺が了承すると、スワン王妃は満足げに頷き徐々に床に飲み込まれた。またしても魔法か!? よく見ると王妃の居たあたりにはエレベーターが設置してあったようだ。魔法じゃなかったよ。


「それでは準備をして、明日にでも女神に会いに行きます」


「それが良いだろう。こちらはこちらで、遺跡調査を進めておく。また王国民の様子も探る必要があるな。不穏な要素があるかもしれぬからな」


 ヒツジキング三世王と俺は同意した。


「私の方も、婚約者候補のリストができたらダンジョン自治区のヨシオの館に送るわ。それ以前に、明日女神様に会うなら、婚約の可能性を探っておいてね。彼女は最重要な婚約候補の一人。ニシノリゾート共和国国民とスイーツ教信者が仲間になれば、物語を進める上でとても心強いわ」


 シャム姫も女神あまいちゃんを重要視しているようだ。遺跡の小説情報では、ほとんどの場合でスイーツ教は味方だったから仲間になる可能性は高いだろう。


「わかりました」


「くれぐれも私との婚約を勘違いしないでよね。困難な出来事を克服し、世界を救うためなんだから! それと第一婦人の座は女神と言えど渡さないんだから!」


 俺との婚約は不本意だけど第一夫人の座は譲らないという良く分からないシャム姫の宣言を最後に打ち合わせは終了した。その後、明日の準備をするため城内を移動し自分の部屋に戻った。なぜか聖女が部屋の前に居た。


「ええっと、聖女さん? もうこっちに帰ってきたの」


「ここでは単なる契約職員の一般兵です。単にメンクイーンと呼んで下さい。ちょっと、お部屋でお話しさせていただけませんか」


 スイーツ教のナンバー2である聖女メンクイーンがなぜ契約職員をしているのか。本人が以前言っていたようにお金が無いとは思えないが。メンクイーンは俺の部屋のソファーに腰掛けるとすぐに質問を投げてきた。


「聞きたいのは女神様との関係。会ったばかりなのに、とても仲が良さそうだったけど?」


 なるほど、千年間眠っていたあまいちゃんと俺が親しいのは不可解だろう。


「ああ、それね。俺が異世界から召喚された勇者なのは知っているよな。召喚前に居たその異世界で知り合いだったんだ」


「なるほどね。だからいきなり親しげだったのね。それで女神様はヨシオの彼女、いや妻だったの?」


「いやいや、単に仕事を手伝ってもらっていた仲間なんだ」


 メンクイーンは胡散臭そうな目で俺をジロジロとみた。


「まあ、いいわ。女性を虜にするスキルか何かを持っているかのとも思ったけど、私には効かないようで心配無いことが分かったわ。転生者は神にスキルをもらっているという噂もあるから。私の心と体はイケメン様のものだから」


 目がハートになっている。


「まだイケメン・ブリーダーのファンクラブに入っているのかよ。仲間に裏切られイケメンの犬にはヨダレだらけにされ、懲りないやつだな」


「そうよ悪い!? 最近、イケメン様はプロ野球でも活躍され、以前よりも人気が上昇し、ライバルが多くて大変なんだから」


 ビーフジャーキーを正確に投げるイケメンにプロ野球を勧めたのは俺だけど。まさか本当に活躍するとは。 


「ところで勇者ヨシオには明日、オモイザワ村のスイーツ教教会に来てほしいのだけど」


「丁度良かった、俺も行こうと思っていたんだ」


「じゃあ、また明日。朝、部屋に迎えをよこすわ。一緒に行きましょう」


「助かる」


 メンクイーンはそそくさと部屋を出て行った。俺に来てほしいとは何の用だろうか。多分、あまいちゃんとの打ち合わせが不十分だったから、その続きだろうとは思うけど。


 翌朝。


 俺はメンクイーンがよこした侍女に連れられ待機していた馬車に乗り込んだ。馬車の中には正装をしたメンクイーン、聖女メンクイーンというべきか、がすでに乗っていた。


「誰かの結婚式への出席?」


 聖女が正装と言えば結婚式だよね。衣装だけでとても神聖な印象を与えるのに、それに加え整った美しい顔がさらに神聖さを引き立てる。普段の言動を知らなければ清らかな聖女にしか見えない。とても残念だ。


「人に質問しながら残念そうな顔をするのはやめて下さい。質問の回答ですがお祭りへの参加です。まあ、結婚式も一種のお祭りですから似たようなものでしょうけど。ヨシオは気楽に参加してください。勇者が来れば信者達も喜ぶでしょうから」


「へー、勇者って信者達に人気があるんだ。何の祭り?」


「女神様の復活祭よ。詳細は着いてからのお楽しみね」


 結局、メンクイーンは詳しいことを教えてくれなかった。現地で色々と楽しんで欲しいらしい。こちらは女神あまいちゃんとの関係を強化するのが狙いだ。女神の関係者である聖女や信者達が喜ぶなら狙い通りの展開と言えよう。


 数時間後、馬車はオモイザワ村に到着した。オモイザワ村の中はすでにお祭り騒ぎだった。信者がやたらと集まっているようだ。彫刻や絵でしか見たことなかった女神が千年の時を超え復活したのだから信者としては嬉しいだろう。


 馬車は人ごみの中をゆっくりと進み、スイーツ教教会の裏口に到着した。表口は信者だらけで近づけないのだろう。馬車を降りると数十人のシスターらしき人達に迎えられた。


「ようこそ勇者様。聖女様もご苦労様でした」


「皆さん、お出迎えご苦労様でした。信者が待っているので私はこれで失礼します。また後でお会いしましょう」


 聖女メンクイーンは数人のシスターとともに教会へと入っていった。俺は別のシスターに連れられて教会内へと案内された。教会内は司祭やシスターが忙しそうに動きまわり何やら準備をしているようだ。


「今日は世界中からスイーツ教の関係者と信者が集まっているのです。皆、女神アマイ様に一目でも会いたいのです。私もまだ会った事ありませんが、もうすぐ会えると思うとドキドキが止まりません」


 俺を案内してくれているシスターは目をウルウルさせながらそう語った。あんなに可愛らしくて美しい女神なら、誰でもが会いたいと思うだろう。しかし、一方で逆に心配になった。あまいちゃんとは以前からの知り合いだし、仲良くした方が物語がうまく進むと理解してくれていると思うけど、本当に彼女と婚約可能だろうか。下手したら熱狂的な信者に、この場合本当の信者ね、命を狙われかねない。


「こちらで着替えをお願いします。服は準備してあります」


 シスターに連れられ教会内の一室に案内された。なんだかやたらと豪華な部屋だ。貴賓室だろうか。部屋の前で待機していた侍女に引き継がれ、俺は室内であっという間に着替えさせられた。やたらと豪華な白と金の騎士のような衣装。髪型もかっこよくセットされた。侍女も満足そうだ。スイーツ教信者の勇者人気って本当かも。

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